目次

  1. 中小企業を取り巻く環境の変化
  2. 【経営者向け】いずれ潰れる会社の特徴10選
    1. 売上至上主義である
    2. 営業活動を実施していない
    3. 社員の評価基準がない
    4. 社員への教育をしていない
    5. 社内で定例会議が実施されていない
    6. 設備投資を行っていない
    7. ホームページが更新されていない
    8. 整理・整頓・清掃をしていない
    9. 社長の年齢が70歳なのに後継者がいない
    10. 資金繰りについて把握していない
  3. 会社の倒産を防ぐための対策7選
    1. 毎年800万円の利益を目指す
    2. 社員と面談した上で評価を行い、従業員への待遇を改善する
    3. 売上総利益率・粗利率を高める
    4. 事業計画を立案する
    5. 資金繰り表を作成する
    6. 社長が率先して学んでいく
    7. 新しいことにチャレンジする
  4. 業績回復で倒産を免れた成功事例
    1. A社の事例(値上げにより、利益率を高めた事例)
    2. B社の事例(リスケを含むキャッシュフロー改善した事例)
  5. いずれ潰れる会社の特徴に当てはまったら経営戦略の見直しを

 原材料の高騰、人件費の上昇、東京圏・大企業への集中化など、中小企業にとっての経営環境はこれまで以上に悪化しています。高齢になった経営者の「あきらめ倒産」も増えてきました。帝国データバンクによれば、2024年11月の倒産件数は834件。1月からの累計で9053件と、12月を残した状態で直近10年で最大になりました(参照:倒産集計 2024年 11月報|帝国データバンク)。

 業績が悪化した会社によく共通する特徴を10個紹介します。当てはまるものが少しでもあれば、改善していくとよいでしょう。

 会社運営で一番大切なのは「利益を残す」ことです。売上拡大は大切ですが、会社の目標として売り上げだけを設定している会社は利益率や残るお金に無頓着で、結果として赤字になってしまうことが多々あります。売上規模を拡大すると顧客の要望に対応することから、社員の増加や在庫の準備、新しい設備投資などにより、経費が大きく増えます。

 このとき売り上げに対する経費の割合が悪化していないか確認しなければいけませんが、売上至上主義の会社の多くは悪化していてもなかなか気づけません。

 筆者が支援する会社の中には、売上至上主義で利益や残るお金に無頓着な結果、入ってくるお金は多いが出ていくお金も多い「儲からない仕事」が増え、資金繰りに窮(きゅう)してしまったところもあります。売上至上主義で有名な企業である、ダイエーも最終的に潰れています。

 営業活動は、嫌われたり文句を言われたりすることも多いため、やりたくないと思うのは当然です。既存顧客先からの案件のみで事業を回せていれば、失敗・回収リスクも低く、心理的にも楽です。しかし長期的に見ると、営業しない会社は必ず業績が悪化します。既存顧客からの売り上げが落ちてきたり、競合先が増加したりする影響による売上・利益率の低下リスクは避けられません。

 筆者が企業の再生支援をするときも、営業活動のやり方を基本から支援するケースが多々あります。

 これからの日本では、社員を確保できない会社は残ることができません。社員を確保・維持していく上で絶対に必要な評価基準がないと従業員不足になり、事業の継続は困難になります。

 どの組織においても評価は難しいものですが、会社として評価基準を提示することは重要です。評価基準がなければ社員のやる気を高めることも、教育もできません。評価されない中で頑張る社員はいませんし、頑張る社員は辞めていきます。

 再生支援で筆者が関わる企業は、社員面談もせず、ボーナスもない会社がほとんどです。そうなると、社員は怒られないように最低限の活動しかしなくなり、新しい改善は何も進まず、売り上げが単純に低下していきます。

 能力とやる気のある従業員を雇っていくことは、会社の運営において最重要項目です。社員がいなければ事業承継もできません。2024年版「中小企業白書」にあるように従業員の雇用が最大の課題となる中で、評価基準がない会社は人手不足倒産に至る可能性が高いといえるでしょう。

2024年版 中小企業白書 p.3|中小企業庁
出典:2024年版 中小企業白書 p.3|中小企業庁

 いつもと同じ運営が続くのであれば、教育は必要ありません。ただし環境が変わるときには、教育を普段からしていないと会社が変化に対応できず、結果として競争力が落ちて売上・利益を失っていきます。

 会社という組織を効果的に運営していくためには、社長だけでなく各部署のリーダーが重要なポイントとなります。ただし、教育しないとリーダーは育ちません。リーダーになったあとも勉強を続けていかなければ、リーダーとしての資質を維持することも難しいでしょう。

 経営が悪化している会社には、リーダー人材が不足していることが多く一般社員の仕事のレベルも低い傾向です。教育にまったく時間もお金もかけていない場合が多く、人材不足の一因となっています。また、OJTを導入している会社は多いものの、ほとんどの会社で体系的な実施ができていません。

 なお、2024年版「中小企業白書」では、人材育成への取り組みを増やした企業は、売上高・労働生産性がともに増加傾向であると示しています。

2024年版 中小企業白書 p.25|中小企業庁
出典:2024年版 中小企業白書 p.25|中小企業庁

 今後、環境変化がさらに進む中で、社員教育に力を入れて変化対応能力を高めることが求められます。適切な教育をしない会社は変化に遅れて、利益が悪化していく状況に陥ります。

 定例会議を実施していない会社は、経営状況を確認し現状の問題点や将来に向けた取り組みが適切にできていない可能性があります。その場合、組織力が低下し、経営状況も悪化していきます。

 会議が無駄といわれることもありますが、試算表などで状況を確認すること、経営方針や社員の行動を決めて示すことは組織運営における重要なポイントです。

 会議を実施していない会社は数字面にも弱く、改善が行われていない傾向があります。特に営業社員の動きが顕著に表れ、ルート営業が単なる配達担当となってしまっていることもしばしばあります。

 会議の運営は手間もコストもかかるため、社員数が少ないと無駄だと判断して実施しないことも多いようです。しかし、会社の経営について振り返る機会が少ないと、状況悪化の把握が遅れて取り返しのつかない状況に至ってしまいます。

 設備投資は会社の競争力の源泉です。機械やソフトウェア、車両、照明など、さまざまな設備投資により効率が上がり、無駄な費用も抑えられます。そのため、設備投資をしない会社は競争力が劣り、他社に負けていく恐れがあります。

 順調な会社でも適切な設備投資を行わなかったために、競争力や収益力の低下を招いた事例があります。また、設備投資は従業員に見える形で会社の攻める・変わる方針を示すことにもなり、社内の士気にも影響します。

 ホームページは会社の顔です。会社の顔を定期的に見直ししないと、外部からは「経営姿勢に問題があり会社を継続的に続けていく状況にないかもしれない」と判断される可能性があります。

 取引先や入社希望者は、まずホームページを確認します。そのため、ホームページを更新していないと「営業姿勢が消極的・非戦略的そう」「組織力が欠けていそう」という印象を抱かれてしまいます。ホームページの更新を怠っていることで、新規受注の成約率が低くなることも発生します。

 顧客から仕事を獲得すること、従業員を採用することは、企業が生き残る上で最も重要なポイントです。ホームページへの意識が弱いことは、戦略的にも効率的にも他社に後れを取ることになっていきます。

 業績が悪い会社は、社内が汚く、書類が山ほどある場合が多いです。5S(整理・整頓・清潔・清掃・躾)活動は経営改善の基本手法なため、できていない会社は経営活動においても改善ができず、競争力が劣っていきます。

 特に、整理・整頓ができていないと経営のスピードも落ちますし、清掃をしていないと社員の意識や緊張感も下がっていきます。

 筆者が見てきた中には、整理・整頓をしたことで受注が増え、業績が上がった企業があります。反対に発注側の視点に立って考えると、整理・整頓ができていない会社への発注を減らそうという発想にもつながります。「あなたは社内が汚い会社に発注しますか?」という方がわかりやすいかもしれません。

 お金をかけなくてもすぐにできる、整理・整頓・清掃ができないということは、改善ができない会社であるといえ、やはり他社との競争で不利となっていく可能性が高いでしょう。

 社長の年齢が70歳なのに後継者がいない会社は、「利益が出ていない」「事業に将来性がない」などの問題から、5〜10年後の「あきらめ倒産」につながっていきます。

 2022年版「中小企業白書」によると、2021年時点での休廃業・解散企業の代表者年齢は、70代が約42%を占めています。

2022年版 中小企業白書 p.86|中小企業庁
出典:2022年版 中小企業白書 p.86|中小企業庁

 社長は基本的にエネルギーがあるので70歳でも元気です。とはいえ、70歳を超えてくると体力や健康面のリスクも出てきます。経営者の年齢が高いままでは与信面を考慮され、取り引きが小さくなることもあります。こういった観点からも、70歳を超えて後継者がいない会社は、高い確率で倒産・廃業に至るといえるでしょう。

 経営危機に陥る会社の中には、資金管理を経理担当者に任せきりにしている社長も多くいます。特に、攻めるのが好きな社長の場合、経理関連の業務を後回しにしがちです。

 銀行は状況の悪い会社にお金を貸しません。そのため、経営危機に陥ってから資金繰りについて考えても、手遅れになる可能性があります。

 経理担当者がしっかり報告していれば問題ありませんが、「担当者が気づかなかった」「社長のチェックが甘かった」などの要因が重なり、10日後に数百万円が足りないという状況に至った会社も見てきました。

 資金繰りは会社運営の肝なので、これを管理・把握できない会社は少しでも業績が悪化するとすぐに危険な状態になってしまいます。

 会社の倒産を防ぐのはそれほど難しいことではありません。ここでは、対策として取り入れやすい競争力を高めるための正しい努力方法を解説します。

 利益を確保し、貯めていくことが倒産を防ぐ王道の方法です。現金を増やせば倒産することはありません。

 2019年版「中小企業白書」によると、法人税を抑えるために利益をあまり出さないようにしている会社が多くあります。しかし、倒産を防ぐためにはまずは800万円の利益を目指すことが理想です。もちろん800万円以上の利益が出るのを抑える必要はありません。

 利益を出すと法人税が発生しますが、納税する方が倒産は防げます。法人税率は800万円まで低く、社会保険料や個人の所得税・住民税と比べても格段に低いです。また利益が出ていれば、金融機関から低い金利で大きな金額を借り入れることも可能となり、より経営が安定するようになります。

 倒産を防ぐために、まずは800万円の利益を確保することを目指してください。800万円の利益が出せるようになれば、国内の上位20%に入る優良企業となります。

 これからは社員を採用・維持できる会社しか生き残れません。採用競争は大企業も含めてますます激しくなります。

 厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果の概況」によると、社員が辞める理由は「職場の人間関係が好ましくなかった」が男性9.1%・女性13%、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が男性8.1%・女性11.1%、「給料等収入が少なかった」が男性8.2%・女性7.1%でした。

 会社と社員とのコミュニケーションが不足している場合や、インセンティブなどで評価をしない場合に、上記の不満が発生しやすくなります。すべてを解消することはできませんが、面談して話を聞くこと、会社の考えを伝えることで改善できる場合も多くあります。

 まずは、社長と社員の面談機会を増やし適切な評価を行った上で、辞められないように取り組んでいくことが、運営上でもコスト面でも有効な方法となります。

 利益を拡大するためには、利益率を高めていくことが一番有効です。利益率が1%違うだけで、結果が大きく変わることもあります。

 たとえば、原価100円の商品を(A)120円で販売する場合と(B)150円で販売する場合、500円の利益を得るにはどれだけ販売する必要があるかを比べると、(A)は(B)の2.5倍の販売数が必要となります。

(A)と(B)それぞれの500円の利益確保のために必要となる販売数の表
(A)と(B)それぞれの500円の利益確保のために必要となる販売数の表(筆者作成)

 取引先の担当者は安く買うことが仕事であるため、日頃から値下げを求めてきます。言われた通り値下げを続けた結果、利益率が悪化して赤字となった会社をたくさん見てきました。

 まずは商品価格・受注見積を見直し、適切な利益率へと高めていくことで、会社に利益が残るようにしていきましょう。

 事業計画を立案している会社は多くありませんが、数値計画、行動計画を作ることは利益を改善する第一歩となります。これは、筆者が多数の再生企業の事業計画を作成支援してきた経験上、収益を改善する上で非常に有効な方法だと考えます。

 数値計画を作成すると、どれぐらい利益が出るのか可視化できます。また行動計画を作れば、やるべきことがはっきりするので、社長も社員も行動できるようになります。事業計画を立案して未来を考えている会社は、倒産などの状況には陥りにくい傾向もあります。

 ただ、事業計画を自力で作成するのは難しいものです。その場合は、各都道府県に設置されている「よろず支援拠点」「商工会議所・商工会」などの利用や、中小企業診断士といったコンサルタントを活用しましょう。

 将来3カ月分の資金繰り表を作ることは、急な倒産を防ぐ上で重要なポイントです。ただし、手元資金が月商の2カ月分以上あれば、資金繰り表の作成は不要です。

 資金繰りが非常に厳しい会社を多数支援していると、資金繰り表の重要性を感じます。金融機関と話をする上でも、資金繰り表は有効です。

 資金と利益は異なります。また当たり前ですが、「試算表の現預金」と、お金がないときの「残高」は異なります。1カ月間のお金の動き、最低時の現預金残高の把握には手間がかかりますが、日繰り表を作ることで具体的な数値が見えてきます。

 資金繰り表の作成は手間がかかりますが、本人・他人も含めた状況把握に非常に役立つため、経営を安定させる上で有効な方法となります。

 会社運営は社長の仕事ですし、通常の会社は社長の器を上回る規模・状況にはなりません。学びを続けることは精神的にも大変なのですが、倒産を防ぎ、会社を継続していくためには、重要なポイントとなります。

 たとえばIT関連が代表的ですが、ライフスタイルや社会状況、競合、環境などが大きく変化していく中で、学び続けていかない社長・会社は、他者に後れを取ることとなります。

 実際に、筆者が関与してきた深刻な経営難である会社の中で、ITを活用している会社はほとんどありませんでした。

 売上・利益を拡大していくためには、新しいことにチャレンジするしか方法がありません。新事業など大きいことではなく、新しい営業活動やIT活用など、小さくてもよいので、今までと違うことをやる姿勢が必要です。

 現状維持はもっとも楽ですし、短期的にみるとリスクもなく、経営効率も良いと感じがちです。ただ、会社の体力は先細りしていきますし、競争力も相対的に低下していきます。実際に、やる気の低い後継者が継いでしまった結果、何も変えないまま運営を続けて競争力が落ち、売り上げが低下し続けて最終的に倒産した事例も見ています。

 新しいことにチャレンジすることで、会社の体制も強くなります。その結果、競争力をつけ将来的な倒産リスクを減らすことにつながります。

 ここでは筆者が関与した、2社の事例を簡単に紹介します。注目すべきは、両社とも経営者が非常に努力をされているものの、問題解決への行動を確実に行っただけで、特殊なことをしたわけではないという点です。

 A社は特定の会社への依存度が高い金属加工業で、社長の年齢も80歳と高齢だったこともあり、新しいことへの取り組みができず、業績が悪化した状態でした。

 営業していなかったため値上げ交渉もできておらず、利益率の低下が赤字の要因となっていました。また、大型設備投資を行ったものの、稼働が十分にできなかったことも資金繰り悪化の要因になっていました。

 A社が問題解決のためにとった行動は下記です。

・事業計画や資金繰り表の作成
・返済計画の見直し
・子息へ事業継承
・組織体制の再編
・値上げ交渉
・展示会への出展

 これらの行動により、金融機関からの支援や新規開拓、利益率の向上など、問題を一つずつクリアして資金を蓄え、危機状態から脱却できました。

 後継社長は現在も学び続けていますし、確保できた資金を従業員への還元を進めており、業績の改善は今でも続いています。

 B社はアパレル業界で非常に勢いのある会社でしたが、新型コロナの影響もあり、資金繰りが厳しい状況となっていました。

 社長と資金繰り状況を確認した結果、資金不足の原因は在庫過多にあることがわかりました。そのため、在庫管理や不採算部門の整理に取り組んだ上で、金融機関にも返済計画の見直し(リスケ)をお願いし、資金繰りの改善施策を行いました。

 元々は勢いのある会社で売り上げは確保できていたため、在庫処分は順調に進みました。加えて利益改善の効果もあり、現預金が月商の30%から400%まで回復して、通常の返済に戻すことができました。

 プロ野球の野村克也氏の名言「負けに不思議の負けなし」という言葉のとおり、企業経営が悪化する場合は当然の理由があります。

 いずれ潰れる会社の特徴で挙げた各項目について思い当たる部分があれば、ぜひ経営戦略の見直しを実施しましょう。対策にもさまざまな方法がありますが、社内人材だけでの改善が困難な場合は、中小企業診断士など外部の専門家への依頼も、ぜひ検討してください。