プラスチック加工技術の一つにブロー成形がある。ブローは英語のblow(吹く)。柔らかい状態の樹脂に空気を吹き込み、中空の入れ物をつくる。成形全体の1割弱という小さな市場だが、灯油や洗剤の容器など密閉度が求められる製品に適し、型作りも比較的安くできる。

 この成形技術で、利川暉(としかわあきら)さん(69)は1989年、「人がやっていないモノをつくりたい」と会社を設立した。

 これまでに11の特許を得た。ケーブルを通す管のつなぎ目の浸水を防ぐため、プラスチックと不織布を合わせたハイブリッド素材で継ぎ手をつくった。技術力は大手企業からも高く評価されている。

 会社設立30年を前に、暉さんは家族に夢を語った。「下請けではなく、自社の製品をつくって売るメーカーになりたい」。四女舞子さん(33)はすでに父を手伝っており、三女綾子さん(35)も銀行員を辞める決意をした。

 会社員だった次女の智子さん(37)は「3人一緒なら経営できるんちゃうか」と確信した。2016年に社名を「トシプラ」と改め、2018年には智子さんが社長、綾子さんが工場長に就き、舞子さんは設計を担当することになった。暉さんは開発長の肩書で製品開発に没頭した。

導入した最新機器で新たな開発に取り組む利川暉さん(右)と智子さん

 自社製品第一号はポリタンク「TANK-U」。成形で3本の持ち手をつけ、灯油などを入れると重くなる容器を2人で運べるようにした。見た目は単純だが、「技術力がなければできません」と智子さんは胸を張る。

 智子さんはもう一つ、大きな事業転換を決断した。滋賀県産業支援プラザで「技術を外に出しなさい」とアドバイスを受けたのがきっかけだ。

 「技術は隠すものだと思い込んでいた。『それを売りにすればいいんだ』と目からうろこでした」。開発段階の試作などを担う開発支援型ビジネスに経営の軸足を移すことに。「TANK-U」は技術力をPRする材料になった。

つなぎ合わせて、水上太陽光発電のパネル架台などに用いられるトシプラが開発した大型のフロート

 春には浮桟橋などに使われるフロートのレンタル、販売を始める。乗ってもへこまず、水上の揺れを感じにくい安定度が売りだ。父の技術と製造業の未来を信じた3姉妹の挑戦は始まったばかりだ。(2021年1月23日付け朝日新聞地域面掲載)

トシプラ

 1989年に利川プラスチックとして創業した。ブロー成形の特色を生かし、インフラ関連のケーブル管の継ぎ手など小ロットでも製作するのが強み。従業員6人。1日8時間労働で生産効率を上げる働き方改革に取り組み、ここ半年の残業はゼロだ。