事業承継は継がせる側が覚悟を

――星野さんは著書の中で「親子の対立を経て社長に就任した」と振り返るほどハードランディング型の事業承継でした。今の時代の変化に対応するには、どのような形でファミリービジネスを承継するが望ましいのでしょうか。

 ファミリービジネスマネジメントという分野は、学問になりつつあります。世界のビジネススクールでファミリービジネスを研究するコースを持つところも増えています。私が家業を継いだ1991年当時は、研究対象ではありませんでしたが、今は劇的に変わりつつあります。

 海外の論文で一番大きなテーマは、親の代から次世代にどう継承するかです。模範となるストラクチャー(体系)があり、親から子に事業を継承するため、両方が持つべき責任、覚悟、ステップが書かれています。

 私はファミリービジネスの研究をしていますが、うまくいっていないケースの大半で、継ぐ側よりも、継がせる側、つまり親世代の課題の方が大きいと感じました。継ぐ側は若いし、まだまだ力不足だと分かっています。謙虚かつ勉強熱心で、「俺は全部できるから親なんていらない」という人はあまりいません。

 親の方が、次世代に過度な要求をして、責任を移す時期なのに、過度に関わり続けています。また、仕事はやらせているけど、会社の株式を含めた所有権、最終的な権限を含めて渡さずに手綱を握ろうとするケースもあります。譲る側の覚悟ができていないのです。そうなると、最終的には破綻したり、ハードランディング型の承継になったりします。たすきを渡す側が、ノウハウを把握することが大事なのではと感じています。

初代経営者の星野国次が星野温泉旅館として1914年に開業。106年の歴史を誇ります。

――時間をかけて事業承継していくのがいいのでしょうか。それとも、星野さんみたいに一気に交代するべきでしょうか。

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