DDoS攻撃、年末年始から国内企業に被害相次ぐ 政府が注意喚起
杉本崇
(最終更新:)
DDos攻撃(デザイン:苗代澤真祐)
日本気象協会は2025年1月9日朝、「tenki.jp」がDDoS攻撃によるネットワーク輻輳によりアクセスしづらい状況にあると発表しました。2日には半日にわたり、DDoS攻撃によりgooサービスやNTTドコモの一部サービスが利用しづらい状況になりました。この年末年始はJALや三菱UFJ銀行、みずほ銀行などでもDDoS攻撃とみられるサイバー攻撃が相次いでいます。2025年は、4月13日から開催される2025年国際博覧会(大阪・関西万博)への備えも必要となります。そこで、内閣サイバーセキュリティセンターがDDoS 攻撃への対策を呼び掛けています。
DDos攻撃とは
記事「DDos攻撃とは?仕組みから事例、リスク対策までわかりやすく解説」によると、DDos攻撃(ディードス攻撃)とは、インターネットを利用して行われるサイバー攻撃の手法の一つです。
悪意ある者が、攻撃対象となるサーバーに、ボットを使ってリクエストを大量に送りつけ、インターネット通信を阻害し、Webサイトやオンラインサービスの運営を妨害します。
2025年1月9日はtenki.jpにDDos攻撃か
日本気象協会の公式サイトによると、天気予報専門メディア「tenki.jp」が1月9日7時1分ごろからDDoS攻撃によるネットワーク輻輳によりつながりにくい状況になっていると公表しました。5日にも同様の状況となっていました。
2025年1月2日にはNTTドコモにDDos攻撃か
NTTドコモの公式サイトによると、2025年1月2日5時27分ごろから16時10分ごろまで、gooサービスのトップページへのアクセスが困難となり、goo関連のすべてのサービスが利用しづらい状態となりました。さらに、ドコモの一部サービスも利用しづらい事態となっていました。
対象となるサービスは以下の通りです。
- OCN WEBメール(ソフトウェアを利用したOCNメールは利用可能)
- gooサービス全般
- OCNトップページ
- dメニューニュース
- leminoの検索機能
- d払いショッピング 検索機能
- GOLF me
原因については「DDoS攻撃によるネットワーク輻輳」と説明しています。
DDoS攻撃か 年末年始に相次ぐシステム障害
NTTドコモだけでなく、年末年始は日本企業に相次いでDDos攻撃が原因とみられるシステム障害が起きています。
三菱UFJ銀行は2024年12月26日、インターネットバンキング「三菱UFJダイレクト」で生じていた障害について「外部からの不正な大量データ送付に起因する」と公表しました。日本航空(JAL)も26日、サイバー攻撃を受けてシステムに不具合が起きたと発表し、国内線と国際線の運航に影響が出ました。
りそな銀行の個人向けネットバンキングで、12月28日夜に断続的にアクセスしづらい状態が起きました。みずほ銀行も12月31日、サービスの一部が断続的につながりにくくなっていたと発表し、原因は「外部からの大量データ送付による」と説明しています。
DDoS対策、内閣サイバーセキュリティセンターが呼びかけ
内閣サイバーセキュリティセンターの公式サイトでは、今後、大規模な攻撃が発生する可能性も否定できないとして被害軽減対策を紹介しています。
海外等に割り当てられたIP アドレスからの通信の遮断
DDoS 攻撃はボットからの攻撃によって実施されることが多いため、ボットに感染している端末等が多い国やドメインからの通信を拒否することによってもDDoS 攻撃の影響を緩和することが可能であり、特に国内のみからアクセスを受ける情報システムであれば有効であるといいます。
正規の通信への影響も考慮しつつ実施を検討する。また、同一のIPアドレスからのしきい値を超えた大量のリクエストを遮断する機能の利用についても検討するよう呼びかけています。
DDoS攻撃の影響を排除又は低減するための専用の対策装置やサービスの導入
WAF(Web Application Firewall)、IDS/IPS、UTM(Unified Threat Management)、DDoS 攻撃対策専用アプライアンス製品等を導入し、DDoS 攻
撃を防ぐため必要な設定を行うことも有効だといいます。
コンテンツデリバリーネットワーク(CDN)サービスの利用
コンテンツデリバリーネットワーク(CDN)サービスを利用する場合は、元の配信コンテンツを格納しているオリジンサーバへ直接アクセスされることを防ぐため、オリジンサーバのIPアドレスを隠蔽する必要がある。
その他各種DDoS攻撃対策の利用
インターネットに接続している通信回線の提供元となる事業者やクラウドサービス提供者が別途提供する、DDoS 攻撃に係る通信の遮断等の対策を利用することも有用だとしています。
サーバ装置、端末及び通信回線装置及び通信回線の冗長化
代替のものへの切替えについては、サービス不能攻撃の検知及び代替サーバ装置等への切替えが許容される時間内に行えるようにする必要があるといいます。
サーバ等の設定の見直し
サーバ装置、端末及び通信回線装置について、DDoS攻撃に対抗するための機能(パケットフィルタリング機能、3-way handshake時のタイムアウトの短縮、各種Flood攻撃への防御、アプリケーションゲートウェイ機能)がある場合は、有効にすることも呼び掛けています。
2025年は中小企業も大阪万博関連のサイバー攻撃に注意
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)が4月13日から開催されます。近年、国際的に注目を集める大規模イベントでは、サイバー攻撃が相次いでいるため、政府は大阪・関西万博に関係する組織、機関等を標的としたサイバー攻撃が行われる可能性があるとみて、対策を進めています。
しかし、狙われるのは万博に関連する組織だけとは限りません。国内の中小企業もマルウェアに感染させられてサイバー攻撃の踏み台にされるリスクがあります。
また、海外のサイバー攻撃グループは、万博に直接関係しなくても「KANSAI」「OSAKA」という名前のついている企業や組織を標的にする可能性があります。取引先を名乗っていてもメールで届く添付ファイルを簡単に開かない、利用している機器・ソフトウェアの脆弱性が残っていないかチェックするといった基本的な対策が必要となります。
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この記事を書いた人
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杉本崇
ツギノジダイ編集長
1980年、大阪府東大阪市生まれ。2004年朝日新聞社に記者として入社。医療や災害、科学技術・AI、環境分野、エネルギーを中心に取材。町工場の工場長を父に持ち、ライフワークとして数々の中小企業も取材を続けてきた。
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