目次

  1. 家業の危機に「何とかしろ」
  2. 「直樹が取ってくるものは最悪」
  3. トライアンドエラーを繰り返す
  4. 「不可能を削り抜く」を理念に
  5. 妻から迫られた究極の選択
  6. 「風船会計」を組織強化に
  7. 社内アプリで総作業時間を68%減
  8. コロナ禍で作り始めた伝統製品
  9. 地元高校に自動車パーツを提供
  10. 山あいの工場から世界市場へ

 松本興産は松本さんの父・肇さんが、時計などの部品加工から始めました。松本さんが家業入りしてからはCNC旋盤による精密切削技術を武器に、大手自動車メーカー用の部品加工が約95%を占めます。従業員数は143人、年商32億円まで成長。年商約12億円のタイ法人も経営しています。

 自動車1台には2~3万点の部品が必要とされますが、松本興産ではそのうち0.9%をカバーしているそうです。種類もハンドルやトランスミッション、ステアリング、カーナビゲーション、自動運転用のカメラまで様々。それでも松本さんは「0.9%しか貢献していません。自動車技術は進歩しており、まだまだ夢を追いかけられます」と貪欲です。

松本興産が加工した自動車部品(ディスク)
松本興産が加工した自動車部品(ディスク)

 野球に没頭した学生時代を送った松本さんは、機械系の大学に進学。自動車部品関連の商社や、大手機械メーカーを経て、27歳のときに松本興産に入社しました。

松本興産は秩父地方の山あいにあります
松本興産は秩父地方の山あいにあります

 当時の主力は電子機器や時計などの部品加工でした。しかし、生産は賃金の安い海外工場に流れ、売り上げは減る一方。「父から『お前で何とかしろ』と昭和のノリで言われました」

 自動車部品に着手したのは1998年ごろ。商社時代の知人から、カーエアコンのコンプレッサーを制御するバルブの製造を頼まれたのがきっかけでした。

自動車部品参入のきっかけとなったバルブ(写真右端は削る前の素材)
自動車部品参入のきっかけとなったバルブ(写真右端は削る前の素材)

 大手メーカーでも多くの不良品を出す部品でしたが、「3カ月ほど取り組み、奇跡的に試作品10個ができた」と語ります。

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