目次

  1. シミ抜き洗剤の販路を開拓
  2. 紀州漆器を広めたEC運営
  3. 売り上げを20倍に伸ばした茶舗
  4. 倒産寸前の家業をV字回復
  5. 越境ECで広げたじょうろ

 衣料洗剤の製造販売やクリーニングを手がけるハッシュ(東京都大田区)代表の浅川ふみさんは、東京・大井町で50年以上続くクリーニング店の3代目でもあります。シミ抜きに失敗して顧客から怒られたのをきっかけに7年にわたって技術研究を重ね、酵素の力でシミを分解するオリジナルの洗濯洗剤「スポッとる」を開発しました。ECなども使って自力で販路を開き、累計販売は70万個を突破。今も家業のクリーニング店で働きながら、店での気づきを新商品の開発につなげています。

ハッシュ代表で日米クリーニング3代目の浅川ふみさんは、シミ抜きや旅行用の洗濯に役立つ洗濯洗剤をヒットさせました

 「紀州漆器」の一大産地で知られる和歌山県海南市の三好漆器は1911(明治44)年の創業以来、漆(うるし)塗りをはじめとした製造卸業を営みましたが、バブル崩壊後、問屋からの注文が激減します。後継ぎ社長の三好佑紀さんは下請け一辺倒から脱し、17年ほど前からECサイトに注力。他社の紀州漆器を扱う小売業へとかじを切ります。新規雇用を進めてサイト制作を内製化し、見せ方や品ぞろえの工夫や配送といった組織を作るなど、地道な積み重ねで年商は倍増。曲げわっぱ弁当箱に特化した実店舗も運営し、紀州漆器の底上げも目指します。

三好漆器社長の三好佑紀さんはEC戦略の積み重ねで、家業を大きく飛躍させました。持っているのは笑顔を印刷した人気商品「曲げわっぱちゃん」

 横浜市の伊勢佐木町商店街内に店を構える「川本屋茶舗」は、創業125年のお茶の専門店で、商品の幅を茶器や乾物、自家製スイーツにまで広げています。2013年に5代目として、川井秀昭さんが社長、弟の喜和さんが副社長に就いてから、細々と展開していたネットショップを拡大。品ぞろえを大幅に増やしたり、それまでの強みを生かしたギフト商品の開発やサービスを考えたりして、事業承継から10年で売り上げを20倍に伸ばしました。

「川本屋茶舗」の売り上げを急伸させた社長の川井秀昭さん(右)と副社長で弟の喜和さん(左)

 阿部仏壇製作所(新潟市東区)は、74年にわたり仏壇と木製品を作っています。3代目の吉田達洋さんは倒産寸前だった家業を引き継ぎ、木工雑貨に手を広げますが、売り上げは伸びず苦境が続きました。異業種出身の妻・香那子さんが加わったのを機に、無駄な経費の削減やネット販促戦略に注力。出産祝い向けの雑貨「おなまえ積み木」をヒットさせて、30~40代の新たな仏壇購入層もつかみ、「ゆりかごから墓場まで」を軸とした相乗効果で、V字回復を遂げました。

阿部仏壇製作所3代目の吉田達洋さん(左)と妻で役員の香那子さん(右)はそれぞれの強みを生かし、仏壇と木工製品のシナジーを生みました

 ものづくりの町・東京都墨田区の工場で、園芸用の高級じょうろを作り続ける「根岸産業」。従業員3人、家族で営むこの小さな町工場には、世界中の園芸ファンからじょうろの注文が舞い込みます。以前は国内販売が主でしたが、3代目の根岸洋一さんが販売方法をがらりと変え、越境ECの活用で海外需要の掘り起こしに成功しました。

手作りのじょうろを手にする根岸洋一さん