工場に掲げる安全標語の例は？作り方のヒントを解説

工場で掲げる安全標語とは

　安全標語は、工場や作業現場で従業員の安全意識を高め、労働災害を防止するための短いスローガンです。

　工場内で安全標語を掲げることで、従業員の安全意識が向上し、ヒューマンエラーの減少や職場全体の安全文化の醸成につながります。例えば、「思い込み　『だろう』作業は　やっちゃダメ！」という標語は、作業中の思い込みによるミスを防ぐことを目的に活用できます。

　さらに、社内で安全標語を公募すれば、従業員が自ら安全について考える機会を意図的に設けることができ、主体的な安全意識の向上が図れます。

関心を持ってもらう安全標語を作るポイント

　安全標語は職場の安全意識を高めるためのものであり、現場の作業員はもちろん、従業員全員の関心を引く必要があります。ここでは、関心を持ってもらう安全標語にするための5つのポイントを紹介します。

安全標語のテーマを決める

　安全標語を作成する際には、まず職場の状況にあわせたテーマ設定が重要です。テーマが明確であれば、標語が指し示す目的が分かりやすくなり、安全意識の向上につながります。

　テーマは、従業員が日常的に直面する安全課題や重点的に改善すべき点に着目して選定します。例えば、「転倒防止」「機械操作時の注意」「作業環境の整理整頓」など、具体的な課題にフォーカスし、標語が従業員にとって身近で実践的なものになるようにしましょう。

具体的な場面をイメージできる内容にする

　安全標語は、従業員が日常的に直面する具体的な状況をイメージできる内容であることが重要です。漠然とした表現よりも、以下のように日常の作業中に注意すべき行動や場面を描写すると効果的です。

• 思い込み、確認不足が事故を招く
• 片手作業、もう片方の安全は守れない
• 汚れた床、滑る危険は予防で解消
• 安全靴のひも、緩む心を締め直せ

　こうした標語は、従業員に自身の行動を振り返らせ、行動の改善を促します。また、標語が単なるスローガンではなく、実践的な指針となって職場内に浸透し、従業員同士での安全意識向上に関する議論や教育のきっかけとしても機能します。

5・7・5のリズムを意識する

　俳句特有の5・7・5のリズムを活用することで、覚えやすい安全標語になり、従業員の意識に残りやすくなる効果があります。

　例えば「焦らずに　安全確認　ひと呼吸」など、短くリズミカルな言葉で表現すると、親しみやすさが増し、日常業務で自然に意識されるようになります。また、リズムを意識することで単調にならず、魅力的で注目を集めやすい標語が作れるでしょう。

　特に、工場などで繰り返し目にする標語には、5・7・5のリズムを活用しましょう。

命令形や疑問形を使う

　安全標語に命令形や疑問形を取り入れると、従業員に強いインパクトを与え、注目を集めやすくなります。

　以下のような標語は、特に即時的な安全確認が必要な場面で注意喚起する力が強く、従業員の意識を引き締めるのに効果的です。

• 火気注意！　消火器位置を　知ってるか？
• 手順守れ！　自己流作業　するなかれ
• 疲れてる？　無理せず休め　事故防止
• 確認だ！　一歩進む　その前に

　命令形や疑問形を用いることで、標語が具体的な行動を促しやすくなるだけでなく、従業員に標語のメッセージを反射的に考えさせるきっかけを与えます。

掛け詞（かけことば）を使う

　掛け詞は、言葉の響きや意味を二重に使う技法で、安全標語に深みとユーモアを与えます。

　例えば、以下のように一つの言葉に複数の意味を持たせると、従業員の興味を引き、標語が単なる注意喚起にとどまらず、記憶に残りやすいものになります。

• 焦らない、忘れない、あせ（汗）をかかない安全作業
• 手を抜くな　命の綱（つな）を　繋（つな）ぐため
• 慣れすぎて　危険を見逃す　慣れ（馴れ）合いは

　このような言葉遊びは、特に、職場の雰囲気を和らげつつ安全意識を浸透させたい場合に有効です。また、掛け詞を用いることで、標語の作成過程自体が楽しみとなり、従業員の積極的な参加を促せます。

工場の安全標語作成のヒントになるキーワード

　工場の安全標語を効果的に作成するためには、従業員がイメージしやすいキーワードの活用が重要です。ここでは、安全標語に活用しやすい具体的なキーワードを紹介します。

初心を忘れない行動をイメージできるキーワード

　初心を忘れない行動を促すキーワードには、「基本」「確認」「一歩」などが挙げられます。これらの言葉は、初めて業務を行うときに、慎重さや丁寧さを想起させます。

　例えば、「基本確認　忘れず守る　安全第一」という標語に活用でき「初心を思い出す」といった表現を補足的に使用することで、日々の業務でも初めての作業のように慎重に行動する意識を従業員に持ってもらえます。

• 初心を思い出し、基本確認で守る安全
• 初めての気持ちで作業開始、初心忘れず安全第一
• 初心を胸に、確認忘れず安全作業

　「初心」は常にリスクを見直す姿勢を表す言葉として効果的です。

情報共有の大切さをイメージできるキーワード

　情報共有の重要性を表すキーワードとして、「伝達」「共有」「連携」などがあります。職場内での円滑なコミュニケーションを促す標語に適しており、従業員同士が安全を意識し、互いに補い合う職場環境を作る手助けになるでしょう。

　例えば、「危険な兆候　みんなで共有　事故ふせぐ」といった形で活用できます。また、「声かけ」や「報告」といった具体的な行動を示す言葉を取り入れると、さらに実践的な標語になります。

明るいイメージになるキーワード

　明るい職場環境を連想させるキーワードには、「笑顔」「安心」「未来」などがあります。これらの言葉は、安全をポジティブに捉えた標語を作る際に役立ち、従業員が安全に取り組む意欲を高めることが期待できます。

　例えば、「笑顔咲く　安全職場で　明るい未来」といった表現で、前向きなメッセージを発信できます。また、以下のように「太陽」や「輝き」といった比喩的な表現を加えると、より記憶に残りやすい標語に仕上げられるでしょう。

• 太陽のように温かく、互いを守る安全作業
• 危険を照らす、安全の太陽を胸に
• 輝く笑顔で、みんなで守る安心の職場

工場の安全標語例文

　中小建設業特別教育協会では、さまざまな安全標語が紹介されており、自社での標語作成などで役立てられます。

　例えば、以下の標語では「声掛け」や「チームワーク」というキーワードが使われています。

• 声掛け安全　人と動作と　自分自身に
• 声かけは　みんなを守る　命の言葉
• 声掛けで　未然に防ごう　事故災害
• 安全を　守る秘訣は　チームワーク
• チームワーク　笑顔声掛け　合図から

　これらの標語では、職場でのコミュニケーションや協力が安全確保に重要であるというイメージが強調されています。

　また、以下の標語では「報告」や「連絡」というキーワードが使われています。

• 自他ともに　体調異変　すぐ報告
• 体調が 悪けりゃすぐに　報告を 無理して悪化　熱中症
• 教えよう　ヒヤリ共有　安全職場
• みんなで共有　安全意識と　危険予知

　こういったキーワードを用いることで、職場での報告や連絡の重要性を強調し、安全意識を高めることができるでしょう。

　以下のような「点検」や「確認」というキーワードが使われた標語は、作業前や作業中の確認作業が安全確保に不可欠であるという意識を根付かせることができます。

• 点検で　守ろう安全　大事な命
• 指を差し　よく見よく聞く　良い点検
• もう一度　初心に戻り　再確認
• 災害を　防ぐあなたの　その確認

労働災害発生時の対応

　労働災害が発生した際は、被災者の救護から再発防止の徹底まで、適切な対応が不可欠です。以下の表を参考に、対応内容を解説します。

　まず、事故が発生したら直ちに被災者の救護を行います。必要に応じて応急処置を施し、重傷の場合は速やかに救急車を手配します。同時に現場の安全を確保し、二次災害の防止に努めましょう。

　次に、現場で事故の状況を詳細に調査し、原因を特定します。目撃者からの聞き取りや現場の写真撮影などを行い、再発防止策の検討に必要な情報を収集します。

　その後、所轄の労働基準監督署へ報告を行います。なお、労働災害の内容によって報告タイミングが異なり、休業4日以上の労働災害は「労働者死傷病報告書」の提出が必要です。報告を怠ると「労災隠し」と見なされ、罰則の対象となる可能性があります。

　最後に、調査結果や過去の類似災害なども参考に再発防止策を検討し、実施します。具体的には、安全管理体制の見直しや労働者への安全教育の強化、設備の改善などが考えられます。再発防止策の実施以降も、その効果をフォローアップしましょう。

ユーモアある安全標語を掲げて工場の事故を防止

　工場での安全標語は従業員の安全意識を高め、労働災害を防ぐ重要な役割を果たします。安全標語を作成する際には、テーマ設定が欠かせず、5・7・5のリズムや命令形、掛け詞の活用など、従業員全員の関心を引く取り組みが必要です。

　安全な職場環境を築くためには、従業員一人ひとりの努力と工夫が欠かせません。ぜひ本記事の内容を参考に、貴社独自のユーモアのある安全標語を作成し、明るく安心できる職場作りに取り組んでください。「安全第一」の精神で、次の一歩を踏み出しましょう。