目次

  1. コロッケ店は継ぎたくなかった
  2. 精肉のプロを目指して修業
  3. コロッケや総菜の販売に限界
  4. 一筋縄ではいかなかった仕入れ
  5. 4千万円を投じてリニューアル
  6. 商圏の全国拡大を目指して
  7. 「肉カフェ」ランチで広げる間口
  8. 食を通じて伊賀の魅力を

 西ざわ笑店のルーツは、明治時代に伊賀市内で創業した西澤精肉店(現在は廃業)にまでさかのぼります。精肉店の三男だった西澤さんの祖父が1957年、店の片隅でコロッケを売りはじめ、1975年に「西澤のコロッケ」として独立しました。伊賀牛を甘めに味付けした手づくりコロッケやメンチカツは、学生のおやつや夕食のお供として愛され、伊賀のソウルフードのような存在となりました。

伊賀牛を使ったコロッケ(220円)とメンチカツ(300円)
伊賀牛を使ったコロッケ(220円)とメンチカツ(300円)

 2011年、父の高広さんが伊賀市内の別の場所に「西ざわ笑店」を開店。店の名前には日々笑顔でいたいという思いを込めています。2店舗でコロッケを中心に揚げ物の販売を続けましたが、祖父母の店は2019年に幕を閉じ、現在の西ざわ笑店のみになりました。2023年には「肉笑」として株式会社化。代表を高広さん、専務を西澤さんが務め、母親も加えた3人による家族経営です。

西澤さん(右)は父高広さん(左)と店を切り盛りしています
西澤さん(右)は父高広さん(左)と店を切り盛りしています

 3人きょうだいの長男である西澤さんは、子どものころから事業の変遷を肌で感じてきました。周囲から後継ぎとして期待されましたが、「コロッケ店だけは継ぎたくないと思っていました。大変なのを見ていましたから」。

 幼少期から店のコロッケはあまり食べなかったそうです。「当たり前すぎて、いつでも食べられるから」と笑います。高校生になって進路を考えはじめたとき、家業が頭に浮かびました。

 「進学、就職などの選択肢があるなかで、特にやりたいこともなくて…。でも、なぜか精肉店には興味を持てたんです。なんとなく身近だったのでしょうね」。自分でどこかへ勤めたり、新たに店を開いたりするより「家業があるのだから、そこでやったほうがいい」と考えました。

 家業の道を歩むと決めた西澤さんは、コロッケ店に精肉事業を加えれば、客単価も売り上げも伸びると考えました。高校卒業後は三重県伊勢市の精肉店へ就職し、朝から晩まで肉をさばきました。「しんどかったですが、伊賀で精肉店を開くという目標があったので頑張れました」

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