目次

  1. タイムマネジメントとは
    1. タイムマネジメントの定義
    2. タイムマネジメント = 効率を上げることではない
    3. タイムマネジメントとタスク管理・スケジュール管理の違い
    4. タイムマネジメントと時間管理の違い
  2. タイムマネジメントが重要な理由
    1. 効率化によるタスク数の増加
    2. 働き方改革の影響
    3. リモートワークの影響
  3. タイムマネジメントの失敗例
    1. タイムスケジュール通りにいかない
    2. To Doリストを使ってもうまくいかない
    3. 優先順位をつけたのにうまくいかない
  4. タイムマネジメントの方法・ポイント
    1. 三つの仕事を計画する
    2. 使える時間を可視化する
    3. いつやれるかを考慮して計画する
    4. 予定外の仕事に備え、当日は柔軟に対応する
    5. ツールは普段使いものを活用し、1カ所で管理する
  5. タイムマネジメントはできるところから実践しよう

 タイムマネジメントとは、時間の使い方(つまり自分の行動)を計画し、実行し、その結果をふり返る一連のプロセスを成功させることにより、生産性を向上させるマネジメント手法です。

 タイムマネジメントがうまくできると、仕事の効率が上がるだけでなく、仕事上のストレスも減らせます。これは、筆者が実際にタイムマネジメントの手法を試行錯誤するなかで感じたことです。

 しかし、実は「タイムマネジメントとは具体的に何をすることなのか」という明確な定義はありません。たとえば、「タイムマネジメントとは」というキーワードで検索してみると、いろいろなサイトが出てきます。

 「時間をコントロールすること」のように書かれているケースもありますし、「時間はコントロールできない」と書かれているケースもあります(もちろん、実際には時間そのものはコントロールできません)。

 あるいは、「タイムマネジメントは仕事の効率を上げること」「生産性を高めること」のように書かれているケースもあります。

 タイムマネジメントとは、働く本人が「自分の時間の使い方(つまり自分の行動)」を計画し、実行し、その結果をふり返ること。筆者はこの一連のプロセスを、タイムマネジメント(時間管理)だと定義しています。

 ただし、ここでいう「計画」には、必要な要件があります。私たちが普段行っている仕事は「時間」や「計画」の観点で三つのタイプに分けられます。「アポイントメント(時刻が指定されている仕事)」と「タスク(実行する時刻が自由な仕事)」そして「突発的に発生して、その場で対応しなければいけない仕事」です。筆者はこれを「予定外の仕事」と呼んでいます。

アポイントメント 時刻が指定されている仕事
タスク 実行する時刻が自由な仕事
予定外の仕事 突発的に発生して、その場で対応しなければいけない仕事

 「予定外の仕事」は事前にはわからないですし、計画を立てることもできません。しかし、「予定外の仕事」は毎日、ほぼ確実に発生しています。ですから「予定外の仕事」に備えること、つまり予定外の仕事に対応するための時間を残して計画を立てることが必要です。

 この三つの仕事を具体的にどう計画するか(あるいは備えるか)がタイムマネジメントの重要なポイントです。

 よく「タイムマネジメントは効率を上げること」と紹介されますが、効率を上げることはタイムマネジメントの結果として得られるものであって、「効率を上げること = タイムマネジメント」ではありません。

 たとえば、いくら「経費節減」を行ったとしても、「予算管理」ができていることにはなりませんよね。それと同じです。とにかく急いで、焦りながらバタバタと仕事を片付けるようにすれば効率はある程度上がりますが、そのために疲弊してしまうような状況を「タイムマネジメントができている」とは言いがたいですよね。

 筆者は過去に月100時間以上の残業をしていたのですが、タイムマネジメントの方法を見直した結果、残業を月30時間以内に減らすことができました。しかも、それだけ労働時間を削減したのにも関わらず、時間的にも精神的にも余裕を持って仕事を進められるようになりました。これは、ただ「効率を上げる」だけではなし得なかったことです。

 「タイムマネジメント」という言葉が使われている場合に共通する要素に、アポイントメントだけでなく、タスクのやり方について言及している点が挙げられます。

 一般的に「アポイントメント」というと、会議や打ち合わせ、出張など、事前に時刻を決めて約束している仕事を指します。しかし、タイムマネジメントの観点では「時刻が指定されている仕事」はすべてアポイントメントだと考えた方が理解しやすいでしょう。

 たとえば、客先を訪問する前後の移動時間もアポイントメントだと考えます。このアポイントメントの管理は、いわゆるスケジュール管理としてほとんどの人が行っています。

 一方、「タスク」は実行する時刻が指定されていない仕事です。デスクワークの多くが、このタスクに該当します。タスクの多くは期限が決まっていますが、実際にいつ実行するかは自由です。自由だから融通が利く反面、自由だからこその難しさもあるため、タスク管理にお悩みの人は多いものです。

 これを踏まえて「タイムマネジメントとは、アポイントメントだけでなく、タスクも管理すること」だと考えれば、普通のスケジュール管理とは明らかに違うことが理解していただけると思います。

 「タイムマネジメントは時間管理とは違う」という人もいます。ただ、筆者はタイムマネジメントと時間管理は基本的に同じものだと考えています。そもそも「時間管理」は「タイムマネジメント」の直訳ですから、それが別のものだと主張するのは無理があるでしょう。

 一方で「時間管理」を「労働時間管理」という意味で使う場合は、明らかに違う意味になります。いわゆる「労務管理」の範疇の話であり、勤怠や時間外労働の時間を記録し、何か問題があれば手を打つ、という意味になります。

 この労働時間管理ももちろん必要ですが、これはあくまでも仕事をした結果としての労働時間を管理しているだけです。こういった「結果としての管理」を厳しくしても、働く人本人にはあまり役に立ちません。

 働く本人のために役に立つのは「どう計画を立てるか」「その計画をどう実行するか」「計画通りにいかないときにはどうするか」といった具体的な方法や、明確な判断基準です。

 働く人にとって、タイムマネジメントはより重要性を増しています。ここでは、その理由を紹介します。

 筆者が社会人になった1990年代前半は、パソコンの普及率が今ほど高くありませんでしたし、パソコンでできることも限られていました。仕事上のやり取りに電子メールを使うことはなく、電話とFAXでやり取りしていた時代です。

 ところが、その後さまざまな作業を効率的に行うことができるようになり、一つのタスクにかかる時間が短縮されました。つまり、1日に行うことができるタスクの数が増えたのです。

 タスクの数が少なければ「今日はこれをやろう」「明日はあれをやろう」と頭の中で計画するだけでもなんとかなります。しかし、タスクの数が多くなると、このような記憶に頼るやり方では自分のタスクを把握しきれません。

 何らかの形でタスクを管理する必要がある。そう感じている人は多いはずです。

 タイムマネジメントが重要視される理由に、「働き方改革」への対応、特に「時間外労働の上限規制」といった、この数年の間に起こった、もっと差し迫った事情もあります。

 働き方改革により、以前のように長時間残業をすることができなくなってきました。昔なら、「仕事が期限までに間に合わないかもしれない」という状況に陥ったときには「残業してなんとか間に合わせよう」という人が多かったのですが、現在はそうもいきません。

 働ける時間が限られていることを前提に、その時間内で計画的に仕事を進めていく。そういう能力が必要になっています。

 現時点では特に問題視されていませんが、今後問題となるかもしれないと筆者が懸念していることが、リモートワークでの働き方です。リモートワーク、特に在宅勤務をされている人から「出社して仕事をするよりも労働時間が増えた」という声を耳にすることが増えてきました。

 自宅だと「遅くまで残業するなよ」と言われることがないので、遅くまで仕事を続けてしまうという人もいますし、海外拠点からのメールが夜遅くに入ってくるので、それが気になってパソコンに向かってしまうという人もいます。こういった、表に出てこない長時間労働が今後問題視されるようになるかもしれません。

 また、在宅勤務では断続的に仕事をする人もいます。夕方にいったん仕事を終えて、夕食や子供の寝かしつけが済んだ後にまた仕事をする。そういう働き方です。

 このようにフレキシブルな働き方ができるのは良いことだと思います。しかし、自分がどれだけの時間働いているのかを把握しにくくなるため、気づかないうちに長時間労働になってしまうことが懸念されます。

 ここでは、タイムマネジメントにありがちな失敗例をご紹介します。

失敗例 理由
タイムスケジュール通りにいかない 予定外の仕事の発生によりタイムスケジュールを修正する必要があるから
To Doリストを使ってもうまくいかない 「管理者視点での管理」になってしまい「実行者視点での計画」ができていないから
優先順位をつけたのにうまくいかない 自分の使える時間を上手く把握できていないから

 どのようにタイムマネジメントをおこなえばよいかの参考にしてみてください。

 「時間をうまく使うには、しっかりスケジュールを立てるべきだ」「立てたスケジュール通りに行動すべきだ」というような、「タスク」をタイムスケジュールにはめ込んだ行動計画は、タイムマネジメントを失敗に招く可能性があるため注意が必要です。

 そういうやり方は、仕事ではない場面、たとえばプライベートの時間に何かを勉強するためには有効な場合もあります。「明日やればいいか」と先延ばししてしまいそうな自分を押さえて、決めた時間割にそって進めていく。そういう感じです。

 しかし、仕事をしているときには「タイムスケジュール通りに行動する」というのが、なかなかできません。上司から連絡や指示を受けたり、部下や後輩から質問を受けたり、お客さまや他部署からの問い合わせに対応したり、あるいは、何かトラブルが発生すればそれに対処したりすることも必要です。

 こういった「予定外の仕事」で取られる時間は意外に多いもので、そのたびにタイムスケジュールの修正が必要になります。そして、タイムスケジュールは細かく立てるほど、修正するための手間が増えます。

 何か予定外のことが飛び込んできたために今日のタイムスケジュールを修正して、できなくなったタスクを明日に回すことになれば、明日のタイムスケジュールも修正する必要が出てきます。このように、タイムスケジュールを細かく決めるほどその修正に手間も時間もかかりますから、これを毎日続けていくのは容易ではありません。

 しかも、このやり方で細かくスケジュールを立てられるのは明日、あるいは明後日くらいまでで、それ以降のことは白紙に近い状態になりがちです。目先のことは細かく決めるのに、先のことは見通しが立たない。これでは手間をかけて計画している割に、十分な効果が得られません。

 To Doリストとは、自分のタスクをリスト状に書きとめたものです。そのリストを見れば、タスクを確認することができますし、完了したタスクはチェックを入れるなり、消すなりすれば、未完了のタスクがはっきりわかります。

 しかし、「To Doリストやタスク管理機能を使っているのに、うまくいかない」という声はとても多いのです。むしろ、「To Doリストを使うことによって余計にしんどくなった」と感じている人もいます。筆者もその経験があります。

 結論からいうと、それは当然です。To Doリストでタスクを管理すると「タスクの完了、未完了を明確にする」という効果は得られます。そういう意味では役に立つのですが、これは「結果としての管理」が中心であり、「管理者視点での管理」といってもよいと思います。

 「管理者視点での管理」も必要ですが、もっと重要なのは「実行者視点での計画」です。たとえば、ちょっと時間が空いたときに「今やれるタスクはどれだろう?」と素早く判断できたり、時間が限られているなかで「これは自分の手に余るから、他の人にお願いしよう」と早く判断できたりするようになる。こういった「実行者にとって役立つ計画」が必要なのです。

 To Doリストだけを使っても、こういった効果はなかなか得られません。

 To Doリストだけではうまくいかない理由として「優先順位のつけ方」が問題という人もいます。あるいは「タイムマネジメントとは、優先順位のつけ方のことだ」と考える人もいます。

 しかし、「優先順位をつけること」は、タイムマネジメントのごく一部でしかありませんし、優先順位をつけただけでは解決しない問題は数多くあります。それらについて、ここでは紹介しきれませんので、ポイントを絞って紹介していきましょう。

 まず、「タスクに優先順位をつける」ためには、タスク同士を相対比較することが必要です。しかし、多くの人は常に数十個のタスクを抱えています。それらすべてに順位付けするとなるとかなりの時間と労力がかかりますから、とても現実的ではありません。

 また、タスク同士を比較することよりも、もっと重要なことがあります。それはタスクと「使える時間」の比較です。限られた時間のなかで仕事を行うためには、自分の手に余るタスクは「やらない」と判断することも必要です。

 この「やらない」というのは、たとえば「自分でやるのではなく、部下に任せる」といった判断も含みます。これをはっきりと判断するためには、タスク同士を比較するだけでなく「自分が使える時間」と「自分のタスク」を比較することが必要です。時間(収入)とタスク(支出)という「時間の収支」が重要なのです。

 このように時間の収支をつかんだうえで「これはやる」「これはやらない」という判断、つまり取捨選択をしていくことがタイムマネジメントでは重要です。この取捨選択さえしっかりしていれば、細かく優先順位をつけたりする必要はありません。

 ここからは、実際にタイムマネジメントをおこなうときのポイントと方法を紹介します。

タイムマネジメントの方法・ポイント
・三つの仕事を計画する
・使える時間を可視化する
・「いつやれるか」を考慮して計画する
・予定外の仕事に備え、当日は柔軟に対応する
・ツールは普段づかいのものを活用し、1カ所で管理する

 それぞれについて、下記で詳しく見ていきましょう。

 先でも述べたように、私たちが普段行っている仕事は三つに分けることができます。アポイントメントとタスク以外に「予定外の仕事」があるわけです。

 この「予定外の仕事」が実際にどれだけあるか調べてみると、本人が思っているよりも多いのです。デスクワークをされている人の場合、労働時間の20%程度、管理職の場合はさらに多くて25~30%、あるいはそれ以上という人もいます。これは決して無視できる量ではありません。

 もちろん、当日にどんな「予定外の仕事」が発生するのか、事前に知ることはできません。しかし、それに備えて時間を残しておくことは可能です。計画の段階で少なくとも20%の時間、つまり1日あたり少なくとも1時間半の余裕を残しておくことが必要だと考えてください。この余裕を取らずに計画を立てると、絶対に計画通りにはいかない「画に描いた餅」になってしまいます。

 これは極めて重要なことですが、タイムマネジメントに関する本や研修で、このことに触れている例は多くありません。たとえば、あるタイムマネジメント研修では優先順位のつけ方を紹介した後で「実際には突発の仕事もあるので状況に応じて対応すること」のように述べていました。しかし、現実には事前の備えなしに「状況に応じて対応する」程度では追いつかないのです。

 タイムマネジメントにおいては、「自分が使える時間」と「自分のタスク」を比較することが重要です。時間(収入)とタスク(支出)という「時間の収支」を大まかに把握しておきましょう。そのための第一歩が、「自分が使える時間を可視化すること」です。

 自分が使える時間を把握するためには、アポイントメント管理が重要です。ポイントは「どんなアポイントメントが入っているか」ではなく、「アポイントメントが入っていない時間がどれだけあるか」を把握できるようにすることです。

 たとえば、Microsoft Outlookやその他のグループウェアを使ってスケジュールを管理している場合、スケジュールの表示形式の選び方がポイントになります。基本は「個人」のスケジュールを「週」(または「稼働日」)の形式で表示させることです。そうすれば、現時点での空き時間(下の画像の白い部分)が見えてきます。

タイムマネジメントの方法
自分が使える時間を可視化する(筆者作成)

 また、この画像では昼休みの部分と、筆者が「目標ライン」と呼んでいる部分に「定期的な予定(くり返しの予定)」を入れてあります。定期的な予定は曜日と時間帯を決めて入力してしまえば、その後はすべての日付に自動で表示されます。

 こうしておくと「この時間内で仕事を終わらせなければいけない」ということが、よりはっきりわかりますし、先ほどの「空き時間」もわかりやすくなります。

 この「目標ライン」というのは目標とする終業時刻、つまり「ここまでに仕事を終わらせたい」という時刻です。たとえば、残業を月に30時間以内に抑えたい場合、目標ラインを定時の1時間半後に設定して、その時刻になる前に仕事を終わらせるようにします。そうすれば、結果として残業時間は30時間に収まります(その月の稼働日数によって多少変わります)。つまり、1日当たりの残業時間の上限を可視化しているわけです。

 このように、空き時間を可視化しておくことは意外に重要です。空き時間が多い日はタスクを多めに実行できるし、逆に空き時間が少ない日にはタスクをほとんど実行できないかもしれない。それを前提にタスクを計画していくことが「時間の収支」につながります。

 ただし、「時間の収支」といっても、細かく(たとえば分単位で)計算したりする必要はありません。「木曜日は4時間半くらい空き時間がある」のように大まかに捉えるだけで構いません。

 タスクは「使える時間」と対応させて計画することが重要です。そのために、もっとも簡単で効果的な方法は「タスクはそれを実行しようと思う日(実行できそうな日)に入力する」を徹底することです。

 たとえば、Microsoft Outlook(デスクトップアプリ版)では、「日毎のタスクリスト」を表示させると下の画像のようになります。この下の方にある「タスク」の部分をクリックしてタスクを入力します。

タイムマネジメントの方法②
Microsoft Outlook(デスクトップアプリ版)でタスクを入力(筆者作成)

 使い方はそれほど難しくありません。仕事中に何か新しいタスクが発生したら、それをTo Doリストに書くのではなく、「どの日なら実行できそうか?」と考えて、その日付にタスクを入力します。タスクの期限ではなく「実行しようと思う日(実行できそうな日)」に書くのがポイントです。

 それぞれの日のタスクの数が増えてきたら、タスクを追加する際に「使える時間」と「その日のタスク」を比較するようにしてください。使える時間を大まかに把握し、その時間内でその日のタスクをこなせるか考える。もし無理そうなら、タスクは別の日に入れるようにする。こうすることで「時間の収支」を判断しながら計画できます。

 この時間の収支を判断するときには「予定外の仕事」の存在も考慮してください。先ほど述べたように、少なくとも1時間半の余裕を残しておくことは必要です。

 もし、タスクを入れられる日がない場合(時間が足りない場合)には、いずれかのタスクを「やらない」「人に頼む」と判断することも考えてみてください。あるいはアポイントメントを減らして対処するという方法もあります。

 早い段階で気づいて対処するほど、取り得る選択肢の数が多くなります。もちろん「遅くまで残業して完了させる」という選択肢もありますが、これはあくまでも最後の手段です。

 タスクを実行する当日は、時間が空いたらその日のタスク欄に注目しましょう。そうすれば、その日に行うべきタスクを素早く判断できます。タスクを実行日に入力しておいたことで、明日以降のタスクに気を取られず、空き時間に素早く行動できるようになります。

 もちろん「予定外の仕事」にも対応していくことになりますが、「予定外の仕事」は毎日同じだけ発生するとは限りません。多い日もあれば、少ない日もあります。ですから、当日の状況に応じて、タスクの実行日を変更する(前後の日に移動する)ことがあっても構いません。

 「予定外の仕事」がある以上、そうやって柔軟に調整することも必要なのです。少し長い目で見て、当初の計画に近い形でタスクを進めていけているならOKだと考えてください。

 ただし、タスクを後に移動する(先送りする)ことばかりが何日も続く場合は要注意です。これは自分がタスクを詰め込みすぎている(無理な計画を立てている)サインだと考えてください。もう少し余裕を持った計画を立てるようにしましょう。

 仕事柄「おすすめのタスク管理ツールは?」というご質問をいただくことがあります。結論から述べると、「タスク管理ツール」を使うのではなく、アポイントメント管理のツール上で、タスクも合わせて計画していくのがおすすめです。具体的には、特別なツールを導入するのではなく、すでに使っているOutlookやグループウェアを工夫して使っていく方がよいでしょう。

 タスクを実行する本人の視点でタスクを計画するためには、ここまで紹介してきたようにアポイントメントの(空き時間の)情報が絶対に必要です。ですから、アポイントメント管理のツール上で、タスクも合わせて計画していくのがおすすめなのです。

 また、タスク管理を行う際は「タスクは一つのツール上で管理する」という原則を守った方がよいでしょう。

 複数のツールを併用するとタスク管理が複雑になり手間がかかるだけでなく、全体としてのタスクの量がわかりづらくなります。そうすると、先ほどの「時間の収支」が見えなくなってしまいます。

 例外として、すぐには実行しないタスク、たとえば「時間があればやっておきたい」という位置付けのタスクは、(実行日に入力せずに)別のツールで管理しても構いません。このような「保留」に近い位置付けのタスクに限ってはTo Doリストのようなツールで管理するのも有効です。

 今回、タイムマネジメントの重要なポイントを紹介しました。一般的によくいわれるTo Doリストや優先順位といったものが実はあまり役に立たないという話には、驚かれた人もいるかもしれません。しかし、筆者が実際の仕事の中でさまざまな方法を試した結果、唯一大きな効果が得られたのが今回紹介した方法です。

 紹介しきれなかったポイントや判断基準は他にもいろいろあるのですが、今回紹介した使える時間の可視化やタスクの入力は手軽に始められますし、これだけでもかなりの効果を感じることができるはずです。「仕事量が多い」「残業を減らさなきゃ」と考えている人は、ぜひ試してみてください。