目次

  1. 婦人帽子を作り続け100年
  2. 入社3年目で次期社長を打診される
  3. 古参従業員との言い合いや喧嘩は日常茶飯事
  4. 36歳で社長へ 本社従業員の4分の1が退職
  5. 「従業員と経営者は対等な関係である」という意識へ
  6. 世の中にない新しい帽子を作りたい
  7. この社員に働き続けてほしいから制度を変える
  8. 気づけば従業員の7割が女性
  9. 会社時間を楽しんでもらいたい
1935年当時のアトリエの様子(水野ミリナー提供)
1935年当時のアトリエの様子(水野ミリナー提供)

 水野ミリナーは水野匡平さんが、1924年に創業しました。ミリナーとはイタリアの都市ミラノを語源とし、特に女性用の帽子を製作・販売する職人やメーカーを指す言葉です。まさに社名どおり、帽子専業メーカーとして素材開発なども含め、全国各地の百貨店で取り扱う婦人用帽子を100年以上にわたり作り続けています。

現在のアトリエ。価格は平均で1万数千円。セミオーダーで数万円する商品も
現在のアトリエ。価格は平均で1万数千円。セミオーダーで数万円する商品も

 五十嵐さんは創業家一族ではありません。入社したのは1998年。当時、飲食店で働いており、客であった札幌事業所の所長が五十嵐さんの働きぶりを見て、水野ミリナーにスカウトしたのがきっかけでした。

 そして、札幌事業所の売上を3倍に伸ばすなど期待に応えます。すると先代(3代目)は独身で子どもがいなかったこともあり、次期社長候補として五十嵐さんを東京本社に呼び寄せます。

 「帽子メーカーは老舗が多いこともあり、売上をさらに高めようというよりも、現状維持で満足している会社が、当社も含めて多いように感じました。だから積極的に営業をかければ、成果が出ると思いました」と五十嵐さんは振り返ります。

 実際、水野ミリナーも毎年売れる定番商品を淡々と、五十嵐さんの言葉を借りれば無理せずのんびりと、作り続けていました。

 一方で、五十嵐さんは東京本社に移ってからも積極的に新規販路の開拓や、新たな売れ筋商品の開発などに躍起になっていました。当然、従来のやり方の古参従業員とは衝突します。

(続きは会員登録で読めます)

ツギノジダイに会員登録をすると、記事全文をお読みいただけます。
おすすめ記事をまとめたメールマガジンも受信できます。