目次

  1. 雇用証明書とは?
  2. 雇用証明書が必要になるケース
    1. 保育園・保育所への入所申し込み
    2. 転職活動で内定を得たとき
    3. 住宅ローンを組むとき、賃貸住宅を契約するとき
    4. 資格試験や研修を受けるとき、受けることを前提に採用されたとき
    5. 外国人労働者がビザを更新するとき
  3. 雇用証明書のテンプレートを使った作成例
  4. 雇用証明書作成の注意点
    1. 提出先に様式があるか確認し、あればそれを利用する
    2. 情報は必要な範囲で不備なく記載する
    3. 時間がかかることをあらかじめ伝える
  5. 雇用証明書を提出先に合わせて適切に作成しよう

 雇用証明書とは、労働者が企業に雇用されていることを証明する書類です。在籍証明書、勤労証明書、就労証明書などとも呼ばれます。発行者は企業で法律により企業に交付が義務付けられているものではありませんが、労働者の便宜を図るため、交付を求められた場合には作成・交付することが望ましいです。

 労働者が雇用証明書を必要とするのは下記のようなケースです。それぞれのケースによって提出する意図が異なるため、提出先を確認してから作成することをおすすめします。

 労働者が保育園・保育所などの施設の利用を申し込む際、年度をまたいで継続利用する際などに、労働者の勤労実態を把握する目的で施設から交付を依頼されることがあります。これは保育の必要性の有無を確認するためです。

 この場合は、主に次の内容を確認されることが多いため、網羅的に記載することが望ましいでしょう。なお、この場合は自治体や保育園などが様式をもっていることも多いため、交付の際は労働者本人に書式の有無を確認してください。

  • 常勤、非常勤の別(非常勤の場合は勤務期間)
  • 就労時間、就労曜日、過去の就労実績
  • 産前産後休業、育児休業の取得期間及び復帰予定日
  • 育児のための短時間勤務の利用の有無(利用する場合はその勤務時間)

 労働者が転職活動で内定を得た場合、内定先から交付を依頼されることがあります。これは本人が提出した職務経歴書との整合を確認する目的や、過去の勤務期間・実績などを確認するためです。特に、児童発達支援管理責任者、児童指導員など児童福祉関係の仕事では実務経験証明書という名称で過去の雇用証明の提出が求められます。また、一部の公務員では、採用要件として民間企業への在籍経験を求めることがあります。

 これらの場合は、特に転職前の企業における実際の業務内容や地位などの確認を目的としています。交付を求められた場合は提出先に書式があるか確認し、任意書式の場合は下記のような内容を書くとよいでしょう。

  • 在籍中の勤務部署の名称、肩書、勤務期間
  • 勤務期間中に行っていた業務内容

 労働者が新たに住宅ローンを組む場合や賃貸住宅を契約するときなどに、不動産業者などから交付を依頼されることがあります。これは本人に安定した収入があるか、将来にわたりその収入を維持できるかどうかといった目的があるからです。

 これらの場合は特に年収額の確認を行う目的で交付を求められるため、記載に当たっては直近の給与総額を記載するとよいでしょう。しかし、金額の確認は源泉徴収票や自治体で取得できる課税証明書などでも確認ができるため、そちらで対応可能な場合もあります。

  • 常勤、非常勤の別(非常勤の場合は勤務期間)
  • 勤務先での肩書
  • 直近の年収総額

 前述の児童福祉関係の仕事以外にも、資格取得のための受験や、資格取得のための研修を受講するにあたって雇用証明を求められる場合があります。この用途の場合は実務経験証明書という名称で呼ばれることが多いです。在籍中の社員が受験する場合以外にも、これらの資格取得を前提に採用された場合なども提出を求められることがあります。

 特に介護福祉士国家試験や建築・電気工事施工管理技術検定など、受験に必要な書類である場合は、速やかに対応することが望ましいです。

  • 実際にその業務に従事していた期間・日数

 外国人労働者が就労ビザを更新する場合、添付書類として勤務先の在職証明書を添付します。この場合は下記の情報を網羅的に記載しましょう。

  • 雇用している外国人の氏名・生年月日・性別
  • 所属部署
  • 入社年月日
  • 職務上の地位・給与額
  • 職務の内容

 ここでは厚生労働省の雇用証明書のテンプレート(30KB)を用いて作成する場合の例を説明します。なお、前述のとおり提出先によっては様式を持っていることもあるため、その場合はその様式を使うようにし、「任意様式でかまわない」と言われた場合は下記を参考に作成してください。★印は任意様式で作成する場合、筆者が最低限必要だと考えている項目です。記載に当たっては労働者から求められたものであっても個人情報であることに留意し、必要な範囲内で証明するよう配慮するとよいでしょう。

雇用証明書の雛形
出典:雇用証明書|厚生労働省 サイズ:30KB
項目 内容
作成日・提出日★ 証明書の作成日、証明日を記載します。証明日と同一になることもあります。
氏名★ 雇用していることを証明する労働者の名前を記載します。
事業主証明★ 証明する企業の所在地、名称を記入します。役職名・氏名については代表者の役職・氏名を記入することが一般的ですが、人事部・総務部などの長の名前で作成しても多くの場合は問題ありません。押印については氏名と一致させます(代表取締役で記載した場合は代表取締役印で押印します)。
証明日★ 雇用証明書の記載日を記入するか、提出日を記載することになります。こちらは提出先によって「〇月〇日現在」と指定がある場合があるため、記載前に確認するとよいでしょう。
契約期間★ 期間の定めのある雇用かどうかを記載します。期間の定めがない場合は採用日、期間の定めがある場合は契約期間を記載します。
就業の場所★ 「本社」や「〇〇支店」など、実際に就労する場所を記載します。
業務内容★ 実際に従事している内容を記載します。「小売店舗における対人接客及び販売、販促業務」など書ける範囲で具体的に記載します。
職位・肩書 一般に最終の肩書や職位を記入します。
勤務時間 始業・終業の時刻、休憩時間の有無、時間外労働の有無などを記載します。変形労働時間制の適用を受ける場合は、勤務時間が最も長くなる日の時間で記載します。また、フレックスタイム制などで勤務する場合は月の所定労働時間で記載します。企業カレンダーにより勤務日が変動する場合やシフト制の場合などは、月所定労働日数で記載することで足りる場合もあります。
休日 休日がどのように定められているか、休日勤務の有無を記載します。勤務時間と同様に、固定の休日が設けられている場合はそれを記載し、休日が変動制の場合は月の休日日数を記載します。
賃金 一般に基本給・手当を含めた総額とその内訳、賃金締切日と支払日、賞与・退職金の有無などを記載します。また、過去3カ月など一定期間の賃金総額の証明を求められる場合もあります。
退職に関する事項 定年制の有無(ある場合は定年となる年齢)、継続雇用の有無(ある場合は最長の雇用可能な年齢)などを記載します。
その他 社会保険、雇用保険などへの加入状況や、前述の項目以外に労働者から特に記載を求められたことがあれば記入します。

 雇用証明書は労働者にとって大切な書類です。不備がある場合作り直しなどの手間もかかることから、作成にあたり注意すべき内容を紹介します。

 雇用証明書の用途は前述のとおり多岐にわたり、それぞれ提出先が求める意図は異なります。提出先が必要な情報を網羅した様式を持っていることも多いため、労働者から作成を依頼された場合は先方から提示された様式があるかを確認し、そちらに基づいて作成しましょう。

 雇用証明書は労働者の求めに応じて作成する書類ではありますが、個人情報であることにも配慮する必要があります。特に任意様式で作成する場合、給与額の情報等まで提出先が求めているのかなど、証明が必要な項目を確認して作成するとよいでしょう。

 雇用証明書には個人情報が含まれるため、作成できる担当者が限られることがあります。そのため、作成を依頼された時点で一定の時間がかかることを伝えるとよいでしょう。また、渡すことができる日の見込みが立っていれば合わせて伝えておきましょう。

 雇用証明書は、労働者が必要な場面で円滑に手続きを進めるための重要な書類です。提出先の意図や求める情報に応じた適切な記載が、スムーズな手続きの鍵となります。

 必要とされる情報を正確に記載した証明書を作成することで、労働者に安心感を与え、企業への信頼感を向上させることも期待できます。雇用証明書の作成を通じて、労働者と企業の良好な関係をさらに強化していきましょう。