目次

  1. 特許権への正しい理解を
    1. 突然届いた「質問状」
    2. 簡単な工夫も発明に
  2. 特許権の基本とは
    1. 特許制度の目的
    2. 「切り餅」をめぐる特許例
    3. 特許法上の「発明」
    4. 特許を受けられる発明の必要要件
    5. 特許出願の流れ
    6. 出願にかかる費用
  3. チャンスを逃したメーカーの事例
    1. 事業概要
    2. 新商品開発の経緯
    3. X社からの質問状
    4. A社が失ったもの
  4. 思い込みをやめて相談を

「A社長、『質問状』というものが届きました」

「質問状?何かのアンケートかな」

 傘を製造する創業35年の会社を営むA社長が、質問状の内容を確認すると差出人はX社のY社長からでした。そこには、X社が保有する特許権の情報が書かれていました。

 質問の内容は、A社長の会社で販売している傘と、X社の特許権との関連性についてです。しかし、A社長には「質問状」の意図が良く分からず、困惑しています。書かれている内容も難解で理解できません。

 「特許なんてうちの会社とは無縁のはずなんだが…」と思い当たる節がないA社長。一体何があったのでしょうか(この事例の顛末は第3章で詳しく解説します)。

 経営者や後継ぎの中には、「発明」や「特許」と聞いて「うちの会社とは無関係」と思う方も多いでしょう。筆者のクライアントも「こんなものが特許になるわけがない」と最初からあきらめているケースが多いです。

 しかし、特許となる発明の多くは従来技術を改良した「改良発明」というものです。事業継続のために重ねた様々な工夫や改良の中には、特許を取得できるような技術が埋もれているケースも少なくありません。これらを権利化することで売り上げや利益を上げることが可能な場合もあります。

特許権連載①サムネイル

 従って、中小企業も特許権への正しい理解が無ければ、ビジネスチャンスを逃すことになりかねません。本稿では、経営者の努力や工夫を適切に保護するための特許権の基本について、次章から詳しく説明します(※本稿では弁理士に依頼して出願手続きを行うことを前提としています)。

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