改正産業競争力強化法、2024年9月に一部施行 中堅企業を重点支援
産業競争力強化法の改正法の一部が2024年9月2日に施行されました。経済産業省によると、従業員2000人以下の企業を「中堅企業」と明確化して成長に向けて重点支援するほか、スタートアップがストックオプションを柔軟かつ機動的に発行できる仕組み(ストックオプション・プール)を特例的に可能とします。
産業競争力強化法の改正法の一部が2024年9月2日に施行されました。経済産業省によると、従業員2000人以下の企業を「中堅企業」と明確化して成長に向けて重点支援するほか、スタートアップがストックオプションを柔軟かつ機動的に発行できる仕組み(ストックオプション・プール)を特例的に可能とします。
目次
経産省の公式サイトによると、産業競争力強化法は、国内産業の「失われた20年」とも呼ばれる低迷から脱却と、日本経済の過剰規制、過小投資、過当競争の解消に向けて、産業競争力を強化するため、2013年12月4日に成立し、都度改正されてきました。
そのなかでも、今回の改正は、戦略分野への投資・生産に対する大規模・長期の税制措置や、中堅企業・スタートアップを日本経済のけん引役を位置づけて集中支援するといった内容が含まれます。
改正産業競争力強化法のポイントは以下の5つです。
経産省の資料をもとにそれぞれについてさらに詳しく紹介します。
経産省によると、常用従業員数2000人以下の会社をあらたに「中堅企業」と設定します。さらに、賃金水準が高く国内投資に積極的な中堅企業を「特定中堅企業」とも定義します。
これまで、中堅企業は大企業を超える国内売上・投資や給与総額の伸びがあり、国内経済に大きく貢献しているのに、中小企業政策の対象外とされ、中堅企業の課題に応じた支援はされてこなかったといいます。
そこで、改正産業競争力強化法は、特定中堅企業者による成長を伴う事業再編の計画を主務大臣が認定した場合、中堅・中小グループ化税制、大規模・長期の金融支援(ツーステップローン)、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)による助成・助言などの支援を受けられるようにします。
特別事業再編計画とは、成長意欲のある中堅企業・中小企業が、複数の中小企業を子会社化し、親会社の強みの横展開や経営の効率化によって、グループ一体となって成長を遂げる計画のことを指します。
計画認定により、たとえば以下の支援などが活用できます。
ストックオプションは、特にスタートアップで人材確保の観点から重要です。しかし、非公開会社は、株主総会の決議でストックオプションの内容を定めることが必要で、取締役会に決定を委任できる範囲・期間が限られており、柔軟性や機動性に欠けるのが現状です。
そこで、スタートアップの人材確保をより後押しするため、法改正により会社法の特例を設け、ストックオプションを柔軟に発行できるようにします。
特定新需要開拓事業活動計画とは、企業・大学の共同研究開発で、標準化と知的財産を活用した市場創出計画づくりを支援(助言)する制度です。これにより、研究開発成果の社会実装・市場化を推進し、企業の収益力の向上につなげるねらいがあります。
米国のIRA法、CHIPS法や欧州のグリーン・ディール産業計画をはじめ、世界では、戦略分野の国内投資を強力に推進する産業政策競争が活発化しています。
国際競争に対応して内外の市場を獲得することが特に求められる、産業競争力基盤強化商品を生産・販売する計画を主務大臣が認定した場合に、税制優遇(戦略分野国内生産促進税制)や金融支援(低利融資)を行う制度を新たに設けます。
具体的には、電気自動車、グリーンスチール、グリーンケミカル、持続可能な航空燃料(SAF)、半導体(マイコン・アナログ)などが想定されています。こうした総事業費が大きく、特に生産段階でのコストが高い5つの戦略分野への投資を促進するために減税する制度をあらたに設けます。
国の産業構造審議会では、今回の法改正に向けて議論が続けられてきました。
議事録を読んでいると、中堅企業という枠を設定し、重点支援することには肯定的な意見が多い一方で「人材、ノウハウそのものを中堅会社そのものにインストールできるような支援といったものが必要かなと思います」「今回、カテゴリーをつくり、優遇措置を持たせることで、中堅企業が中堅企業のまま留まってしまい、規模を大きくしないという弊害になるようなことにはならないでほしいと思います」といった意見が出ていました。
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