実質労働生産性上昇率、2023年度は最高水準 産業別では大きな差
日本生産性本部が2024年11月に発表した「日本の労働生産性の動向」によると、2023年度の日本の時間あたり労働生産性は5396円で、現行基準のGDPをもとに計算できる1994年度以降でみると最も高い水準になりました。しかし、産業別でみると大きな差があるほか、賃金上昇に追いついているとは言えず、世界情勢をみても今後の見通しは厳しい可能性があります。
日本生産性本部が2024年11月に発表した「日本の労働生産性の動向」によると、2023年度の日本の時間あたり労働生産性は5396円で、現行基準のGDPをもとに計算できる1994年度以降でみると最も高い水準になりました。しかし、産業別でみると大きな差があるほか、賃金上昇に追いついているとは言えず、世界情勢をみても今後の見通しは厳しい可能性があります。
日本生産性本部の資料によると、労働生産性とは、労働者一人当たりで生み出す成果、あるいは労働者が1時間で生み出す成果を指標化したものです。労働生産性の向上は、経済成長や経済的な豊かさをもたらす要因とみなされています。
人手不足は多くの企業にとって深刻な問題となっており、物価上昇を上回る賃上げを実現し、持続可能な経済社会を構築するうえでも、生産性向上の必要性や意義はますます高まっています。
「日本の労働生産性の動向」によると、2023年度の日本の時間あたりの名目労働生産性は5396円で、現行基準のGDPをもとに計算できる1994年度以降でみると最も高い水準だといいます。
ただし、四半期ベースでみると、労働生産性の上昇と低下が交錯するやや不安定な状況が続いているとも指摘しています。
実質ベースの労働生産性上昇率は前年度比+0.6%で、3年連続で上昇率がプラスでした。経済の拡大が労働生産性上昇に寄与する一方、インプットに相当する就業者数の増加が労働生産性上昇率を下押ししたことが影響したといいます。
2023年度の日本の一人当たり名目労働生産性(就業者一人あたり付加価値額)は883万円でした。
2023年度の労働生産性上昇率が最も高かったのは、宿泊業(前年度比+12.0%)でした。インバウンドの増加などによる大幅な需要回復が労働生産性の上昇につながっているとみています。
労働生産性が上昇したのは、生活関連サービス業(+8.4%)や飲食店(+2.2%)、小売業(+0.1%)といった個人消費の動向に左右されやすい対個人向けサービスのほか、労働時間規制に伴い業務効率改善を迫られている運輸業・郵便業(+1.0%)などが挙げられています。
一方、製造業のほとんどの分野で生産性が低下しており、これまで業況が比較的良好で生産性上昇が続いていた業務用機械(-0.6%)や汎用機械(-3.5%)、生産用機械(-9.7%)は労働生産性上昇率がマイナスに転じています。
生産活動が落ち込んだ状況を労働時間の削減でカバーしようとしたものの、カバーしきれなかったことが生産性低下につながっていると分析しています。こうした背景には、2024年第1四半期に、自動車の認証不正で生産活動が落ち込んだことも影響した可能性があります。
企業が賃金支払い能力を高めるには生産性向上が欠かせません。しかし、生産性の上昇を上回るペースで賃金が上昇しており、足もとでも賃上げに生産性向上がなかなか追いつかない状況が続いています。
それに加えて、世界情勢を見渡すと、中国などの経済の先行不安や、円安傾向が今後も続くとみられています。労働生産性はこうした経済情勢の影響を受けるため、ロボットなどを活用した省人化や繰り返しの多い作業でのAI活用などを意識的に進めないと今後も厳しい状況が続きそうです。
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