目次

  1. 牧野フライス製作所とは マシニングセンタの先駆け
  2. ニデックが牧野フライス製作所をTOBする理由
    1. 工作機械業界を取り巻く課題
    2. ニデックのM&A戦略
  3. 牧野フライス製作所「精査して見解を公表」

 牧野フライス製作所の公式サイトによると、牧野フライス製作所は、工作機械として世界中で広く使われているマシニングセンタの日本の先駆けとなった一社です。

 1937年5月、牧野常造氏が、一番立フライス盤の専門メーカー「牧野商店製作部」を創業したのが始まりです。

 1958年、カーネイ&トレッカー社が世界で初めて、自動工具交換装置つきののNC工作機械、つまりマシニングセンタを開発すると、日本でも牧野フライス製作所などがNCフライス盤を開発。

 さらに1966年には、牧野フライス製作所、日立精機、安田工業、池貝鉄工の4社で初の国産マシニングセンタの開発へと至ります。

 牧野フライス製作所は1970年代から積極的にグローバル展開を進めており、工作機械は欧米、中国、インド、アジア諸国など、世界中で使われており、海外売上高比率が80%に上り、実質無借金状態を維持しています。

 ニデックは、2024年3月期に過去最高の売上高を記録し、グローバルに事業を展開する企業グループです。M&Aを成長戦略の柱としており、グループ企業総数は世界48の国と地域、連結子会社345社、持分法適用関連会社4社、合計349社に上ります。

 ニデックが牧野フライス製作所に対して公開買付けを実施する背景には、工作機械業界を取り巻く課題と、ニデック自身のM&A戦略があると説明しています。

 ニデックが公表した「企業価値の最大化に向けた経営統合に関する意向表明書」によると、工作機械業界を取り巻く課題として、日本の工作機械は、技術力と顧客サポートにより、グローバル市場でも高い評価を受けていますが、日本国内には80社以上の企業がひしめきあい、景気変動の波に経営が大きく左右される構造があり、持続的な成長のために必要な投資を抑制せざるを得ない環境にもある、と指摘しています。

 その一方で、工作機械製造を国の重点分野と位置付け成長を続ける国や企業の台頭によりグローバル競争は激化しています。

 こうしたなか、工作機械メーカーは、5軸加工機など高度な技術力を有する高付加価値製品を戦略の中核に置きつつ、市場規模が大きく成長の見込めるアジア向け汎用品にも積極的に取り組んでいますが、汎用品は競争が激しく差別化が求められる一方、日本企業が比較的得意とする高付加価値製品では市場規模に制約があるといいます。

 こうしたグローバル競争を勝ち抜くため、ニデックの公式サイトによると、2021年以降、工作機械事業を新たな事業の柱と位置づけ、三菱重工工作機械(現ニデックマシンツール)、OKK(現ニデックオーケーケー)、イタリア・PAMA S.p.A.、TAKISAWAをグループ企業に収め、単品の技術ではなく、システムとして幅広いニーズに応えられる体制を築こうとしています。

 今回のTOBでは、牧野フライス製作所のマシニングセンタ、放電加工機に、ニデックの旋盤、歯車機械、大形機(門形五面加工機・横中ぐり盤)、マシニングセンタが加わり、幅広い顧客ニーズに応えることができるようになると説明しています。そのほか、生産拠点や販売網でも補完性があるといいます。

 ニデックのM&A戦略はかつて業績が悪化している企業を買収し立て直すという手法で知られていましたが、近年は黒字企業も対象にしています。ただし、買収するうえではPBR(株価純資産倍率)に着目しています。

 東京証券取引所が2023年3月、東京証券取引所プライム市場及びスタンダード市場の全上場会社を対象に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請しました。具体的には、PBR1倍割れ企業に対し、改善計画づくりと投資家との対話を求めています。

 こうしたなか、ニデックによると、牧野フライス製作所のPBR(株価純資産倍率)は0.84倍(2024年12月26日時点)。

 「国内もしくは海外の企業が買収提案を行う可能性も否定できない」としたうえで、ニデックのグループに入ることで「新製品・ソリューション開発を大きくスピードアップすることで、ますます激しくなる競争環境の中で貴社の事業をより強固にできる」とアピールしています。

 牧野フライス製作所の公式サイトは、ニデックのTOBに対し、以下のようにコメントを発表しています。

 「事前の連絡は受けておりませんでしたが、今後、ニデック公開買付けに係る開示文書の内容その他の関連情報を精査した上で、当社の見解を公表する予定です」