二地域居住とは 改正広域的地域活性化基盤整備法が2024年5月成立
国土交通省によると、二地域居住とは、都市部と地方部に2つの拠点を持つライフスタイルのことを指します。二地域居住の促進を通じて、地方への人の流れを創出・拡大するための「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律」が2024年5月に成立しました。補助金など地域活性化へ生かせる政策も紹介します。
国土交通省によると、二地域居住とは、都市部と地方部に2つの拠点を持つライフスタイルのことを指します。二地域居住の促進を通じて、地方への人の流れを創出・拡大するための「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律」が2024年5月に成立しました。補助金など地域活性化へ生かせる政策も紹介します。
地域の活性化には、地域づくりの担い手となる人材の確保が欠かせませんが、人口減少が進む日本のすべての地域で「定住人口」を増やすことはできません。
そこで、政府が進めようとしているのが、二地域居住(にちいききょじゅう)です。二地域居住とは、都市住民が農山漁村などの地域にも同時に生活拠点を持つライフスタイルで、定住人口ではなく、「関係人口」を増やそうという目的があります。
国交省の公式サイトによると、二地域居住のメリットとして、実践者はゆとりある生活が生まれ、雇用主である企業からすると、働き方改革や福利厚生、新規ビジネスの展開につながる可能性があるといいます。
一方、受け入れ側からすると、人材不足の解消やコミュニティの活性化につながるだけでなく、地方自治体としても遊休農地の解消や地域に仕事が生まれるといった経済効果も期待できるといいます。
ただし、二地域居住を実践するうえで、「住まい」をどう確保し維持するのか、「なりわい(仕事)」をどう確保するのか、副業や兼業に対応した働き方ができるのかのほか、地域コミュニティへの参加などにも課題が出ていました。
老舗トラベラーで食文化研究家の相川知輝さんは、2023年から都内と、富山県滑川市で二地域居住を実践しています。滑川市からの委託で、貸し棚型本屋や滑川高校薬学部と協働でクラフトコーラづくりなどに取り組んでいます。
そんな相川さんは、二地域居住のメリット・デメリットについて次のように感じています。
「二拠点で暮らすことは、全く違う2つの企業で同時に働くような感覚で、ビジネスとしても人生としても、経験値が2倍速で貯まるような感覚です。ただ一方で、二拠点どちらも住環境を整えることは難しく、サブ側となる住居がクルマ等を持てなかったり、郵便物が受け取りづらかったり、ゴミ出しのタイミングがなかなか合わないといった課題もあるのも事実です。2拠点で暮らすことはまだマイノリティーな存在ですが、今後増えることによって、住環境を充実させる解決策が出てくることを期待しています」
二地域居住の促進を通じて、地方への人の流れを創出・拡大するための「改正広域的地域活性化基盤整備法」が2024年5月に成立しました。公布から6ヵ月以内に施行する予定です。
改正法のポイントは以下の通りです。国交省は、特定居住促進計画の作成数について、施行後5年間で累計600件、二地域居住等支援法人の指定数について施行後5年間で累計600法人を目標として定めています。
都道府県が二地域居住に関係する「広域的地域活性化基盤整備計画」をつくったとき、市町村が二地域居住の促進に向けた具体的な施策が盛り込む「特定居住促進計画」を作成できるようになります。
具体的には、以下の内容を想定しています。
市町村長は、二地域居住促進に関する活動を行うNPO法人や民間企業を「特定居住支援法人」として指定できるようになります。これにより、空き家情報や仕事情報、イベント情報などを提供する支援法人が活動しやすくなります。
市町村は、特定居住促進計画の作成に関する協議を行うための「特定居住促進協議会」を組織できるようになります。
この協議会は、市町村、都道府県、特定居住支援法人、地域住民などが構成員として参加し、二地域居住の促進に向けた意見交換を行います。
国交省の資料(PDF)によると、地域活性化に向けた補助金を含むおもな二地域居住等関連政策一覧は以下の通りです。
民間金融機関の全期間固定金利の住宅ローンを支援する制度です。取得者が自ら利用するセカンドハウスを取得する場合にも利用可能です。
空家法の空家等対策計画に基づき市町村が実施する空き家の活用・除却に係る取組や、NPOや民間事業者等が行うモデル性の高い空き家の活用・改修工事等に対して支援します。
自治体を横断して簡単に検索できるよう構築します。
立地適正化計画を策定した市町村が、二地域居住等を促進する区域を設定した場合等に、居住誘導区域・都市機能誘導区域内等に整備するコワーキングスペース等に対して支援します。
地方都市の中心市街地の生活圏等におけるテレワーク拠点施設の整備について支援します。
観光等地域資源活用に取り組む地区におけるワーケーション拠点施設の整備について支援します。
反復継続した来訪を促進する「第2のふるさとづくり」、コロナ禍を経たテレワークの普及や働き方の多様化を踏まえた「ワーケーションの普及・定着」等により、旅の潜在需要を顕在化させ、地域の関係人口拡大にもつながる形で交流需要の拡大できるよう支援します。
地域の多様な関係者が連携して行う「共創型交通」のプロジェクトのほか、地域の公共交通のリ・デザインを加速化する「モビリティ支援人材の育成・確保」や、デジタルを活用し交通とそれ以外のサービスを1つのサービスとして提供する「日本版MaaSの推進」を支援します。
デジタル実装タイプ(地方創生テレワーク型)で、サテライトオフィス等の施設整備・運営・利用促進等、地方創生テレワークを推進する地方公共団体の取組を支援します。
地方創生拠点整備タイプで、民間事業者に対する間接補助も含め、移住や二地域居住に活用する集合住宅やシェアハウスなどの地方創生に資する施設整備などを支援します。
東京での仕事をテレワークで続けながら移住する場合等を対象として、移住支援金を支給します。
地域における農泊実施体制の整備とともに、企業等からのワーケーションの受け入れに向けた環境整備を支援します。
農村の空き家・廃校等の地域資源を活用して、田舎暮らし希望者の受け皿となる施設整備等を支援します。農作物の収穫体験のための体験農園や滞在施設(滞在型市民農園:クラインガルデン)等の整備も支援します。
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