社員のAIトレーニングに「提案制度」いかが? 実現に向けた手順を紹介
従業員に生成AIを活用して業務を効率化してほしいが、なかなか普及しない、そもそも生成AIがどう活用できるのかイメージできないと悩んでいる経営者に向けて、提案制度をAIトレーニングに活用する方法を紹介します。自分の業務で課題に感じていることやどう改善すればよいかを言語化することにハードルを感じている社員の支援にもつながり、考える力や提案力の向上にも役立ちます。
従業員に生成AIを活用して業務を効率化してほしいが、なかなか普及しない、そもそも生成AIがどう活用できるのかイメージできないと悩んでいる経営者に向けて、提案制度をAIトレーニングに活用する方法を紹介します。自分の業務で課題に感じていることやどう改善すればよいかを言語化することにハードルを感じている社員の支援にもつながり、考える力や提案力の向上にも役立ちます。
提案制度と言っても、新規事業提案など様々ありますが、ここでは提案ハードルの低い、改善提案制度をオススメします。日頃の業務で課題に感じていることがわかるだけでなく、当たり前となっている業務を客観的に見て改善しようとする創意工夫のきっかけになるからです。
ほかにメリットとしては、従業員に次のようなことが期待できます。
導入する場合は、なぜ提案制度を始めるのか目的を明確にしたうえで、求めている提案内容・テーマ、提出方法・書式、評価への反映または報奨などを説明したうえで始めましょう。
ねじ製造業「金剛鋲螺(びょうら)」は、カイゼンにつながるちょっとした工夫やアイデアを、誰でも自由に会社(経営メンバー)へ提案できる「提案制度」を導入しています。
「日本でいちばん休みの多い会社」「ユニークなアイデアを生み出す提案制度」で有名な未来工業創業者・山田昭男氏による経営論をまとめた著書「稼ぎたければ、働くな。」を参考に、アイデア1件につき500円を支給するようにしたところ、大幅に提案数が増えたといいます。
たとえば、パレット転倒防止フックの作成です。新卒社員が無造作に立て掛けている木製パレットに転倒リスクを感じ、廃材でワイヤーフックを提案したといいます。そのほかにもスイッチ切り忘れ防止を目的としたLEDランプ付きへの交換なども実現しています。
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提案制度は、多くの企業ですでに導入されたことがあるのですが、提出される提案の数が少なかったり、質が期待に届かなかったりして長続きしないという悩みを耳にします。
理由を聞くと、普段の業務で忙しい従業員がなかなか考える余裕を持てなかったり、提案するまでのリサーチやアイデアを言語化するのに時間と労力がかかったりするようです。
そこで助けになるのが生成AIです。
生成AIは、アイデアの生成から実現可能性の分析、さらに具体的なプランニングまで、一連のプロセスを効率化できます。
無料で使える生成AIでも、従業員が抱える悩みを入力すれば、改善策を構築する手助けができます。きちんとデータと紐づければ、トレンドやパターンを見出すことができ、提案の裏付けとしても活用できます。
さらに、本気で提案を実行に移そうとするときも提案の計画づくり、リソース配分、進捗管理、成果測定など、提案実現に必要なあらゆるプロセスを支援します。
もし、たくさん提案が寄せられるようになったら、役職者が生成AIを使って経営戦略や社内目標との整合性、実現可能性などを総合的に評価し、優先順位付けをすることもできます。
試しに以下のプロンプトをClaude3.5に打ち込んでみました。
あなたは会社事務所のプロの業務改善アドバイザーです。
事務所の棚が顧客管理リストが5000冊を超えて入りきらなくなってきました。
また、ファイルを取り出す作業や、情報更新にも手間がかかります。
スタッフは女性が多いので重いファイルも体に負担がかかります。
こうした課題を解決するための改善提案書を作成します。
いまの3つのポイントを整理して、アイデアを2つ提案してください。
①いま困っていること・解決したいこと
②改善したい具体的な提案
③期待できる改善効果(なるべく定量的に記載する)
すると次のような出力がありました。入力していないデータも勝手に加えられているため、実情に合わせてきちんと書き直す必要があることがわかります。
現状の課題整理
①保管スペースの限界
顧客管理リスト5000冊が既存の棚に収まりきらない
今後も増加が予想される
②業務効率の低下
ファイル検索に1件あたり平均5分程度要している
情報更新作業に1ファイルあたり約10分必要
③スタッフの身体的負担
1冊あたり約2kgのファイルの持ち運びによる腰痛リスク
高所からのファイル出し入れによる事故リスク
【改善提案1:クラウド型顧客管理システムの導入】
具体的な提案内容
・システム導入(3ヵ月)
クラウド型CRMシステムの選定と契約
既存データの段階的なデジタル化
スタッフへの研修実施(2日間)
期待される改善効果
・保管スペース削減:約30㎡の空きスペース創出
・業務時間短縮:検索時間:5分→10秒(98%削減)
更新作業:10分→2分(80%削減)
・年間の工数削減:約800時間
・スタッフの身体的負担:ほぼゼロに
【提案2:電動式回転書庫+ハイブリッド管理の導入】
具体的な提案内容
・設備導入(1ヵ月)
電動式回転書庫の設置
バーコード管理システムの導入
重要度別の保管方法の確立
期待される改善効果
・保管スペース効率:従来比200%向上
・作業効率:検索時間:5分→1分(80%削減)
ファイル取り出し時間:2分→30秒(75%削減)
・身体的負担: 持ち上げ動作:70%削減 腰への負担:約60%軽減
※両提案とも、3ヵ月程度の試験運用期間を設けることを推奨します。費用対効果や導入のしやすさを考慮し、段階的な導入も検討可能です。
AIは、万能ではありません。以下の点に気を付けることも含めて社員のAIリテラシーを高めるのに役立ててください。
まず、社員のアイデアや会社の機微情報を含むデータはAIの学習に使われないよう適切な設定をしてください。
つぎに、提案するのはAIではなく、あくまで社員であることを強調してください。上記の出力結果を見ても、入力内容が少ないにも関わらず、具体的なデータを求めたため、勝手に数字が入っていたり、具体的なクラウド型CRMシステムのサービス内容がない出力結果となりました。このままでは、実際に役立つ提案にはならないでしょう。
AIを相当学習させない限り、提案内容は一般的な話になりがちです。自社の改善にそのまま生かせる提案にするためには、指示の文章を精査するよりも、最後は従業員の視点と言葉で提案書を完成させる方が実情に沿った内容になります。
また、役職者は提案する行動自体を推奨しつつ、中身については現場ですぐ生かせるような具体的かつ有用なアイデアが出るように、どんな提案をしてほしいのかフィードバックすることも大切です。
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