乳業会社で学んだ仕事への姿勢

――子供のころは家業や後継ぎという立場に、どんな思いを抱いていましたか。

 物心ついたときから、酒蔵の息子ということに誇りをもっていました。小学校でも「酒屋の息子」みたいな呼ばれ方もしましたし、選択肢の一つとして心の中にはありました。

――大学卒業後、実家には戻らず、乳業会社に就職しました。

 大学生のときに「酒造り」が天職とは、なかなか決められませんよね。学生時代は日本酒にこだわりもなく、ビールばかり飲んでいましたし、家業の状況も知りませんでした。 家業を継ぐか別の道を歩むか、気持ちは半々でしたが、家業につながるアルコールや発酵に関わる仕事に就いて勉強したいと思いました。

 乳業会社には4年間勤めました。仕事内容も乳製品の殺菌、瓶詰め、機械の扱いや掃除など酒造りに共通する部分が多かったです。生産管理のノウハウ、衛生管理、品質向上への意識も、大手ならではの厳しい基準がありました。ここで学んだ仕事への姿勢は、今に生きています。

木屋正酒造の母屋は登録有形文化財にも指定されています

造りの課題は山積みだった

――家業を継ぐと決めたきっかけは何だったのでしょうか。

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