目次

  1. リスケとは
  2. 金融機関が相談に応じやすい状況に
  3. リスケをする前に把握しておきたい注意点
  4. リスケで求められる経営改善計画とは
  5. 経営改善計画づくりに必要なこと

 リスケとは、融資を受けている銀行など金融機関に対し、返済額の減額など返済計画を見直してもらうことを指します。具体的には次のような対応が考えられます。

  • 月額返済額を当面の間減額する
  • 返済期限を延長する

 リーマン・ショック後の資金繰りを支援しようと、2009年12月に施行された中小企業金融円滑化法は、返済の猶予などの相談を受けた金融機関に対し、返済期間の延長や金利の減額など条件見直しに応じる努力義務を課しました。

 法律は2013年3月末で終了しましたが、金融庁は「金融機関が引き続き円滑な資金供給や貸付条件の変更等に努めるべきということは、今後も何ら変わりません」と説明しています。そのため、金融機関からリスケを認めてもらいやすい状況は続いています。

金融機関1326社の中小企業向け貸付条件の変更等の状況(金融庁の公式サイトから引用)

 ただし、認められるためには準備が必要です。リスケを申し入れる前に念頭に入れておきたいポイントを小林所長に聞きました。

1.既存の事業形態の見直しが急務になる

 リスケとは、現実には倒産前の最後の手段ともいえるため、リスケされる期間に、リストラを含めた見直しが必要です。1年後はもちろん、3年後、5年後に事業をどのように立て直しするか、また、それを実行させるという強い意志を持つ必要があります。

2.あくまで返済計画の変更である

 リスケは債務免除ではありません。元金の返済を猶予してもらっても、金利の支払いは必要です。

3.新規融資など銀行からの資金調達が難しくなる

 これまで少なくともリスケをした返済が残っている期間は新規の融資などはできないとされていました。ただし、それぞれの金融機関の基準にはなりますが、リスケした返済が完済されていなくても、月々の返済を再開するところにまで事業を改善させれば新規融資を受けてもらえる場合も出ています。

4.過去の問題を処理することで金融機関との信頼につなげる

 リスケをする前後の決算においては、大きく赤字になることが多く、その決算での処理がその後の金融機関との関係に大きく差を生じさせる場合があります。

 実例として、過去からの問題で資産や負債に計上されたままになっており、その実態が問題になるようなものは、その期において特別損益勘定などを用いて処理してしまいましょう。もちろん税務上のズレとの処理は必要になりますが、リスケをし、金融機関からの支援を受けていく過程では、健全な決算を組むことができ、金融機関との信頼をつなげることになります。

 銀行にリスケを申し入れる際に、経営改善計画書を求められることがあります。中小企業庁が公開しているサンプル(PDF形式:166KB)によると、経営改善計画書には、債務者概況表や財務状況、事業が窮地に陥った原因、経営改善計画の基本方針、計画期間、改善目標などの項目が必要とされています。

経営改善計画をつくることには次のようなメリットがあります。

  • 売上増加、コスト削減など業況の改善
  • 返済条件の緩和など金融支援の更改
  • 金融機関、取引先からの信頼性の確保
  • 従業員のモチベーションや生産性の向上

 小林所長は経営改善計画について「実現可能なものでなければなりません。よく過去売り上げの何パーセント増し、あるは何パーセント減という計画を作りがちですが、これでは金融機関や投資家は納得しません。金融機関は、貸したお金を回収する事を前提に融資しています。過去の数値の延長線上で話をしても、説得力は弱いです」と話します。

 続けて、小林所長は「今後の事業計画を書面に落とし込み、確固たる利益計画と資金計画を読み切り、同時に最大限のリスクもシミュレーションすることで、社長の意思決定が可能となります」と話します。そのために経営者が押さえておきたいポイントとして下記の4つを挙げています。

  1. 自社の固定費をつかむこと
  2. 社内に商品別限界利益率をつかむシステムを構築すること
  3. 標利益と借入返済額を含めた必要売上高を社内で実行できようにすること
  4. 常収支比率105%以上になるように社内構築をすること

 「実現可能な計画だけではなく、会社の5年先、10年先の将来の夢を描いてみる事も大切です。現実を見据えた『今、すべきこと』の先に5年後、10年後があります」

小林清さん

税理士法人小林会計事務所長

横浜の中小企業を中心に、事業計画から資金計画、合理的な会計の仕組みを作り、人事の問題等のノウハウをこれから展開するステージに応じて経営のパートナーとしてサポートしてきた。事務所は、2019(令和元)年に設立40周年を迎えた。