目次

  1. アリマンタシォン・クシュタールとは
  2. セブン&アイHDに買収提案
  3. セブン&アイ、外為法コア業種に

 アリマンタシォン・クシュタールの公式サイトによると、1980年にケベック州ラヴァルに最初のコンビニエンスストア「クシュタール(Couche-Tard)」をオープンしたのが始まりで29の国と地域で事業を展開し、1万6700を超える店舗を展開しています。

 「クシュタール」や「サークルK」(2003年に買収)などのブランドをもち、米国最大の独立系コンビニエンスストアの1つであり、カナダ、スカンジナビア、バルト諸国では、道路輸送燃料小売でもリーダー的な立場にあると説明しています。欧州だけでなく香港でも事業展開しており、グループ全体で15万人以上の雇用があります。

 同社の「Investor Presentation–Q4 2024」を読むと、2004年以降、ほぼ毎年のように積極的なM&Aを繰り返し、事業規模を拡大してきた様子がうかがえます。

Investor Presentation – Q4 2024
Investor Presentation – Q4 2024(https://corpo.couche-tard.com/en/event/investor-presentation-q1-2024/)

 一方、セブン&アイ・ホールディングス『IR DAY2024』(PDF)によると、米国のコンビニエンス市場では、7-Eleven Inc.のシェアがトップで8.5%、次いでAlimentation Couche-Tard Incが2番目で3.8%となっており、米国ではライバル関係にあることがわかります(米国コンビニエンスストアのシェアの63%は10店舗以下の運営)。

会社名 シェア
7-Eleven Inc.(米国のみ) 8.5%
Alimentation Couche-Tard Inc 3.8%
Casey's General Stores Inc. 1.7%
EG Group 1.1%
GPM Investments LLC 1.0%
Murphy USA, Inc 0.7%
Wawa, Inc. 0.7%
QuikTrip Corporation 0.7%
Kwik Trip, Inc. 0.6%
Sheetz, Inc. 0.5%

 2024年8月19日にアリマンタシォン・クシュタール社からの買収提案があったという日経新聞の報道を受けて、セブン&アイHDの公式サイトでコメントを発表しました。

 「アリマンタシォン・クシュタール社より内密に、法的拘束力のない初期的な買収提案を受けていることは事実」と認めたうえで、提案内容について、セブン&アイHDの取締役会で、独立社外取締役のみにより構成される特別委員会を組成して、検討しているといいます。

 「他の選択肢とともに、慎重かつ網羅的に、しかし速やかに検討し、その後当社としてアリマンタシォン・クシュタール社に返答する予定です。なお、当社取締役会及び特別委員会は、アリマンタシォン・クシュタール社からの提案を受け入れ若しくは拒否するか、同社と議論を開始するか、又は代替的取引を進めるかに関し決定しておりません」とコメントしています。

 セブン&アイHDは9月6日、以下のように買収提案に賛同できないという趣旨で回答したといいます。

  • 我々は、当社の株主およびその他のステークホルダーにとって最善の利益をもたらすいかなる提案についても真摯に検討をする用意があります
  • 本提案は、当社の本源的価値およびそれら価値を顕在化する機会を「著しく」過小評価しています
  • また、現在の規制環境下で、米国の競争法当局との関係で直面するであろう複数の重要な課題について適切に考慮されていないと考えます

 これに対し、アリマンタシォン・クシュタールは自社サイトで再回答を掲載。買収提案が拒否され、秘密保持契約の締結も拒否されたとしつつも「我々は、友好的な議論を進めるために、適切なNDAを締結する用意があり、喜んで参加する用意があります」などと交渉の継続を希望する意思を示しました。

 これに対し、セブン&アイHDはさらに以下のように回答しました。

 「ACT(アリマンタシォン・クシュタール)社が当社のスタンドアローンでの本源的価値を十分に認識し、特別委員会の有している非常に現実的な規制上に関する懸念を払拭する提案を提示した場合には、当社は引き続き真摯な協議に応じる用意があります。ACT社からそのような提案が示されない限り、当社は事業の遂行に注力し、潜在的な株主価値の実現及び顕在化に向けて、実行可能な戦略的施策を追求してまいります」

 財務省の9月13日の発表資料によると、セブン&アイHDが海外投資家から出資を受ける際に事前届け出が原則必要となる外為法の「コア業種」の対象に追加されたと発表しました。

 サプライチェーン保全等のためのコア業種の追加に関する外為法関連の告示改正を行い、9月15日から適用されます。