目次

  1. 【種類別】銀行融資の金利相場
    1. 信用保証付き融資
    2. プロパー融資
    3. ビジネスローン
    4. 信用金庫の融資
    5. 日本政策金融公庫
    6. ノンバンク
    7. ファクタリング
  2. 銀行融資の金利の種類
    1. 固定金利
    2. 変動金利
  3. 銀行融資を受けるときの利息の計算方式
    1. 元金均等返済
    2. 元利均等返済
  4. 銀行融資の金利は5つの要素で決まる
    1. 融資期間
    2. 担保設定の有無
    3. 返済能力と貸し倒れのリスク
    4. 金融機関の利益やコスト
    5. 政策金利
  5. 銀行融資の金利上昇に備えるポイント4つ
    1. 固定金利への借り換えや新規融資を検討する
    2. 政府系の金融機関や補助金を活用する
    3. 銀行融資以外の資金調達方法を検討する
    4. 財務体質を見直し、自己資本比率を向上させる
  6. 銀行融資の金利動向を把握してムダのない借り入れを

 銀行融資の金利は、借り手の信用力や担保の有無、融資の目的、返済期間、さらに経済情勢や金融機関の戦略によって異なります。そのため、どの融資が最適かを判断するには、各融資の金利相場や特徴を理解することが重要です。

 特に中小企業の場合、信用保証付き融資や政策金融機関を活用するケースが多い一方、ビジネスローンやノンバンクのような高金利の融資に頼ることもあります。ここでは、代表的な融資形態を取り上げ、それぞれの金利相場や特徴について詳しく解説します。

 信用保証付き融資は、中小企業が最も利用しやすい融資形態の一つです。金融機関から直接融資を受けるのではなく、各都道府県の信用保証協会が借入金の一部または全額を保証する仕組みのため、金融機関にとってリスクが低く、比較的低い金利が適用される傾向にあります。

 金利の相場は1.0%〜3.0%程度ですが、これに加えて信用保証協会の保証料が発生します。保証料率は通常年率0.45%〜2.20%程度で、借入金額や期間によって異なります。

 金利そのものは後に説明するプロパー融資より低い傾向にあるものの、金利と保証料の合計負担額で考えると高くなる場合があります。しかし、審査のハードルが低めであることや、無担保・無保証人で利用できるケースが多い点から、資金調達の選択肢として有力です。特に、創業間もない企業や財務基盤が不安定な企業に向いています。

 また、信用保証付き融資には各都道府県や市町村、国が関与する制度融資という仕組みも存在します。制度融資は、自治体が金融機関と信用保証協会と連携して、一定の条件を満たす中小企業に対して優遇された条件で融資を行う制度です。

 制度融資の特徴は下記のとおりです。

特徴 詳細
固定金利が適用される制度が多い 金利が安定しており変動リスクを軽減できる
利子補給が行われることもある 自治体や国が利子の一部を補助してくれるため、中小企業の金利負担を実質的に軽減できる
利用条件が地域や事業内容によって異なる 地域振興や特定の業種支援を目的としたプログラムが多く、それぞれの自治体の政策に沿った要件が設定されている

 制度融資は、例えば事業承継や創業、設備投資など、特定の目的に応じて提供されることが多くあります。中小企業にとっては低コストで資金調達しやすい点から有用な選択肢の一つとして挙げられ、事業の安定運営や成長促進に役立てられています。

 ただし、申請手続きがやや複雑で、自治体や金融機関との調整が必要な点に留意が必要です。利用を検討する際は、自治体の窓口や金融機関に事前に相談することをおすすめします。

 プロパー融資は、金融機関が信用保証協会をとおさず、直接中小企業に融資を行う形態です。金融機関側がリスクを負うため、審査基準が信用保証付き融資に比べて厳しい傾向があります。融資の条件によって異なりますが、金利相場は一般的に1.5%〜4.5%程度です。

 プロパー融資では、借り手企業が高い信用力を持つ場合や担保を提供できる場合には、信用保証付き融資よりも総コストが低くなる可能性があります。担保の提供を求められることが多く、その場合は担保評価額や書類整備も借入の条件となることがあります。

 この融資形態は、信用力が一定以上ある企業や、ある程度安定した事業基盤を持つ中小企業に適しています。また、プロパー融資を受けることができると、金融機関との信頼関係が強化され、将来的にさらなる融資を受けやすくなる利点もあります。

 ビジネスローンは、金融機関や貸金業者が提供する、事業資金のための無担保・無保証型ローンです。手続きが簡単で、スピーディーに借り入れできる点が特徴ですが、金利は比較的高く、5.0%〜14.0%程度が一般的な相場です。また、元金よりも金利の返済負担が多くなる場合があり、総返済額が膨らむリスクがあります。

 一部のビジネスローンでは、不動産を担保に取る場合もあります。この場合、金利はやや低めに設定されますが、担保を失うリスクが伴うことから企業には慎重な判断が求められます。短期的な運転資金の補填など急ぎの資金調達に適しているものの、長期的な利用は避けたほうが無難でしょう。

 信用金庫は、地域密着型の非営利組織として市中銀行よりも顧客との距離が近い点が特徴です。金利相場は2.0%〜4.5%程度と市中銀行よりやや高めではあるものの、親身に融資相談に応じてくれることが多く、中小企業にとって頼りになる存在です。

 信用金庫は営利を追求しないため、地域の事業者支援を重視しています。融資の相談時には、単に金銭的な審査だけでなく、事業計画や地域貢献の観点からの助言を行うこともしばしばあります。特に、創業支援や事業承継を含む地元企業の長期的な発展に寄り添った対応が期待できます。

 日本政策金融公庫は国が設立した公的機関で、中小企業支援を目的とした制度融資を数多く提供しています。金利相場は0.5%〜2.0%程度と低めに設定されており、固定金利で安定した返済が可能な点も魅力です。特に、創業資金や事業承継資金に関する融資制度は、中小企業にとって利用価値の高いものとなっています。

 ただし、日本政策金融公庫の役割は「市中金融機関の補完」であり、通常の金融機関取引を置き換えるものではありません。このため、極端に低金利な融資は期待できない場合もあります。また、政策目標に沿った事業内容であることが求められるため、事前に事業計画書の準備や相談が必要です。

 ノンバンクは、銀行ではない貸金業者が提供する資金調達手段で、ビジネスローンと同様に迅速な融資が特徴です。しかし、市中銀行よりも金利は割高で、7.0%以上が一般的です。また、社長個人の保証がほぼ必須とされ、返済負担が経営者個人にまでおよぶリスクがあります。

 ノンバンクは審査基準が緩やかな場合が多いため、銀行融資が難しい場合の選択肢となり得ますが、長期利用や高額借り入れは避け、短期的な資金需要に限定して利用することが望ましいでしょう。

 ファクタリングは、企業が保有する売掛金を買い取ってもらうことで資金を調達する仕組みです。銀行融資とは異なり借入ではないため、返済義務は発生しませんが、金利に相当する手数料が発生します。手数料率は10.0%以上と高めで、総コストは銀行融資よりも大幅に高くなりがちです。

 緊急の資金調達手段としては有効ですが、常用すると手数料負担が利益を圧迫し、結果的に資金繰りを悪化させる要因となります。そのため、ファクタリングは短期的・一時的な資金需要に限り利用し、安易に依存しないことが重要です。

 銀行融資の金利には、大きく分けて固定金利と変動金利の2種類があります。金利は「ベースレート(市場金利)」と「スプレッド(金融機関の収益幅)」で構成され、どちらのタイプを選ぶかによって返済額やリスクに大きな違いが生じます。

 なお、安定性を重視するなら固定金利が有利です。長期的な事業運営や大規模な設備投資に向いています。一方、低金利を活かしたいなら変動金利が適しています。ただし、金利の上昇リスクに備え、事業計画に余裕を持たせることが重要です。

 いずれの選択でも金融機関と綿密に相談し、事業の状況や資金計画に適した金利タイプを選ぶことが成功のカギとなります。

 固定金利は、融資期間中に金利が変わらず一定であるタイプです。主に、異なる円金利同士を交換する「円/円スワップレート」を基準ベースレートとして決定されます。

メリット デメリット
・市場金利の変動に影響されず、将来の返済額が予測しやすい
・長期的な資金計画を立てる際に安心感がある
・変動金利に比べて初期金利が高めに設定される傾向がある
・金利が市場で低下した場合、その恩恵を受けられない

 固定金利は、長期的な事業資金調達や金利上昇リスクを避けたい場合に向いています。特に、現行の金利が低い時期に契約することで、将来的な負担を抑えられるメリットがあります。

 変動金利は、融資期間中でも市場金利の変動に応じて金利が変化するタイプです。基準となるのは、短期プライムレートやTIBOR(東京インターバンク金利)などです。

メリット デメリット
・固定金利に比べて初期金利が低く、総返済額を抑えられる可能性がある
・金利が市場で低下した場合、その恩恵を受けられる
・市場金利が上昇すると、返済額が増えるリスクがある
・金利変動を正確に予測することが難しく、返済計画が不安定になる可能性がある

 変動金利は、短期的な借入や金利の動向を常に把握できる状況での利用に適しています。ただし、金利上昇時には返済負担が急増するリスクを認識しておく必要があります。

 銀行融資を受けた際の毎月の返済額は、主に元金均等返済と元利均等返済のいずれかの方法で計算されます。利用する融資の種類や目的によって採用される計算方式は異なり、事業性融資では元金均等返済が主流です。一方、元利均等返済は不動産賃貸物件に対する融資など、一部の用途に限定されています。

 事業資金の借入では元金均等返済が標準的なため、事業性融資を受ける場合にはこれを前提として返済計画を立てることが重要です。なお、不動産賃貸業や住宅ローンのように安定的な収益が見込める場合は、元利均等返済が適することがあります。

 元金均等返済は、毎月の返済額のうち元金部分が一定で、利息は残高に応じて計算される方式です。事業性融資では、こちらの方式がほとんどの場合で採用されます。

元金均等返済のイメージ図
元金均等返済のイメージ図(筆者作成)
特徴 ・元金部分が一定で、利息は残高に比例して減少する
・返済が進むにつれて毎月の負担額が少なくなる
メリット ・総返済額が元利均等返済よりも低く抑えられる
・借入期間中の利息負担が減少していく
デメリット ・返済初期の負担が大きく、キャッシュフローに余裕が必要である
・毎月の返済額が減少するため、一定額の返済を希望する場合には不向き

 事業性融資において元金均等返済が採用される理由として、事業者が計画的に元金を減らし、将来的な返済負担を軽減できる点が挙げられます。また、金融機関にとってもリスク管理がしやすい方式であるため、一般的に広く用いられています。

 元利均等返済は、毎月の返済額(元金 + 利息)が一定となる計算方式です。例えば、不動産賃貸物件の融資などで用いられることが多いものの、事業性融資ではほとんど採用されていません。

元利均等返済のイメージ図
元利均等返済のイメージ図(筆者作成)
特徴 ・毎月の返済額が一定で資金計画を立てやすい
・初期段階では利息の支払いが大きく、元金の減少が緩やか
メリット ・返済額が一定のためキャッシュフローの予測がしやすい
・賃貸物件など収益が安定的に見込める事業に適している
デメリット ・総返済額は元金均等返済より高くなる傾向がある
・借入期間が長い場合は利息負担も大きくなる

 住宅ローンや不動産融資ではこの方式が一般的ですが、事業性融資では不動産投資融資以外はほぼ使われていません。

 銀行が企業に融資を行う際に設定する金利は、単に政策金利や市場金利に連動しているだけでなく、借り手となる企業や融資条件に応じて個別に決定されます。以下では、金利を決定する際の主要な要素を解説します。

 融資期間が短期であれば金利は低くなる傾向ですが、長期になるとその分リスクも高まるため金利は上昇します。

 短期融資は銀行が元金を迅速に回収できるため、リスクが低く、金利も低めに設定されやすいです。一方、長期融資では返済期間中の市場金利変動や、借り手の経営環境変化がリスク要因となりやすいため、それらを反映して金利が上昇します。

 担保の有無は、融資のリスクを大きく左右する要因です。「信用保証付き融資」も一種の担保とみなされます。

 信用保証付き融資や不動産や設備などの担保が設定されている場合、銀行は返済が滞った際に保証を履行してもらうことや、これらを差し押さえることでリスクを軽減できるため、無担保融資に比べて金利は低くなる傾向があります。反対に、無担保融資ではリスクが高くなるため、その分金利が上昇します。

 借り手企業の返済能力を示す指標として、銀行側は「売上高」「利益率」「財務状況」などを重視しています。例えば、収益性が高く安定した企業は貸し倒れリスクが低いため、銀行も低金利で融資を行いやすくなります。

 一方、赤字経営や財務健全性が低い企業は、貸し倒れリスクを加味した金利上乗せが適用されることがあります。銀行が重視する財務指標として、自己資本比率や債務償還年数も評価のポイントとなります。

 銀行も営利組織であるため、融資を通じて一定の収益を確保する必要があります。そのため、金利の設定には以下の要素が反映されます。

  • 資金調達コスト(預金や他の金融機関からの借入コスト)
  • オペレーションコスト(融資審査や管理にかかる経費)
  • 利益確保のためのスプレッド(金利差)

 これらの要素が組み合わさることで、銀行側の収益を確保しつつ適切な金利が決定されます。

 日本銀行が決定する政策金利は、金融機関の資金調達コストに直接影響を与えるため、融資金利の基礎を形成します。例えば、短期プライムレートや長期プライムレートは政策金利に基づいて設定されるため、これらが変動すると銀行融資の金利にも影響します。

 特に、政策金利が上昇する局面では、市場金利が高まる結果として借り手の融資金利も上昇すると考えられます。この点を念頭に置き、金利上昇リスクに備えた資金計画を立てることが重要です。

 日銀が金融緩和策の修正を進めるなか、政策金利の引き上げが議論されています。この動きにより、市場金利や銀行融資金利の上昇が中小企業の資金調達コストに影響をおよぼす可能性があります。そのため、企業は早めに対策を講じることが重要です。

 金利が低い今のタイミングを活用し、固定金利型の融資を検討することが有効な対策です。変動金利では、政策金利や市場金利の上昇により将来的に支払い利息が増えるリスクがありますが、固定金利型であれば返済額を一定に抑えることができます。

 既存の融資が変動金利の場合、以下の手順で借り換えを検討するとよいでしょう

  • 金利水準や返済期間など現在の融資条件の見直し
  • 金利条件の交渉や借り換えの可否などを金融機関と相談
  • 財務諸表や事業計画書など借り換えのために必要な書類の準備

 これにより、将来の返済負担を軽減し、資金繰りの安定化を図ることができます。

 日本政策金融公庫のような政府系の金融機関は、一般的に低金利での融資を提供しており、金利上昇局面でも有効な資金調達手段です。特に、各種補助金や地域活性化支援融資などの制度を利用すれば、利子補給や返済負担の軽減も期待できます。

 政府系の融資や支援を活用する際のポイントとしては、以下が挙げられます。

  • 制度融資の情報を確認:自治体や政府機関のウェブサイトで最新情報をチェックする
  • 融資相談会への参加:専門家や担当者と直接話し、条件に合う制度を探す
  • 補助金・助成金の活用:融資の利息負担を軽減する補助金も併せて検討する

 これにより、金利上昇リスクに対処しつつ、事業資金を効率的に調達することが可能です。

 デットファイナンスといわれる銀行融資による資金調達の他には、資本増加によるエクイティファイナンスも有効です。特に、金利上昇の影響を受けにくい「投資型の資金調達」の検討がおすすめです。

 投資型の資金調達を考える場合、国の政策実施機関である中小企業投資育成株式会社から資本注入を受けることを選択肢に入れましょう。中小企業投資育成株式会社は、安定的な株主となり中長期的な視点で企業成長を支援してくれます。なお、融資ではなく出資となるため返済義務はありませんが、一定の配当を求められたり、持続的な事業成長や経営透明性が求められたりします。

 この仕組みの活用により、自己資本比率を向上させ、財務体質の強化が図れます。さらに、信頼性の向上により他の資金調達手段にもプラスの影響を与える可能性があり、銀行金利の影響を抑えながらも柔軟で安定した資金調達を実現することができます。

 金利上昇に備えるには、財務基盤の強化も重要です。自己資本比率を向上させることで、金融機関からの評価も向上し、低金利での融資交渉が可能となります。また、自己資本が充実していれば融資依存度を下げられるため、金利上昇リスクの影響を軽減できます。

 利益率の改善による資本蓄積や不要な資産の売却は、借入比率を低減できます。その結果、金融機関からの評価を上げられ、金利上昇時でも銀行との金利交渉を有利に進められる経営体制を築けるでしょう。

 銀行融資の金利は、政策金利や経済環境、企業の信用状況によって変動するため、経営に大きな影響を与える要素の一つといえます。銀行融資を検討する際は、金利動向を冷静に把握し、自社にとって最適な借り入れ方法を選ぶことが重要です。

 中小企業にとって、金利負担を最小限に抑えるための工夫や、複数の資金調達手段を検討することは、資金繰りを安定させる重要なカギだといえます。固定金利や制度融資の活用、政府系機関の支援を取り入れながら、金利上昇リスクを考慮した経営計画を立てましょう。

 事前準備をしっかり行い融資を戦略的に活用することで、未来の成長につながる強固な経営基盤を築くことができます。自社に最適な選択肢を見つけ、持続的な成長に向けて大きな一歩を踏み出していきましょう。