日産自動車の追浜工場、2027年度末に車両生産終了へ 60年超の歴史

日産自動車は2025年7月15日、中長期的な持続的成長を目指す経営再建計画「Re:Nissan」に基づき、神奈川県横須賀市に位置する追浜工場における車両生産を2027年度末に終了することを発表しました。追浜工場での車両生産は、日産自動車九州(福岡県苅田町)へ移管、統合する予定です。EV開発でも最前線を走ってきた主力工場の追浜の歴史を振り返ります。
日産自動車は2025年7月15日、中長期的な持続的成長を目指す経営再建計画「Re:Nissan」に基づき、神奈川県横須賀市に位置する追浜工場における車両生産を2027年度末に終了することを発表しました。追浜工場での車両生産は、日産自動車九州(福岡県苅田町)へ移管、統合する予定です。EV開発でも最前線を走ってきた主力工場の追浜の歴史を振り返ります。
日産自動車の公式サイトによると、追浜工場は、1961年10月に操業開始。
1970年には業界初の溶接ロボットを導入したほか、多車種同時生産が可能な混流ラインをいち早く採用し、世界でも屈指の自動化の進んだ乗用車工場として発展してきました。
神奈川県横須賀市夏に広がるその敷地面積は、工場敷地のみで54万7606㎡に及び、約2400人が働いています。60年以上にわたるその歴史の中で、累計で1780万台以上もの車両を生産してきました。
日産によると追浜工場のおもな歴史は以下の通りです。
1961年: 操業開始(ダットサンブルーバード生産開始)
1978年: 生産累計500万台達成
1984年: 追浜専用埠頭完成
1992年: 生産累計1000万台達成
2001年: マーチ生産開始
2003年: キューブ生産開始
2007年: 「GRANDRIVE」を竣工、生産累計1500万台達成
2010年: 日産リーフ生産開始
2012年: 2ライン生産終了
2016年: 初代ノートe-POWER生産開始
2021年: 現行ノートオーラ生産開始
特にEV生産では、2010年に世界初の量産型EV「日産リーフ」の生産を開始した、日産の電動車生産のパイオニアとも言える拠点です。
追浜工場は、EV生産においてもガソリン車とe-POWER(ハイブリッド)車、そして電気自動車(EV)といった異なる種類の車種を1本のラインで混流生産できる特徴を持っていました。
2010年の日産のニュースリリースによると、ガソリン車の燃料タンク装着工程でバッテリーパックを、エンジン装着工程でモーターやインバーターを組み付けるといった、効率的な生産方式が採用されているといいます。
追浜工場はクルマの生産だけでなく、先端技術研究を行う総合研究所やクルマの安全性や性能を確認する追浜試験場(テストコース)、約2万台の自動車が保管でき、三隻の自動車専用船が停泊できるバースを持つ専用埠頭があることも特徴です。
追浜工場の車両生産終了は、日産の経営再建計画「Re:Nissan」のグローバルな生産拠点の見直しの一環です。「Re:Nissan」計画は、中国を除く生産能力をこれまでの350万台から250万台へと削減し、それによって工場稼働率を100%レベルに維持することを目指しています。
日産は全世界にある17の生産拠点を10へと集約するための検討を進めています。
車両生産は終了しますが、日産は、総合研究所(R&Dセンター)や、先進技術のテストコースであるGRANDRIVE、衝突試験場、そして車両の輸出入に不可欠な追浜専用ふ頭など、車両生産以外は今後も事業を継続すると発表しました。
追浜工場に勤務する約2400人の従業員は、車両生産が終了する2027年度末まで勤務を継続しつつ、その後については方針を決定し次第、従業員に通知し、労働組合との協議を開始する予定だといいます。
日産はさらに子会社の日産車体湘南工場(神奈川県平塚市)も2026年度までに車両の生産を終えることを明らかにしました。
具体的には、日産車体湘南工場に生産委託しているNV200の生産を2026年度に終了します。NV200の後継モデルは2027年度に導入する予定ですが、詳細は未定です。これまでにADの委託生産の終了も公表しています。
日産車体は「湘南工場は、車両生産委託の可能性を模索しつつ、特装車・サービス部品生産をはじめとするサポート事業を担うことも視野に入れ、従業員の雇用を最優先に、あらゆる可能性を検討してまいります」とコメントしています。
日産の神奈川県内での生産終了は多くの取引先に影響が出るおそれがあります。東京商工リサーチによると、都道府県別の日産の取引先で神奈川県は東京都に次いで2番目に多い1757社(2024年時点)。日産の経営合理化とともに取引先は減少傾向にあるものの、地元経済への影響は避けられない見通しです。
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