目次

  1. カバーとは
  2. 公正取引委員会が認定した下請法違反の事実
    1. 無償でやり直しをさせた違反事例1
    2. 無償でやり直しをさせた違反事例2
    3. 無償でやり直しをさせた違反事例3
  3. 公取委がカバーに勧告・指導した内容
  4. カバー「再発防止に向け改善を図る」

 カバー(本社:東京都港区)は、カバーの公式サイトによると、「Communication+Virtual=COVER」という社名にちなみ、誰もがオンラインの仮想空間上でゲームやライブなどのエンターテインメントを通じてコミュニケーションできる未来を目指して2016年6月設立しました。

 世界で活躍するVTuberを輩出する「ホロライブプロダクション」を運営しています。女性VTuberタレントグループ「hololive(ホロライブ)」もその一つです。さらに、VTuber展開をもとにしたマーチャンダイジングやライセンス・タイアップといったIP事業や、メタバース事業も手掛けています。

 公正取引委員会は、カバーに対し調査し、下請法違反する行為が確認されたとして、カバーに対し勧告、指導したと公表しました。

 公取委の公式サイトによれば、カバーは下請事業者に対し、インターネットを通じて配信する「VTuber動画」に用いるイラスト、動画用2Dモデル、動画用3Dモデルの作成を委託していました。しかし、2022年4月~2023年12月、下請事業者23人に対し、発注書などで示された仕様からは作業が必要であることが分からないやり直しを合計243回、無償でさせていたといいます。

 また、カバーは、下請事業者に対し、2022年7月~2024年2月、あらかじめ定められた支払期日までに下請代金を支払っておらず、支払遅延による遅延利息の額は29人に対し、総額115万2642円に上ります。

 やり直しをさせた事例として、公取委は3つのケースを挙げています。

 カバーは2022年4月8日、下請事業者に対し、動画用2Dモデルの作成を発注し、18日に受け取りました。その後、9月15日までの間に、発注書等で示された仕様等からは作業が必要であることが分からないやり直しを無償で7回させていました。

不当なやり直し・支払遅延の例
不当なやり直し・支払遅延の例

 7回のやり直しのうちの3回は、検査期間を納入後7営業日以内としていたにもかかわらず、この期間を過ぎていました。さらに3回のやり直しのうちの2回は、動画用2Dモデルを利用するVTuberが修正を希望しているとして、カバーが下請事業者に「制作完了」したとの通知を出した後にやり直しをさせていました。

 カバーは、その後も経理処理を失念し、下請代金が支払われたのは、受領日から619日が過ぎていました。

 カバーは、2022年10月27日、下請事業者に対し、動画用2Dモデルの作成を発注し、11月21日に受けとった後、2023年5月23日までの間に、発注書で示された仕様などからは作業が必要であることが分からないやり直しを無償で5回させていました。

 この5回のやり直しは、いずれも検査期間を過ぎた後にさせたものであり、カバーが下請事業者に「社内、タレント共に全ての確認が完了」したとの通知したのは、受領日から277日が過ぎていました。下請代金が支払われたのは、受領日から312日後でした。

 カバーは、2023年1月24日、下請事業者に対し、動画用2Dモデルの作成を発注し、2月8日に受領後、3月22日までの間に、発注書で示された仕様などからは作業が必要であることが分からないやり直しを無償で3回させていました。

 この3回のうちの2回は、検査期間後にさせたものであり、カバーが下請事業者に「納品」が完了したとの通知を行ったのは、受領日から230日後でした。

 カバーは、2023年4月ごろには、作成された動画用2Dモデルを用いて動画配信していましたが、下請代金が支払われたのは、受領日から266日後でした。

 公正取引委員会の勧告は、カバーが下請事業者に対し無償で給付をやり直させたことによる費用に相当する額を公正取引委員会の確認を得た上で速やかに支払うこと、下請法を遵守する体制を確立するための措置を講ずることなどを求めています。

 また、違反行為に対する所要の改善措置の講じること、下請法違反の問題が認められた場合には、下請事業者の利益を保護するために必要な措置を講ずることなどを指導しました。

 公取委の指導と勧告に対し、カバーの公式サイトで以下のコメントを発表しました。

具体的には、Live2Dモデルや 3Dモデル等のクリエイティブをご依頼するにあたり、仕様書や指示書等で正しい言語化による発注が行われなかった結果、修正をご依頼する回数が多くなってしまったことや、完成までの期間が長期に渡ってしまったことなどでお取引先様へご負担ご迷惑をおかけしました。また、一部のお取引について漏れなく速やかにお支払いをすべきところ、支払処理が漏れていたことにより多大なるご迷惑をおかけしてしまいました。
当時、下請法に違反する状況となってしまっていた背景といたしましては、当社の事業が急拡大し取引件数が増大したのに対し、お取引先様の方々とのやり取りに抜け漏れや遅延が生じてしまっていたこと、及び社内体制の構築や社内研修が不十分であったことが原因となっております。 現在においては、従業員の採用をはじめ、取引フローの見直しを進めるとともに、社内研修における社内周知等、社内体制の刷新を進め、各所で改善が進んでおります。
なお、本勧告等の対象となる取引のお取引先様に対し遅延損害金(遅延利息)に相当する金額をすでにお支払いしておりますが、引き続き対応を進め、今後ご案内するべき事項が生じた場合には速やかにお知らせいたします。
当社は、本勧告等を真摯に受け止め、責任を痛感しております。2024年11月には「フリーランス新法」が新たに施行も控えており、当社としてはクリエイターの皆様や各お取引先様との取引を円滑かつ安心して進められるよう体制を整えていく必要があると考えております。今後も、役員及び従業員に対する社内研修を実施するなど、各法令の遵守とともに社内体制の強化とモニタリング等の未然の対策を整備し、引き続きコンプライアンスの強化と再発防止に向け、改善を図る方針でございます。

公正取引委員会からの下請代金支払遅延等防止法に基づく勧告について(カバー公式サイト)