中小企業の自然災害の被害額

 2018年は大規模な自然災害が立て続けに起こりました。2019年版中小企業白書によれば、中小企業の主な被害額は次の通りです。

  • 西日本豪雨……4738億円
  • 台風19~21号……99億円
  • 北海道胆振東部地震……42億円

 ただし、1995年の阪神・淡路大震災や2011年の東日本大震災といった大規模な災害など数字に変動はあるものの、自然災害は2018年に限らず増える傾向にあります。

日本の自然災害の発生件数と被害額の推移(2019年の中小企業白書から引用)

自然災害が中小企業に与える損害とは

 中小企業白書によると、ここ30年ほどの自然災害の被害をみていくと、被害額では地震が8割を占めました。一方、被害の件数では、台風が6割を占めます。具体的な被害が多かったものから並べると次の通りになります。

  • 役員・従業員の出勤不可
  • 販売先・顧客の被災による売り上げの減少
  • 上下水道、電気、ガス、通信機能途絶による損害
  • 事務所や店舗の破損や浸水
  • 設備や店舗の備品の破損や浸水
  • 仕入れ先の被災による原材料の供給停止

 これをみると、自社だけでなく、仕入れ先や顧客の被災でも損害が発生していることがわかります。被災により営業停止期間が長くなると、取引先は減る可能性が高くなり、取引先が減った企業は売上高が元の水準に戻るまで時間がかかります。そのために、政府はBCPと事業継続力強化計画という2つの制度で、中小企業に自然災害への事前の備えを呼びかけています。

BCPとは

 BCPとは、自然災害、新型コロナウイルスなど感染症のまん延、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶といった不測の事態が起きても、重要な事業を止めない、または中断してもできるだけ早く復旧させるための方針、体制、手順などを示した計画のことです。

BCPを作るときの参考になる「運用指針」

 優先して再開すべき事業を絞り込み、対応策を盛り込んだBCPを作っておけば緊急時でも復旧スピードが加速します。

BCPの課題は普及率

 しかし、全国の中小企業のうち、BCPを作っているところは2割もありません。その理由として「人手不足」「複雑で、取り組むハードルが高い」「策定の重要性や効果が不明」といったものが中小企業白書に挙げられています。こうした声をうけて、政府が新たに作ったのが「事業継続力強化計画」という制度です。

事業継続力強化計画とは

 事業継続力強化計画とは、中小企業が行う防災・減災の事前対策に関する計画を経済産業大臣が認定するものになります。認定されると、税制優遇や補助金の審査で加点されるといった支援策があるのが特徴です。

 中小企業庁の経営安定対策室の担当者は「BCPは災害時でも事業を継続するために大切な計画ですが、ハードルが高く、なかなか普及しませんでした。事業継続力強化計画は、BCPの簡易版という位置づけで2019年に新設された制度です」と説明します。あらゆるトラブルに対応できる綿密さよりも、リスクの確認や手順づくりなどが求められます。

 事業継続力強化計画の申請までの流れについては、こちらを参考にしてください。