目次

  1. 有機JAS認証とは
  2. 従来の日本とEU間の有機食品貿易
  3. 「有機」認証制度拡大とEUとの協議成果
  4. 相互承認が拡大された品目と発効日
  5. 有機同等性のメリットと今回の合意の意義

 農水省の公式サイトによると、有機JAS制度とは、JAS法に基づき、「有機JAS」に適合した生産が行われていることを第三者機関が検査し、認証された事業者に「有機JASマーク」の使用を認める制度です。

 認証された事業者のみが有機JASマークを貼ることができます。この「有機JASマーク」がない農産物、畜産物及び加工食品に、「有機」、「オーガニック」などの名称の表示や、これと紛らわしい表示を付すことは法律で禁止されています。

 有機JASの基準は、持続可能な農業生産を目指しており、環境への負荷をできる限り低減する方法が規定されています。

  • 有機農産物では、化学合成肥料や農薬の使用を基本的に行わず、堆肥などによって地力を高める土作りを行うことが中心です
  • 有機畜産物では、有機的に生産された飼料を与え、動物医薬品の不必要な使用を制限し、家畜が健康的に過ごせるような動物福祉に配慮した飼養管理を行うことが求められます
  • 遺伝子組み換え技術の使用は禁止されています

 有機認証について他国の制度を自国の制度と同等と認め、相手国の有機認証品を自国の有機認証品として取り扱う国家間の取り決めがあります。

 日本とEU加盟国はこれまで、有機JAS制度に基づき、有機農産物および有機農産物から作られた有機加工食品(ただし、酒類を除く)についてのみ、お互いの有機認証を同等と認め、有機食品として輸出入が行われてきました。

 これを、両者が互いの有機認証制度の基準や運用が同等であると認める「有機同等性」と言います。

 日本について有機同等性を承認した国・地域は2025年5月時点で以下の通りです。このほか、オーストラリアやニュージーランドなど、日本の有機制度に基づく有機食品であれば輸出可能な国もあります。

農産物 農産物加工食品 酒類 畜産物・加工品
アメリカ
EU
カナダ
台湾
イギリス
スイス

 日本国内では、有機食品に関する制度が拡充されてきました。2020年7月からは、有機畜産物に対する表示規制が始まり、適切な基準を満たした畜産物のみが有機と表示できるようになりました。

 さらに、2022年10月には、有機酒類が新たに有機JAS制度の対象品目として追加され、酒類についても有機認証の枠組みが整いました。

 農林水産省と国税庁が EUと協議を行ってきた結果、有機酒類、有機畜産物及び有機畜産物を原料とした有機加工食品についても、有機JAS制度に基づき輸出入できるようになりました。

 今回の合意により、新たに有機同等性が認められた品目は以下の通りです。

  • 有機酒類
  • 有機畜産物
  • 有機畜産物を原料とした有機加工食品

 これらの品目について、以下の日程で相互承認が発効し、それぞれの有機認証に基づいて輸出入が可能になります。

 日本の有機JAS認証を受けた有機酒類、有機畜産物、有機畜産物加工食品は、2025年5月18日(日曜日)から「有機(organic)」と表示してEUへ輸出できるようになります。

 EUの有機基準に基づき認証を受けた有機酒類、有機畜産物、有機畜産物加工食品(有機JASの適用範囲に限る)は、2025年5月16日(金曜日)から、JAS制度に基づき「有機」等と表示して日本へ輸入できるようになります。

 有機同等性が認められることの最大のメリットは、輸出入手続きの簡素化とコスト削減です。相互承認がされていない場合、輸出国と輸入国の両方で有機認証を取得する必要があり、これには時間も費用もかかります。

 今回の「有機」表示の拡大は、日本の有機食品の価格競争力を高め、EU市場での販路開拓につながる可能性があります。