代表の吉屋裕子さんは、スパ施設や整骨院でセラピストとしての技術を習得後、施術した顧客が5000人を達成したことを機に独立開業しました。新型コロナウィルスによる影響を受けるなか、ブランディングや顧客単価アップについてはぎビズに相談に訪れました。
サロン関連事業の相談内容として1番多いのが集客についての内容です。広告費を投入するなど、新規顧客獲得やリピーターの育成について課題を感じているサロンが多いのに、リフレシアは集客という課題への対応優先順位は低いことがわかりました。
吉屋さんは過去の接客業経験から様々な顧客に寄り添う接客スキルを身につけており、その経験を強みとして、予約時点から相手のテンポに合わせた話し方で警戒を解き、店外に出てのお迎えで初対面の不安感を軽減し、帰宅後には家でできるホームケアについて個別連絡をするなど、自身の強みを生かした接客をしていました。
さらに、子ども食堂を運営するなど人を応援する気持ちが強く、顧客もまた吉屋さんを応援したいという相互に支え合う輪が広がっていることが分かり、筆者は手技と接客の両面に吉屋さんの強みを感じました。
開店から5周年 顧客の悩みは複雑化
一見順調とも思える吉屋さんの相談内容は、5周年を迎え、顧客から評価を得ているにも関わらず、単価が伴っていない不安があるとのことでした。
本格的なリラクゼーションサロンを目指し、手軽で時短なイメージにならないよう、オイルマッサージ、ヘッドスパ、妊活ケアなど、多彩な手技から派生したメニューを複数用意し、高い技術の施術は評価につながっていました。
各メニューに顧客はついており、施術も満足されているものの、目標とする単価は達成できていなかったのです。
応援してくれる顧客がいるにも関わらず、単価アップにつながっていないことに違和感があり、ヒアリングをしたところ、開業当初から顧客が選択するメニューが変わっていないことがわかりました。
最初は最小限の単品メニューを選択する顧客も多く、そのまま定着していたのです。開業当初からの顧客が多いこと、店の年数も経過してきたことから、顧客も店とともに年齢を重ねたことで身体の悩みも複雑化しているのではと考えました。
顧客ニーズ起点の複合メニューで価格アップ
吉屋さんに顧客の悩みの変化について尋ねると、転職し環境が変わったことでの不眠、孫の世話で腰の痛みが出たなど、仕事やライフステージの変化で開業当初から悩みの種類が変わり、単品メニューのみでは対応しきれない深刻な悩みへと移行していることがわかりました。
さらに、顧客信頼度が向上したことにより精神面での悩み相談も増え、体と心の両面の安定を保つために利用する方が定着していることも分かりました。
そこで、「地域のお守りメンテナンスサロン」として、より身近で自分のパーソナルな悩みに応えてくれるイメージづくりとしてのブランディングを進めていくことを提案。
今までの顧客の声を振り返り、悩み別に整理し3つのメニュー開発を行いました。
慢性軽快ケア |
慢性的なコリやハリを抱えている人向けにオイルケアと整体の組み合わせ |
ディープリラックスケア |
ストレスで緊張状態が続く体をホットストーンであたためオイルケアでほぐし、ヘッドスパでリラックスモードへ |
よもぎ蒸しトータルケア |
むくみやコリを抱え、体の内外から総合的にアプローチしたい人向けによもぎ蒸しとオイルケアの組み合わせ |
悩み別の複合メニューにしたことで、単品メニュー価格の値上げではなく、顧客にとって納得できる形での価格アップを提案することができました。
値上げで顧客が離脱した過去 乗り越えて新発売
店の方向性やメニューが明確となり、いざ販売開始となった段階で、吉屋さんは過去の失敗について話してくれました。
消費税率が上がったタイミングで値上げを行ったところ、顧客が離脱してしまったという経験があったのです。
しかし、筆者としては現在のリピート率の高さや、顧客自らが応援団となってくれるほどの信頼関係が構築できており、悩みを引き出すカウンセリングの細やかさから、単価アップが可能であると確信していました。
顧客の悩み派生の新メニュー開発について説明をし、メニューのスライドを促すことで押しつけ感なく、移行できるのではと感じていました。
吉屋さんも、メニューを作りながら「このメニューはこの人にぴったり」など顧客の顔や生活背景まで見えていたことが自信となり、過去の失敗を乗り越え新メニューの開始を行うことができました。
「地域のお守りメンテナンスサロン」を確立
新メニュー告知はLINEやInstagram、facebookなどSNSで発信しつつ、紙のメニュー表を既存顧客に渡し、案内をする方法で開始しました。
今までは口コミベースでの新規獲得が主でしたが、悩み派生のメニューで試しやすくなったことでSNSからの新規獲得にもつながりました。
既存顧客へも、実際に受けた人の感想や抱えている悩みから逆算したおすすめメニューの提案を行い、スムーズにメニューの移行が完了。自身にぴったりのメニューを探す楽しみにより飽き対策にもなりました。
結果として売上は2倍を達成。「このお店があるから頑張れる」という顧客の声もあり、リフレシアは「地域のお守りメンテナンスサロン」という立ち位置を確立することができました。
1人オーナーでの開業の場合、開業当初から日々を走り続けることに懸命で、立ち止まり、振り返る時間を設けることは難しいことかもしれません。
リフレシアは、技術やカウンセリング力、顧客との信頼関係など、開業当初から着実に成長してきた強みを自信に変え、「なりたいお店像」を描いたことで顧客単価アップを実現しつつ、顧客の声にも応えることができました。
顧客の悩み派生での新サービス開発は基本的なことではありますが、大手企業が持つビッグデータからは読みきれない顧客の顔や生活背景まで密接に把握することができる地域事業者だからこそ、地域で生き残るためにかかせない大切な視点だと感じます。
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