目次

  1. 見積依頼への返信は早急に
  2. 見積回答メールの文例
    1. 見積書を添付するとき
    2. 見積書を添付しないとき
    3. 見積書を後日送付するとき
    4. 見積依頼を断るとき
  3. 見積回答メールを送るときの注意点
    1. 見積書の添付を明記しPDFで送付する
    2. パス付のZIPファイルでは送らない
    3. 返信がない場合は確認する
  4. 見積回答メールから成約率を上げるコツ
    1. 件名を工夫する
    2. 隠れたニーズを掴む見積もりも提示する
  5. 見積回答メールを工夫して業績向上につなげよう

 筆者は会社員時代に、地方銀行の総務部門で災害用備蓄物資の整備業務を担当していたことがあります。また、公的支援機関に勤務していた際には、業者選定のための入札業務も行っていました。さまざまな事業者へ見積もりを依頼した経験から感じたのは、見積回答のスピードやメールの文面から、その会社の信頼性や対応力が垣間見えるということです。

 見積依頼に対する返信はスピードが命です。迅速な対応は信頼構築の第一歩であり、他社との差別化にもつながります。そのため、回答は可能な限り当日中、遅くとも翌営業日までに返信しましょう。また、すぐに返答できない場合でも、「いつまでに回答できるか」を事前に伝えることが大切です。

 依頼した見積もりがなかなか届かないと、発注側の担当者は不安になってしまいますし、「いつ頃までにいただけますか」と確認する、無駄なステップを発生させてしまいます。

 見積回答メールを迅速に送るためには、状況に応じたテンプレートを準備しておくことをおすすめします。

 見積書を添付する際は、メール本文に「見積書を添付した旨」を明記し、見積もりの有効期限も忘れずに記載しましょう。

 以下のように、メールの書き方を工夫して有効期限を強調することで、相手側も意識して発注を進めてくれます。特に価格変動がある商材は、変動リスクや在庫確保の面からも、有効期限を設けることが必須です。

見積書を添付するときのメール文例

〇〇〇株式会社
△△△様

お世話になっております。
株式会社□□の●●です。

この度はお見積依頼をいただき、誠にありがとうございます。

早速ですが、見積書をPDFで添付いたしますのでご確認ください。

ーーーーーーーーーーーーーー
【見積有効期限】:〇月〇日
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ご不明な点やご質問がございましたら、どうぞお気軽にお知らせください。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

 見積書を添付しない場合は、メール本文に数量や単価などの詳細情報を明記しましょう。

 発注側では、見積段階で正確な数量が決まっていないことも多くあります。単価を記載すると、相手が全体にかかる費用感を掴みやすくなり親切です。

見積書を添付しないときのメール文例

〇〇〇株式会社
△△△様

お世話になっております。
株式会社□□の●●です。

この度はお見積依頼をいただき、誠にありがとうございます。

以下にお見積内容をご案内いたします。

ーーーーーーーーーーーーーーーー
【商品・サービス名】:〇〇〇
【数量】:XX
【単価】:¥XX,XXX
【合計金額】:¥XXX,XXX
【見積有効期限】:〇月〇日
ーーーーーーーーーーーーーーーー

ご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

引き続き、よろしくお願い申し上げます。

 見積書の作成に時間がかかる場合は、すぐ受領の確認と見積書送付の予定を伝えましょう。いつまでに見積もりが来ることがわかれば、相手側も安心して社内決裁の準備を進めることができます。

見積書を後日送付するときのメール文例

〇〇〇株式会社
△△△様

お世話になっております。
株式会社□□の●●です。

この度はお見積依頼をいただき、誠にありがとうございます。

詳細な内容を確認した上で、〇月〇日までにお送りする予定です。

お待たせしてしまい申し訳ございませんが、今しばらくお待ちいただけますと幸いです。

何かご不明な点がございましたら、お気軽にご連絡ください。

引き続き、よろしくお願い申し上げます。

 見積依頼を断る場合は、単に「対応できません」と伝えるだけではなく、なぜ対応が難しいのか、その理由を明確に記載することが大切です。

 また、代替案(納期調整や特急料金など)を提示することで、交渉の余地を残すのも良いでしょう。相手の状況によっては、調整可能な条件を提示することで成約につながる場合もあります。

 例えば、以下のような点を意識すると丁寧な対応になります。

  • 難しいと判断した理由を明確にする
  • 代替案や解決策を示す
  • 相手の負担を考慮した表現を使う
  • 次回の取引につなげる言葉を加える

 こうした配慮を行うことで、単なる「お断り」ではなく、相手先との関係性を維持しながら丁寧な対応が可能になります。場合によっては、メールだけでなく電話でも補足すると、相手の理解を得やすくなります。

見積依頼を断るときのメール文例

〇〇〇株式会社
△△△様

いつもお世話になっております。
株式会社△△の▲▲です。

この度は「■■」の見積もりをご依頼いただき、誠にありがとうございます。

社内で慎重に検討を重ね、ご希望に沿える方法を模索いたしましたが、誠に残念ながら、貴社のご提示いただいたご予算や納期に合わせることが難しい状況です。

特に納期については、通常より大幅な短縮が必要となるため、特急対応料金が発生する見込みです。もし特急料金をご承諾いただける場合、または納期を通常の〇日間にご調整いただければ、対応が可能です。

ご希望に沿えず心苦しい限りですが、上記いずれかの条件でご検討いただける場合には、改めてお見積書を作成し、お送りいたします。

ご多忙の折恐縮ですが、ご検討のほどよろしくお願いいたします。

 発注担当者は多忙な業務の合間に見積依頼を行っています。発注側がスムーズに社内決裁を進められるよう、以下の点に注意しましょう。

 メール本文には「見積書を添付いたしました」と明記し、相手が添付ファイルを見落とさないように配慮しましょう。また、見積書はPDF形式で送付します。PDFはビジネス現場で広く使用されており、パソコンのOSにかかわらず、相手も閲覧しやすい形式であるほか、データの改ざん防止にも効果的です。

 パスワード付きZIPファイルの使用は情報漏洩のリスクがあり、相手(受信者側)もウイルスチェックできないことから廃止が進んでいます。実際に内閣府では、メールでパスワード付きZIPファイルを送り、パスワードを別のメールで送付する方法を2020年11月に廃止しています。

 セキュリティ上のリスクや受信側の手間を避けるため、PDFファイルを直接添付するか、安全なクラウドストレージを利用して共有しましょう。

 見積回答メールに返信がない場合は、相手先の迷惑メールフォルダに仕分けされてしまっている可能性があります。数日経っても返信がない場合は確認メールを送りましょう。

 その際は、「お見積もりの件、ご確認いただけましたでしょうか?」といったフォローが効果的です。ただし、確認メールを送る前には「見積書の送付先を間違えていなかったか」「システムエラーで未送信のままになっていないか」など、いま一度確認しましょう。なお、重要な見積書が誤って他社に送信されることがないよう、送付する際は複数人でのダブルチェックを推奨します。

 見積回答メールから、発注先に「信頼できるパートナー」として認識してもらうためのコツを説明します。

 発注担当者は毎日数多くのメールを受信しています。そのため、他社からもメールに埋もれて気づかれないトラブルを防ぐ工夫が大切です。

 なかでも、件名はメールを開封してもらうための重要な要素です。「【見積書添付】○○○のご案内」など、内容が明確にわかる件名をつけましょう。見積依頼のメールへの返信として、関連づけると発注担当者も「この見積依頼への回答なんだな」と一目でわかるようになります。

 筆者が会社員として勤務していたとき、大変優秀な営業担当者がいました。この人は、発注側の企業が「なぜこの発注を出すのか」という背景を素早く理解し、依頼時の条件だけでなく、「このようなご提案も可能です」など、発注側の隠れたニーズを掴む見積もりを提案していました。

 結果、見積もりを依頼された発注内容ではなく、この営業担当者からの提案が通ったこともあります。さらに、別件で相談したいことが発生したら、この営業担当者にまず相談するようにもなりました。

 このような対応は発注側にとって非常に心強く、「この会社なら安心して任せられる」と信頼関係の構築につながります。

 見積回答メールは、単なる書類送付の手段ではなく、信頼構築やビジネスチャンス拡大のきっかけとなる重要なツールです。この記事で紹介したポイントを意識して、相手に寄り添った対応を心掛けることで、見積もりからの発注決定につなげましょう。