米原駅の老舗「井筒屋」、駅弁事業から2025年2月28日納品分で撤退へ
米原駅の老舗「井筒屋」が2025年2月28日納品分をもって駅弁事業から撤退することを公式サイトで公表しました。公式サイトでは8代目当主宮川亜古代表取締役が「米原はもはや交通の要衝ではなくなった現在、構内営業者としての井筒屋の役割も十分に果たすことができ、業跡を残すことができたと思っております」とコメントしています。
米原駅の老舗「井筒屋」が2025年2月28日納品分をもって駅弁事業から撤退することを公式サイトで公表しました。公式サイトでは8代目当主宮川亜古代表取締役が「米原はもはや交通の要衝ではなくなった現在、構内営業者としての井筒屋の役割も十分に果たすことができ、業跡を残すことができたと思っております」とコメントしています。
井筒屋の公式サイトによると、初代宮川利八氏は1854年、長浜船着き場前で旅籠「井筒屋」を創業。
1889年になると、3代目宮川利八氏が、東海道線全通を見越し、交通の要衝となるべく米原へと拠点を移し、弁当類を専売することになりました、これが「米原停車場構内立売営業人」の始まりとなったといいます。
1987年に「新幹線グルメ」として、誕生したのが鴨ローストなど湖北地方の名物を詰め合わせた「湖北のおはなし」です。後に米原名物の駅弁となりました。米原駅内では、在来線の立売売店と新幹線ではベルマートキヨスク米原で取り扱っています。
2020年には、米原駅そばにある本店で「キッチン井筒屋」を開設。駅弁のテイクアウトだけでなく、「汽車弁・汽車そば」を食べられる飲食スペースを設けています。
そんな井筒屋は2024年に創業170年を迎えました。
井筒屋は2025年1月1日、公式サイトで、駅弁事業からの撤退を公表しました。駅弁の注文は2月28日納品分まで、駅弁事業自体は3月20日で終了する予定です。撤退表明にあたり、8代目当主宮川亜古代表取締役は、次の文書を掲載しました。
旅のお供であるべき駅弁とは何か、その土地ならではの駅弁とはどういったものかを思い巡らせ「味をえらび 味をととのえ 味ひとすじに」納得いただける商品をお届けしたいと、日々励んでまいりました。
お弁当の井筒屋公式サイト
しかしながら、昨今の食文化は娯楽化がもてはやされ、誤った日本食文化の拡散、さらには食の工業製品化が一層加速し、手拵えの文化も影を潜めつつあります。
そのような環境に井筒屋のDNAを受け継いだ駅弁を残すべきではないと判断致しました。加えて、米原はもはや交通の要衝ではなくなった現在、構内営業者としての井筒屋の役割も十分に果たすことができ、業跡を残すことができたと思っております。
時代の変遷に振り回されることなく、井筒屋らしく、とるべき道を選び、令和7年3月20日をもちまして、駅弁事業からは撤退致します。
こうしたコメントの背景には、全国の商業施設の催事で駅弁が注目されるようになり、日本鉄道構内営業中央会が1988年に制定した「駅弁マーク」がなくても、「駅弁」と称して販売する商品が増えたことがあるとみられます。
井筒屋も「駅弁マーク」の意味が薄れつつあるとして、すべての駅弁から「駅弁マーク」を外すと表明していました。
一方、米原駅をめぐっては、北陸新幹線の延伸ルートで再び注目されています。
北陸新幹線の金沢―敦賀間が2024年3月に開業し、その後、新大阪までの全線開通が計画されています。国交省の公式サイトによると、政府の2025年度当初予算案では、北海道、北陸、九州の整備新幹線の事業費に総額2658億円を計上しました。
一方、新大阪までの延伸に向けては、与党内で2024年内中に予定していたルートの選定を見送ったため、2025年度予算案には事業費が盛り込まれませんでした。
2016年12月に政府与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームが、北陸新幹線敦賀・大阪間は小浜・京都を経由する「小浜・京都」ルートに決定したと発表しましたが、最近になって事業費の安さ、工期の短さなどから、米原を経由する「米原ルート」案が一部で再浮上しているためです。
現時点で「米原ルート」になる可能性は低いものの、今後の議論次第では、米原駅の位置づけは大きく変わるでしょう。
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