目次

  1. 1億円超だった総売り上げ
  2. 家に引きこもっていた日々
  3. 「TSUBAKI」効果が追い風に
  4. 土砂災害とコロナ禍が打撃に
  5. ECサイトをリニューアル
  6. 「椿屋だからこそ」のホテルに
  7. 島の産業を未来につなぐ
  8. ユーザーの評価に背中を押され

 「挫折といえばまさに今。曽祖父から始まった椿油産業は、常に廃業と隣り合わせにあります」。高田さんは深刻な顔で打ち明けました。

 高田製油所は1929年に創業。最初は椿油の加工だけでなく、牛乳煎餅の製造などにも手を広げていました。

島に300万本自生している藪椿

 1965年ごろからの離島ブームで、1972年の来島者は約84万人とピークを迎えました。高田さんの祖父・八郎さんは船着場の元町港で売店を始め、10室を備える「グリーンホテルたかた」をオープンし、観光業に力を入れます。

 工場は八郎さん、売店は義土さんの父で3代目の一善さん、ホテルは叔父・叔母が切り盛り。離島ブームが去っても、ダイビングの需要があり、高田さんが事業を継いだ2009年当時、会社の総売り上げは1億円を超え、椿油の売り上げだけで5700万円に達しました。

高田製油所の椿油。丸瓶は40ミリリットル〜100ミリリットル。3色のお土産用は島内限定で、食用の椿油もあります(高田製油所提供)

 高田製油所の椿油は創業以来、玉締め機を使用して低圧力で時間をかけて絞る「玉締め絞り」で作られています。ほとんどの工場が使う搾油機・エキスペラーとの違いは生産スピードです。エキスペラーなら全自動で実を油にできますが、玉締め機は絞るのは自動であるものの、金型に入れたり、蒸し器に砕いたものを入れたりするのは手作業も必要になります。

 それでも玉締め機にこだわる理由は、椿油の質です。ゆっくり時間をかけて絞るため、椿油の風味や成分が損なわれず、良質の部分のみを搾ることができるといいます。高田製油所の椿油の価格帯は1100円(40ミリリットル)。会社は2人の従業員と営んでいます。

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