金利上昇の影響 金融機関から使途ない借入、企業に返済の動き
日本銀行が2024年8月1日から、0〜0.1%としていた政策金利(無担保コール翌日物レート)を0.25%に引き上げたことで、大手銀行だけでなく地銀でも短期プライムレート(短プラ:金融機関が業績や財務状況が良い最優良企業に、1年未満の貸し出しを行う際の最優遇貸出金利)を引き上げる動きが広がっています。「金利のある世界」に戻りつつあるなか、企業と金融機関の付き合い方に変化が生まれていることが東京商工リサーチの調査から見えてきました。
日本銀行が2024年8月1日から、0〜0.1%としていた政策金利(無担保コール翌日物レート)を0.25%に引き上げたことで、大手銀行だけでなく地銀でも短期プライムレート(短プラ:金融機関が業績や財務状況が良い最優良企業に、1年未満の貸し出しを行う際の最優遇貸出金利)を引き上げる動きが広がっています。「金利のある世界」に戻りつつあるなか、企業と金融機関の付き合い方に変化が生まれていることが東京商工リサーチの調査から見えてきました。
日銀の公式サイトによると、7月末の政策決定会合で、政策金利を0.25%程度に引き上げる追加の利上げを決めました。
政策金利引き上げの背景について、植田総裁は会見で、賃上げの動きが広がってきていること、賃金・所得の増加が個人消費を支えていくとみられること、為替円安もあって、輸入物価が再び上昇に転じていまして、物価の上振れリスクに注意する必要があることなどを挙げています。
3月にマイナス金利解除を決めてから、わずか4カ月の追加措置となりました。今回の決定を受けて、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行は9月2日から短期プライムレートを1.475%から1.625%へ引き上げることを決めました。他の金融機関でも引き上げを決める動きが続いています。
こうした金利上昇の影響を受けて、企業では使途のない借入金を返済する動きが出てきています。
東京商工リサーチは2024年8月1~13日、企業向けアンケート調査を行い、有効回答3432社(中小企業3131社、大企業301社)を集計・分析しました。
借入金の使途 | 中小企業 | 大企業 | 全企業 |
---|---|---|---|
すべてに使途あり | 78.5% | 85.0% | 79.1% |
使途のない借入金がある | 21.5% | 15.0% | 20.9% |
すると、使途がない借入金があると回答した企業は20.9%(718社)に上りました。使途のない借入金があると回答した企業は、「農・林・漁・鉱業」や「電気・ガス・熱供給・水道業」など、地域に根差す企業やインフラを担う業種で比率が高い傾向にありました。
これらの企業に対し、さらに「現状より何%金利が上昇したら、特に使途のない借入金について返済、もしくは折り返し(約定返済後の再調達)での借入をやめますか?」と尋ねたところ、600社が回答(中小企業564社、大企業36社、割合は少数第二位を四捨五入しているので100%にならない場合がある)。
中小企業 | 大企業 | 全企業 | |
---|---|---|---|
+0.1%でやめる | 8.5% | 11.1% | 8.7% |
+0.3%でやめる | 24.6% | 16.7% | 24.2% |
+0.5%でやめる | 25.7% | 22.2% | 25.5% |
+0.5%でも継続 | 41.1% | 50.0% | 41.7% |
0.5%上昇までに使途のない借入をやめると回答した企業は350社あり、「0.5%上昇でも継続」の41.7%(250社)を上回りました。
急激な株安など今後の情勢は不透明な部分が多く、今後のさらなる利上げについて植田総裁は記者会見で「データ次第」と答えていました。
しかし、日銀の7月末の金融政策決定会合で、ほかの委員から「政策金利を中立金利(最低でも1%程度)まで引き上げていくべきである」と、適時かつ段階的に利上げしていく必要があるとの意見も出ており、今後、貸出金利は中長期的に上昇することも想定されています。
「金利のある世界」に戻りつつあるなか、企業と金融機関の付き合い方にも変化が生まれる可能性があります。
東京商工リサーチも「本業支援などで取引企業の資金ニーズを創出できない場合、企業向け貸出が低下する。金利上昇は、企業が金融機関を選択する契機にもなりかねず、金融機関のコンサルティング力がこれまで以上に試されそうだ」と分析しています。
金利上昇が見込まれるとはいえ、すぐに一括返済できる中小企業ばかりではありません。
まずは、現在の借入金の状況を確認し、金利上昇による追加負担を試算し、必要に応じて返済計画を見直しましょう。その上で、一部繰上げ返済や返済条件の変更などを相談してもよいかもしれません。
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