「たまご好き」の食文化支えるナベル 1時間で12万個の卵をチェック
ふだんスーパーや直売店で売られているパック詰めの卵の多くが、京都市南区のナベルが開発した装置で包装されている。産み落とされた卵を、鶏卵パックという「製品」にする手伝いをしている会社だ。そのシステムは国内でトップシェアを誇り、世界70カ国以上で使われている。(佐藤秀男)
ふだんスーパーや直売店で売られているパック詰めの卵の多くが、京都市南区のナベルが開発した装置で包装されている。産み落とされた卵を、鶏卵パックという「製品」にする手伝いをしている会社だ。そのシステムは国内でトップシェアを誇り、世界70カ国以上で使われている。(佐藤秀男)
日本は世界有数の「たまご好き」の国だ。業界紙を発行する鶏鳴新聞社(東京)が国際鶏卵委員会の資料をもとにした集計では、日本の1人あたりの年間消費量(2019年)は338個で、1位のメキシコ(372個)に次いで多い。
ナベルが卵の包装事業に携わるきっかけは1975年。卵パックのふたを溶着させる超音波シール機を国内で初めて開発した。
もとは、壊れていらなくなった家電を修理して売る「街角の電器屋さん」だった。大手電機メーカーの下請けをしていたが、創業者で現会長の南部邦男さん(73)は、自社製品を売ることを目指した。
1979年、国産初となる「自動洗卵選別包装装置」を開発する。卵を洗い、サイズごとにより分け、パックに詰めるまでの工程を、すべて機械がこなす。「日本の食文化なくして会社の発展はなかった」。邦男氏の長男で、3年前から社長を務める邦彦さん(43)はそう言い切る。
世界には、卵を生で食べる習慣のない国が多い。だが、日本では、卵かけごはんやすき焼きに代表されるように生で食べることが多く、出荷前に卵を洗う。表面の汚れやひび割れも敬遠されがち。血が混じっている卵は「異常卵」とみなされ、まず出荷されない。
そこで検査システムを充実させた。ひび割れを検知する装置は、卵を回転させながら、綿棒に似た特殊な16個のハンマーで優しくたたく。音の違いや音響を分析し、画像や目視ではわからないひびまで見抜く。高速で通過する卵に当てた光を分析し、異常卵を割り出す。1時間で最大12万個の卵をチェックできるという。
邦彦さんは「日本の食文化や品質へのこだわりが、我々の機械を進化させてきた。消費者に鍛えられました」と話す。マレーシアと中国・上海に現地法人を置き、70カ国以上で販売実績がある。
食に対する安全、安心の意識が高まり、東南アジアや中国で検査装置への関心が高まっているという。「世界の卵をナベルの機械でパックしよう」をスローガンに、販路を広げようとしている。(2021年3月20日朝日新聞地域面掲載)
1964年に創業。1975年、卵パックのふたを溶着する超音波シール機の開発に成功した。その後は鶏卵を洗浄、選別、包装する自動装置を開発し、国内外で販売する。売上高は2020年3月期で58億円。従業員数は3月1日現在で179人。
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