不適切なM&A支援を実演 事業承継・引継ぎ支援センターが解説動画

北海道事業承継・引継ぎ支援センターなどが蓄積してきた中小企業・小規模事業者のM&A支援ノウハウを対話形式にまとめた動画をYouTubeに上がっています。経営者の支援者向けですが、「不適切な支援者」と「適切な支援者」を対比しており、最近トラブルが増加しているM&A分野で、M&Aの譲渡側の経営者が不適切な支援者を見極める参考にもなります。
北海道事業承継・引継ぎ支援センターなどが蓄積してきた中小企業・小規模事業者のM&A支援ノウハウを対話形式にまとめた動画をYouTubeに上がっています。経営者の支援者向けですが、「不適切な支援者」と「適切な支援者」を対比しており、最近トラブルが増加しているM&A分野で、M&Aの譲渡側の経営者が不適切な支援者を見極める参考にもなります。
中小機構のプレスリリースによると、事業承継M&A支援教材は、北海道事業承継・引継ぎ支援センターのアドバイザーがM&A支援をするときに、円滑に支援や交渉を進めるために気を付けていることを具体的な面談シーンをもとに解説しています。2025年5月25日時点で初級編の前後編と中級編の合計3本が公開されています。
それぞれのポイントを紹介します。
事業承継『M&A』支援教材(初級編)前半は、たとえば、M&Aを話題にするとき、経営者が懸念点や考えを自由に表現できるような信頼関係を築くことや、利点だけでなくリスクや課題についても情報提供することなどを求めています。
不適切な対話例は、経営者の懸念やビジョンを無視し一方的にM&Aを押し付けたり、債務超過などの状況で早急に会社をたたむことを勧めたり、経営者の希望を奪ったりする問題点を示しました。
一方、効果的な対話例は、経営者の悩みや不安を受け止め共感を示すことから始まります。困難な状況でもM&Aを多様な選択肢の一つとして提示し、企業の強みや潜在的な価値を共に探り出しアピールすることの重要性を示しています。また、親族内承継への否定的な発言の裏にある本音を探るために、傾聴と適切な質問を行うことも大切です。
M&Aは万能ではなく他の可能性も検討する余地を与え、経営者の事業への感情的な結びつきを尊重する姿勢が、経営者が最良の決定を下す助けとなります。効果的な支援には、共感と傾聴、そして多角的な視点で経営者に寄り添うことが不可欠です。
事業承継『M&A』支援教材(初級編)後半は、マッチングから買い手・売り手のトップ面談のリスクについて紹介しています。
まず、地域内のM&Aには、事業拡大等のメリットとともに、詳細な経営情報の漏洩や破談時の悪影響といった固有のリスクがあります。支援者はこれらのリスクを経営者に正確に伝え、秘密保持契約や段階的情報開示といった適切なリスク管理の重要性を説明し、慎重な進行を促す必要があります。M&A交渉の多くは破談に至るため、その影響への配慮が不可欠です。
M&Aの成功には、財務だけでなく関係者の感情や心理的満足度も重要です。特に譲渡側経営者は、事業や地域社会への深い思いがあるため、そのビジョンや懸念を尊重することが不可欠です。
譲渡側と買手側との面談では、支援者は双方の立場を公平に扱い、両者の意見に平等に耳を傾け、お互いのビジョンや期待を共有する機会を設けることで、共通理解を深めることが円滑な交渉への第一歩となります。
M&Aの最重要局面である譲渡金額の交渉は、支援者の公平中立な立場が求められます。単に金額を仲介するのではなく、双方の評価根拠を理解し、金額だけでなく従業員の雇用継続や企業文化といった非金銭的な要素も考慮に入れ、多角的な視点から妥協点を探る支援が必要です。
透明性を確保しつつ、追加情報収集や評価の見直しも提案するなど、合意形成に向けた建設的な対話をファシリテートする能力が成功に不可欠です。
「事業承継『M&A』支援教材(中級編)」は、M&Aを望む経営者に対して、支援者が具体的なプロセスでどのように適切にコミュニケーションを取るかを学ぶためのものです。
M&Aは、譲渡側・譲り受け側双方の経営者の人生、従業員や顧客の未来、そして地域全体につながる非常に重要な局面であり、支援者には経営者の心情に寄り添い、事業の本質を見抜く多様な視点が必要です。
この中級編では、主に以下の3つのポイントを掘り下げています。
これらの内容について、動画では不適切な例と適切な例のロールプレイング形式で解説しており、現場での応用力を高めるための具体的なヒントを提供しています。
たとえば、決算書の深掘りによる隠れたリスクや価値の見極め方、譲り受け企業の具体的なビジョンや意向の確認方法、M&Aに対する経営者の複雑な心情への寄り添い方、同業種に限定せず異業種も含めたマッチング可能性の探し方、債務超過や赤字企業でも強みを生かせるマッチングの視点、そして簿外債務などのリスク確認と発覚時の冷静な対処法などが示されています。
中小企業のM&Aについてのトラブルが増えるなか、中小企業庁は2024年8月末「中小M&Aガイドライン」を改訂しました。
改訂理由について「不適切な譲り受け側の存在や経営者保証に関するトラブル、M&A専門業者が実施する過剰な営業・広告等の課題に対応し、中小M&A市場における健全な環境整備と支援機関における支援の質の向上を図る観点から、中小企業向けのガイダンス及び仲介者・FA向けの留意事項等を拡充しました」と説明しています。
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