目次

  1. 事業再構築補助金とは
  2. 事業再構築補助金の活用事例
  3. 事業再構築補助金の採択企業 東京商工リサーチが分析
  4. 増収・黒字の割合が高め
  5. 採択企業のうち倒産は338社
  6. 「実現性の高い事業計画が課題」

 事業再構築補助金は、元々新型コロナの影響を受けた中小企業の構造転換を促す補助金として2020年度補正予算に盛り込まれたのが始まりです。

 2022年に入り、ロシアのウクライナ侵攻による原油や物価高騰などで、中小企業はさらなる経済環境の悪化に直面しています。そこで、物価高騰対策という目的が加わっています。

 2021年3月から2023年10月までの第11回公募までで、約7.8万社が採択されました。

 事業再構築補助金をめぐっては、2023年11月の行政事業レビューの有識者から「新型コロナ対策としての役割は終わりつつある」「申請書・財務諸表の精査、四半期ごとのモニタリングといった仕組みが確立されない限り新規採択は一旦停止すべき」などと厳しい意見が相次ぎました。

 福島県喜多方市の山中煎餅本舗は、コロナ禍で店を開けることができず時間ができた渡部さんは逆境を逆手に取り、蔵の活用に動き始めました。

「MARUTOKO-まるとこ-」の客室内(山中煎餅本舗提供)

 事業再構築補助金を活用し、蔵を宿泊施設に改修することを決意。簡易宿泊営業許可を取得し、2023年11月、築100年の蔵をリノベーションした1棟貸しの宿「蔵の宿MARUTOKO-まるとこ-」をオープンしました。

 秋田県湯沢市で産業用資材などの縫製業を営む佐藤縫製は、創業3代目の黒澤理紗さんが中心となり、事業再構築補助金を活用して総菜を製造して移動販売をする新規事業を始めたところ、好調な滑り出しを見せています。

佐藤縫製3代目の黒澤理紗さんと雪国のキッチンカー「雪だるま号」(写真はいずれもゆざわビズ提供)
佐藤縫製3代目の黒澤理紗さんと雪国のキッチンカー「雪だるま号」(写真はいずれもゆざわビズ提供)

 一見無関係な事業に見えて、佐藤縫製の強みを掘り下げていくと「地域課題解決」「社員の働き方改革」「SDGs」というキーワードへと次々つながりました。

 石川県加賀市の山中温泉にある守田漆器は創業100年を超え、伝統工芸の山中漆器を作り続けています。2022年11月、守田さんは事業再構築補助金を活用し、漆器の工場や倉庫に用いていた築50年の建物を改装し、工房とカフェスペース、販売店を兼ね備えた「工房静寛(こうぼうじょうかん)」をオープン。

「工房静寛」のカフェスペース(同社提供)

 店舗での黒字化には至っていませんが、漆器や若手職人の作業を見てもらう場があることは大きい、と守田さんは言います。

 東京商工リサーチは、事務局が公表した事業再構築補助金採択企業リストをもとに、企業データベース390万社とマッチングし、採択企業の特徴や業績について分析した内容を公表しました。業績は法人のみ、倒産は個人事業主も一部含めています。複数回の採択企業は、重複を排除しています。

 業種別の細かい分類では、飲食店が最も多く、6860社(10.2%)が採択されました。コロナ禍で生活様式が変化し、テイクアウトなどの対応を進めた飲食店が多かったとみられます。

 次いで、総合工事業の3530社(同5.2%)、金属製品製造業の3221社(同4.8%)、職別工事業の2864社(同4.2%)、専門サービス業の2744社(同4.0%)と続きました。

 3期連続で比較できる2万555社を対象にした増減収別では、最新期(2023年)は増収が64.4%、減収が29.3%でした。東京商工リサーチの企業データベース内の全データでは、最新期の増収は52.0%、減収は36.2%のため、採択企業は比較的増収の割合が高いようです。

 最終利益を比較した損益別で、最新期は黒字が78.9%、赤字は21.0%でした。東京商工リサーチの企業データベース内の全データでは、黒字が74.6%、赤字が24.5%だったので、黒字は採択企業の方が4.3ポイント高い結果となりました。

 採択企業のうち、東京商工リサーチが倒産企業(負債1000万円以上、2024年4月末時点)を抽出したところ、338社に上ることがわかりました。

 倒産企業のうち、サービス業他が最も多く158社(46.7%)でした。次いで、建設業と製造業が各44社(13.0%)でした。倒産原因の最多は「販売不振」で、73.6%を占めました。倒産形態別では「破産」が91.1%を占め、小規模事業者が多く、再建の目処が立たないケースが多いようです。

 倒産企業の事業計画は、トレンドを追いかけたテイクアウトへの進出やIT化が目立ちましたが、計画通りに進まないケースも多く、負債が膨らむ傾向にあったといいます。

 事業再構築補助金の採択企業は、業績が成長している企業が多い一方で、販売不振による倒産企業も増えています。東京商工リサーチは、実現性の高い事業計画の策定が課題となっていると指摘しています。

 一方で、物価高や人手不足、賃上げ、金利上昇などの経済環境を背景に倒産件数が増加しており、事業再編を支援する補助金の重要性が高まっているとも言及しています。