目次

  1. 年間2万本売れる「醤油注ぎ」
  2. 逆風の中で家業へ
  3. 手仕事で生むガラス製品に高評価
  4. 「社長と書いて雑用係」
  5. 残業を極力減らすための差配
  6. 売り上げ最高額でも増す負担
  7. 「ガラス市」の実行委員長に
  8. 社員発のオリジナル商品も誕生

 「これ、応募してみようと思っているんだけど、どうかな」

 下町に暮らす人々は東京スカイツリーの開業を前にわき立っていました。この追い風に乗るべく、墨田区は2009年、すみだ地域ブランド戦略を立ち上げます。ものづくりの街としての墨田区を内外にアピールするという触れ込みでした。その目玉企画が「すみだモダン」。地場の優れたモノやコトをブランド認証する制度です。

 岩澤さんが父の康行さんに差し出したのは、すみだモダンの募集要項でした。ところが康行さんは気乗りしない様子で、「好きにしたらいい」とだけいいました。そっけない態度に鼻白むも、岩澤さんは申請書類を作成しました。

すみだモダン認定の「江戸前すり口醤油注ぎ」(大1760円、小1650円、岩澤硝子提供)
すみだモダン認定の「江戸前すり口醤油注ぎ」(大1760円、小1650円、岩澤硝子提供)

 すみだモダンの栄えある第1回にその名を刻んだのが、岩澤硝子の「江戸前すり口醤油注ぎ」でした。

 「古き良きすり口を採り入れた醤油注ぎは、そのプロジェクトの理念にかなっている。そう信じて名乗りをあげましたが、認証されるとは思いませんでした」

 すり口とは文字どおり、ふたと本体の接合面をすり合わせる技法のことで、毛細管現象により液だれを防ぐ仕組みです。およそ四半世紀前に完成させた商品でしたが、手間がかかるために値も張り、当時はそこまで出ていませんでした。

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