No.1表示の広告主、根拠把握せず「調査会社を信頼していた」
「顧客満足度No.1」といった第三者の主観的評価を指標としているNo.1表示の広告が増えるなか、消費者庁は実態調査と、広告表示をルール化した「景品表示法」上の問題点について整理した報告書を2024年9月に公表しました。それによると、1フレーズ10万円~という調査会社・コンサル会社から提案に魅力を感じた一方、表示の根拠としている調査内容を理解しないまま「No.1」を掲げている広告主がいることがわかりました。
「顧客満足度No.1」といった第三者の主観的評価を指標としているNo.1表示の広告が増えるなか、消費者庁は実態調査と、広告表示をルール化した「景品表示法」上の問題点について整理した報告書を2024年9月に公表しました。それによると、1フレーズ10万円~という調査会社・コンサル会社から提案に魅力を感じた一方、表示の根拠としている調査内容を理解しないまま「No.1」を掲げている広告主がいることがわかりました。
目次
消費者庁の公式サイトによると、No.1表示が、合理的な根拠にもとづかず、事実と異なる場合は、不当表示として景品表示法上問題となります。
合理的な根拠と認められるには、次の4点を満たすことが必要です。
最近、No.1表示に関する景品表示法違反に問われる広告が増えており、いずれもイメージ調査を根拠に「顧客満足度No.1」などと表示していたことが問題となっています。
「顧客満足度No.1」と、実際に商品・サービスを利用したことがある者を対象に調査を行っているかのような表示をしているものの、実際は単なるイメージ調査のみを行っている場合は調査対象者が適切に選定されているとは言えません。
このほか「医師の○%が推奨」と、医師が専門的な知見に基づく判断として「推奨」しているかのような広告もよく見かけますが、医師の専門分野(診療科など)が、商品・サービスを評価するに当たって必要な専門的知見と対応していない場合もあり、こちらの広告表示も適切ではありません。
同様に、調査をするときに「おすすめしたい」商品を選択させる場合に、自社商品を選択肢の最上位に固定して誘導したり、No.1(○%以上)になったタイミングで調査を終了したりしている調査方法も公平な調査とは言えません。
こうしたなか、消費者庁は2024年3~9月、消費者に対するアンケート調査と広告主に対するヒアリング調査を実施しました。すると、以下の点が明らかになりました。
8月1~9日に消費者庁が消費者1000人に意識調査をしたところ、No.1表示等を見たことがある消費者について、新しい商品等を購入するときに、これらの表示が購入の意思決定にどの程度の影響を与えるかを調査した結果、それぞれ約5割の回答者が、「かなり影響する」「やや影響する」と回答していました。
また、イメージ調査であっても、消費者が「同種の他社商品と比べて優れていると思う」「実際の利用者に調査をしていると思う」と誤認してしまう可能性も示されました。
消費者庁は広告主15社に対してもヒアリング調査を実施しました。No.1表示を行った目的として多かったのは、「競合他社がNo.1表示を行っているため」という回答でした。
広告主の多数は、No.1表示の広告効果を具体的に把握・検証しておらず、大きな広告効果を期待していない一方、「同業他社はどこもNo.1をうたっているので、No.1をうたっていないと、そのことが不利な材料となってしまう」というように、他社の商品と比べて自社の商品等が見劣りしてしまうのを避ける目的で実施していたといいます。
No.1表示のきっかけとしては、調査会社・コンサルティング会社等から勧誘・提案を受けたことが契機となって検討したケースの方が多く、費用は1フレーズ10万円~数十万円が多く、「1度調査を行えばランニングコストはかからない」、「結果が悪ければ費用は発生しない・返金する」、「1位が獲れるまで追加費用なしで再調査する」と勧誘していた調査会社もあったといいます。
勧誘するなかでに「不当表示のリスクが無いよう、No.1の裏付けとなる合理的な根拠を取得し納品します」と記載された説明資料を配布していた調査会社や、「顧問弁護士がリーガルチェックをしているので安心してほしい」という説明をする調査会社もあったといいます。
しかし、実際にはこうした調査会社のなかにも景品表示法上の問題点が見つかっています。
さらに、広告主の多数は、調査会社が「インターネット上で消費者に対してアンケートを実施していること」は把握していたものの、具体的にどのようなアンケート調査であったのかはほとんど把握していませんでした。
イメージ調査であることは認識していたが、実際のアンケート回答画面は見たことがない。回答者に対して当社のウェブサイトのどの部分を見せていたのかも不明である。また、競合他社として、どの企業が示されていたのかも説明を受けておらず、知らない。(学習塾・予備校)
実際のアンケート画面やアンケート対象者に対して当社のウェブサイトのどの部分を提示しているか、見たことがないので知らない。(家具・寝具)
今回の調査において、他社のどこと比較したのかという点や、回答者が当社のホームページのどれを見たのかという点を含めて、調査方法の内容は、把握していない。調査会社による調査であり信頼していた。(呉服・着物レンタル)
どのような調査を行うか聞いても分からないし、調査会社を信頼していた。(家具・寝具)
上場企業との取引実績があったこともあり、上場企業も行っているやり方が悪いわけがないと思っていた。(結婚相談所)
安くない費用がかかっているのだからしっかりした調査であると思っており、「調査会社の弁護士がチェックしているから大丈夫」と聞いていたため、調査は適法なものだと安心していた。(保険)
一連の調査結果から、消費者庁は不当なNo.1表示等がされる要因について、以下の3つがあると指摘しています。
そのうえで、消費者庁は「No.1表示等の根拠を確認する際は、単に、第三者機関による調査が実施されていることのみを確認するだけでは不十分であり、調査内容が表示内容と適切に対応しているかどうかなど、自らの責任において当該No.1表示等が合理的な根拠を有しているといえるかを確認する必要がある」と指摘しています。
同時に、一般消費者向けにも「一般消費者が表示の根拠を確認することができるようにすることが望ましい。具体的には、表示物に調査方法の概要を表示することや、直接表示することが難しい場合においては、例えばQRコードを記載するなどして容易に確認できるようにすることも一つの方法である」との考え方を示しています。
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