子育てと仕事の両立どうしてる?中小企業の後継ぎの工夫を紹介(前編)
家業に戻った後継ぎたちは将来、経営を担うために仕事で結果が求められていますが、結婚し子どもが産まれる時期と重なっていることも少なくありません。悪戦苦闘しながらも仕事と家庭を両立させようとしている後継ぎに工夫点を聞きました。前後編に分けて紹介します。
家業に戻った後継ぎたちは将来、経営を担うために仕事で結果が求められていますが、結婚し子どもが産まれる時期と重なっていることも少なくありません。悪戦苦闘しながらも仕事と家庭を両立させようとしている後継ぎに工夫点を聞きました。前後編に分けて紹介します。
兵庫県加東市で「製造請負」を事業としている「オーエス電機工業所」の3代目後継ぎの下山宜昭さん(Twitterユーザー名:@NORI_ASSY)は、両親の体調不良をきっかけに7年前に家業に戻ってきました。業務内容は「現場管理、お客様対応、新規営業対応、4トン車での納品対応等、多岐にわたります」と話します。父である社長と事業の運営を分離して、それぞれが事業部のような形で仕事をしています。
下山さんは、4歳、3歳の男の子の父親です。妻は千葉県出身のため、慣れない地で、しかも気兼ねなく会話ができる友人もいない環境のもと、平日はほぼワンオペ育児状態になっています。下山さんにはいま、3つの悩みがあります。
妻は産後数ヶ月、母乳やミルクをあげるために数時間ごとに起きていました。いまも深夜に息子のおねしょで起こされ、ベットのシーツを取り外して、洗剤で手もみ洗いして……としているうちに、どうしても睡眠不足になり、イライラが募りがちです。
妻は会社の経理業務や下山さんの管理業務をサポートしています。さらに、退社後は、息子たちの幼稚園からのお迎え、そして、夕飯の準備に追われます。
どうしても、息子たちにスマホを渡してYoutubeを見せざるをえない時間帯があります。そうすると、保育園から帰宅後してしばらく見続けていることもあるようです…。下山さんは「気を付けないとあまり見せたくない動画を勝手に見ていたこともあり、注意が必要です」と話します。
妻をサポートするために、下山さんは繁忙期以外、午後7時には仕事を切り上げて、帰宅するようにしています。息子たちを風呂に入れて、寝かしつけてから、仕事を再開したり、読書したりしています。しかし「もっと仕事に没頭したい」と思うこともしばしばです。そのほかにも、週末の勉強会にも行きたいけど、妻に言い出しづらく、ギリギリで伝えてしまって怒られるという悪循環にも陥っています。
そんな悩みに対し「妻が幸せなら、家族みんなが幸せ」と考える下山さんは、いくつかの作戦に取りかかっています。
子育てについて本を読みながら学んでいる下山さん。「ネットや書籍でも理想の食育はこうだ!みたいな情報もあったりするので、それが奥さんを苦しめることになったりします。性格が真面目だと余計にしんどくなります」。
少しでも肩の力を抜いて欲しい。そんな思いを込めて『家事なんて適当でいい!』(ボンベイ著、KADOKAWA)や『1人でできる子になるテキトー子育て』(はせがわわか著、SBクリエイティブ)を購入しました。
「読んでみたら?」と育児に疲れている妻に勧めるのは逆効果。そこで、下山さんは読書中であるかのようにダイニングテーブルにそっと置いておきます。すると妻がたまたま手に取り、そこから夫婦で子育てについて会話する場が生まれています。
家事の負担を軽減する家電は、積極的に取り入れます。数年かけて買いそろえたものは、食洗機、自動掃除機ロボット、乾燥機付きの全自動洗濯機、床拭きロボット「ブラーバ」の4つ。妻へのクリスマスプレゼントで贈ったのは自動掃除機です。「外出中にボタン1つポチっとしておくだけで床はキレイになります。Amazonのタイムセールを見逃さず、安く購入しました」
1週間のご飯の献立を考え、準備、子どものためを考えて作った料理なのに食べない…。「せっかく作ったのに何で食べないの」という妻の不満は何度も聞いてきたという下山さん。そこで、妻が疲れているときは、レトルト食品で済ますことにもしているそうです。松屋の冷凍牛丼、無印のレトルトカレーなどは子どもたちにも人気なのだそうです。もちろん、健康面にも配慮して、副菜にサラダも出しますが、こちらはあまり人気がないようです。
どうしても週末に勉強会に行きたい……。そんなときのために妻と協議の結果、下山さんは「旦那のわがまま貯金箱」を置くことにしました。
「自分の時間が欲しいのは妻も同じなので、絶対に言ってはいけない言葉です」と過去の経験を振り返ります。一方で、以前のように自宅と会社の往復だけでなく、自分自身が外に出ることの重要さを痛感しています。そのため、平日夜や週末1泊2日で勉強会に参加することも最近増えてきました。
「妻も仕事に対する覚悟が芽生えてきたのか、私のわがままに愛想つかしたのか、私のやりたいことは何でもやっていいよ!と最近では、神発言をしてくれています。ただただ感謝です。ただ、平日も週末も育児の休息日がないのは体力的にも精神的にもしんどいので、旦那のわがまま貯金箱でトレードオフということになりました」。
お金がたまったときには妻に「自分のご褒美」として使ってもらう予定です。1泊で入れる金額は「内緒です」とのことです。
どれだけ仕事を調整しても、休日出勤せざるを得ないときもあります。両親も手が空いていない。そんな時は、家族全員で会社に行くことにしています。
少し前には、会社の休憩室を会議室としても使用できるように、家族みんなでニトリへ行って、タイルカーペットを買ってきて、みんなで張ってリフォームごっこをしました。「これはアトツギだからこそできることかもしれないですね」
後継ぎによる子育ての工夫は、後編に続きます。
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