中小企業の後継者不在率は2011年以降で最低 増える内部昇格
中小企業の後継者不在率は、2011年以降で最低を更新し、全国で65.1%であることが帝国データバンクの調査でわかりました。3年連続で低下しています。2020年の事業承継で最も高いのは「同族承継」でしたが、「内部昇格」も同族承継の0.1ポイント差まで迫っています。様々な角度から分析したデータを紹介します。
中小企業の後継者不在率は、2011年以降で最低を更新し、全国で65.1%であることが帝国データバンクの調査でわかりました。3年連続で低下しています。2020年の事業承継で最も高いのは「同族承継」でしたが、「内部昇格」も同族承継の0.1ポイント差まで迫っています。様々な角度から分析したデータを紹介します。
帝国データバンクは、2020年10月時点の企業情報をもとに、事業承継の実態について分析可能な約26万6000社の事業承継動向について調査しました。結果の概要は次の通りです。
項目ごとに解説します。
26万6000社の後継者不在状況は、全体の65.1%にあたる17万社で後継者不在でした。後継者不在率は大きく変動していないものの、2011年以降で最低となりました。
全国で最も不在率が高かったのが沖縄県で、全国平均を大幅に上回る81.2%でした。しかし、2016年(86.2%)をピークに4年連続で下がっています。2番目に高かったのが、鳥取県で2019年から1.9ポイント上昇しました。このほか山口県や島根県など、上位10県中4県が中国地方でした。
一方で、和歌山県は2019年から1.8ポイント上昇したものの、2年連続で全国最低でした。2019年から後継者不在率が低下した都道府県は18、上昇は27でした。最も低下した幅が大きかったのが、三重県で2019年から8.6ポイント下がりました。
2020年の後継者不在率を業種別でみると、次の通りです。小売業とその他をのぞく5業種で2019年より低下しました。
最も低いのは製造業ですが、さらに業種を細かく見ていくと「木材製品」(59.0%)や「家具」(61.4%)など製造業のなかの15分野中8分野で2019年を上回っており、バラつきがあるのがわかります。
2018年以降に事業承継したことがわかった全国約3万3000社について、先代経営者との関係性をみると、2020年の事業承継は「同族承継」が最も多く34.2%でした。しかし、2018年から大きく下がっています。
逆に増えているのが、血縁関係によらない役員などを登用した「内部昇格」で34.1%となり、同族承継の0.1pt差までせまりました。2020年の就任経緯に割合は次の通りです。()内は2018年調査との差です。
帝国データバンクは、政府や自治体、金融機関などが一体となって取り組んだ、後継者問題に対する地道な支援が後継者不在率の改善に役立っているとの見方を示しています。
一方で、営業力や財務内容、事業将来性の弱さなどから支援が受けられず、事業承継が間に合わなかった「息切れ型」の後継者難倒産も出ています。そのため帝国データバンクは「今後は、ビジネスモデルや事業の将来性が見込める企業へ支援のリソースを集中させるなど、事業承継支援の在り方=「質」の変化にも着目して動向をみる必要がある」と説明しています。
人口減少社会を迎えた日本は、地域経済の担い手が減っています。特に中小企業は経営者の高齢化が進んでいます。日本の約360万社の99%は中小企業でかつては、経営者の家族が事業承継することが一般的でしたが、会社の売り上げの低迷や人手不足だけでなく、ライフスタイルや価値観の変化など様々な要因で、家族が継ぐことをあきらめるケースも目立っています。
休廃業や解散した企業は新型コロナの影響もあって、年3万件から4万件台へと年々増加傾向にあります。事業は優良でも、後継者がいないため廃業を考えざるを得ない場合もあります。
中小企業の後継者不足は長年社会課題として指摘されながらも、なかなか改善できない状況が続いていました。
中小企業庁は2017年、中小企業経営者の高齢化が進むなか、今後5年程度を事業承継支援の集中実施期間とする「事業承継5ヶ年計画」を作りました。事業を次世代に引き継ぎつつ、後継者がベンチャー型事業承継などの経営革新などに取り組みやすい環境を作ろうとしています。政策への是非はあるものの、現在、次の5つのポイントに取り組んでいます。
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朝日インタラクティブが運営する「ツギノジダイ」は、中小企業の経営者や後継者、後を継ごうか迷っている人たちに寄り添うメディアです。さまざまな事業承継の選択肢や必要な基礎知識を紹介します。
さらに会社を継いだ経営者のインタビューや売り上げアップ、経営改革に役立つ事例など、次の時代を勝ち抜くヒントをお届けします。企業が今ある理由は、顧客に選ばれて続けてきたからです。刻々と変化する経営環境に柔軟に対応し、それぞれの強みを生かせば、さらに成長できます。
ツギノジダイは後継者不足という社会課題の解決に向けて、みなさまと一緒に考えていきます。