目次

  1. 在庫管理・在庫管理表の意義
    1. 在庫管理の基本
    2. エクセル(Excel)による在庫管理のメリット
  2. エクセルを使った在庫管理表2タイプの作成方法
    1. 「単票タイプ」の在庫管理表の作り方
    2. 「単票タイプ」のメリット・デメリット
    3. 「在庫移動表タイプ」の在庫管理表のメリット・デメリット
  3. エクセルの在庫管理表を運用する際のポイント
    1. 運用ルールを定める
    2. バックアップを取る
    3. クラウドのエクセルを利用する
  4. 無料の在庫管理システムのおすすめ3選
    1. ロジクラ
    2. 無料Web在庫管理フリーソフトLASK
    3. 在庫管理システムSASO
  5. 出来る範囲でスタートして、継続することがポイント

 初めに、在庫管理・在庫管理表の意義や重要性について確認しておきましょう。

 記事「在庫管理の重要性と戦略策定4つのポイント 有名企業の事例も紹介」で、たまごっちブームに乗じて発生した過剰在庫が、メーカーに60億円もの特別損失の計上を余儀なくさせた事例を紹介しました。

 また、あるメーカーの健康飲料がヒット商品となり店頭での欠品を招き、その結果メーカーが「安定した供給の継続が困難になった」としてその飲料の販売を休止した事例も紹介しました。

 「適正な在庫水準とは何か?」という問いにパーフェクトに答えるのは難しいものの、ある程度の健全な在庫水準を保ち、欠品を防止することに務めるのは、およそモノを扱う企業にとっては共通の使命であるのは間違いないでしょう。

 とどのつまり、消費者やユーザーが欲しいモノを、欲しい時に、欲しい分だけ提供できることが、企業が目指すひとつの理想であると言えます。

 その在庫管理を行うために必要となるのが在庫管理表です。

 規模の小さな事業の場合、紙に書いた在庫管理表があれば事足りる場合もありますが、一方で、破損や紛失などのリスクもあります。

 また、特に扱う商品などのアイテム数が多い場合、紙の在庫管理表では管理しきれなくなる可能性も生じます。そこで登場してくるのが、エクセルによる在庫管理です。

 エクセルで在庫管理を行う利点には、下記の3つがあります。

  1. 比較的簡単に始められる
  2. 紙と比較して管理がしやすい
  3. 在庫管理ソフトを導入するよりも低コスト

 利点の一つ目は、始めやすさです。Windows系のPCの多くにはエクセルがインストールされていることから、すぐに利用を開始することができます。

 またビジネスパーソンの多くはある程度エクセルの使い方を理解している人が多く、操作に親しみやすい点もポイントでしょう。

 第二の利点は、紙の在庫管理表よりも管理がしやすい点です。紙の在庫管理表のような破損、紛失リスクが少なく、バックアップも取れます。在庫管理表を複数の人で管理する場合などは特に、ファイルの置き場所や取扱いのルールを定めておけば、管理も楽です。

 第三の利点は、コストです。エクセルそのものにはお金を払う必要がありますが、一度インストールすればほぼ無制限に使用できます(※年間ライセンス契約の場合を除く)。

 そのほかの在庫管理システムを利用する際に必要なシステム開発費用やランニングコストなども必要ありません。

 エクセルによる在庫管理にはこうしたメリットがあります。本格的な在庫管理をまだ行っていない、または紙の在庫管理表を使っているという企業は、これを機会にエクセルによる在庫管理を検討してみてはいかがでしょうか。

 では、実際にエクセルで在庫管理表を作成する場合、どのようにすればいいのでしょうか。

 一般的に、エクセルによる在庫管理表には「単票タイプ」と「在庫移動表タイプ」の二つのタイプがあります。ここでは、それぞれについて説明します。

 単票タイプの在庫管理表は、別名「吊り下げ票タイプ」とも呼ばれており、実際に紙の吊り下げ票をそのままエクセルに起こしたものです。作り方は非常に簡単です。

 エクセルを起動し、A3セルからA列に「品番」「商品名」「日時」「繰越残高」を入力します。

 続けてA列に日付を入力します。

 最初に入力した日付をハイライトしてマウスで引っ張ると自動的に日付けが入力されます。

 次にB4セルに品番、B5セルに商品名をそれぞれ入力します。

 6行B列以降に「入庫」「出庫」「残高」「担当者」「備考」とそれぞれ入力します。

 D6セルに先月末の残高を入力します。

 D7セルに関数「=D6+B7-C7」(繰越残高プラス翌日入庫マイナス出庫)を入力します。

 D7セルの関数をD列にコピーします。

 あとは入出庫があるたびに実数を入力するだけです。残高は自動計算されます。

 格子をつけて、品番と商品名を中央に揃えると見やすくなります。

 単票タイプの最大のメリットは「簡単に作れる」「運用が簡単」である点です。パソコンが苦手な人でも、日付や数字を間違えなければ、正確に入出庫情報や在庫数などが管理できます。

 一方のデメリットですが、単票タイプは原則、一つの商品を対象にするので、全体の在庫状況を把握できない点です。特に取り扱うアイテム数が多い企業の場合、単票タイプでの在庫管理は、逆に複雑になる可能性があります。

 「在庫移動表タイプ」の在庫管理表は、縦軸に品番や商品名、残高を、横軸に入出庫の数字を入力するタイプです。

 単票タイプと違い、多くの商品の在庫を一元で管理し、全体の在庫状況を把握することが可能です。

 単票タイプと同様、入出庫のプラスマイナスを在庫数に反映させる関数を組めば、自動で計算してくれます。

 一方で、在庫移動表タイプの主たる機能は全体の在庫数や入出荷数を把握することにあり、単票タイプのように担当者や備考欄といった「その他の情報」の入力ができないデメリットもあります。

 また、取り扱うアイテム数が特に多い場合、エクセルのシートで膨大なデータを扱うことにもなり、管理上のトラブルなどが発生するリスクもあります。

 では、エクセルの在庫管理表を使う時のポイントは何でしょうか。以下にいくつか挙げます。

 ポイントの第一は、エクセルの在庫管理表の運用ルールを定めることです。これは特に、複数の人で同じ在庫管理表を扱うケースにおいて重要です。

 誰が在庫管理表にアクセスできるのか、誰がデータを入力できるのかといったルールに加え、表記方法、データ入力の時間や日時などもルール化し、担当者全員で共有しておくといいでしょう。

 逆に、こうしたルールを定めないで運用した場合、担当者が間違った表記でデータを入力する、データ入力そのものをし忘れるといったリスクが発生する可能性が生じます。

 エクセルの在庫管理表を会社のパソコンや社内サーバーで管理する場合、特に重要なのがバックアップです。

 筆者のクライアントにアジア食品の輸入商社がありますが、その会社では、社内の一台のパソコンのフォルダにエクセルの在庫管理表を置き、複数の社員で共有していました。

 ところが、ある時そのパソコンのハードディスクが突然起動しなくなり、ファイルにアクセスできなくなってしまいました。

 幸い、データリカバリー業者に持ち込んで復旧してもらいましたが、その間の一週間、社員は在庫管理表にまったくアクセスできませんでした。

 日頃定期的にバックアップを取ってさえいれば、被害を最小限にとどめられていたでしょう。

 これからエクセルで在庫管理を始めるといった場合、筆者のお勧めはクラウドのエクセルです。

 マイクロソフトはクラウド版エクセル「マイクロソフト・エクセルオンライン」を無料で提供しています。

 エクセルオンラインは、デスクトップ版エクセルのほぼすべての機能が利用でき、「単票タイプ」「在庫移動表タイプ」のいずれのタイプの在庫管理表も作成できます。

 また、クラウドですのでインターネットに接続していればどこからでもアクセス可能です。

 マイクロソフトオフィスのクラウド版の公式サイトはこちら。

 取扱商品のアイテム数が膨大である、または入出庫の頻度が多いといった場合、エクセルの在庫管理表では限界を感じるケースもあるでしょう。その場合は、やはり専用の在庫管理システムの利用を検討すべきでしょう。

 最後に、筆者お勧めの無料在庫管理システム3つを紹介します。

  1. ロジクラ
  2. 無料Web在庫管理フリーソフトLASK
  3. 在庫管理システムSASO

 複数ユーザー、複数拠点の在庫一元管理が可能な在庫管理システムです。

 専用アプリをインストールすれば、iPhoneによる入出荷処理や在庫確認ができます。

 受注情報から送り状や納品書の作成もできるので、EC事業者にとっては非常に便利です。1拠点のみ月間出荷数300件数までなら無料で利用できます。

 有料プランではAmazonやShopifyとの連動も可能です。

 ロジクラの公式サイトはこちら。

 Webサイト開発会社プロトンが開発した無料在庫管理ソフトLASK。

 もともとは自社のクライアントを支援する目的で開発され、やがて一般に公開されたというユニークな歴史を持っています。

 複数拠点の在庫をリアルタイムで一元管理でき、操作が簡単なのも売りとなっています。

 在庫情報を取引先と共有できるLASK2も、無料で提供されています。

 LASKの公式サイトはこちら。

 在庫管理システムSASOは、オープンソースのフリーソフトウェアです。

 商品管理、入出庫管理、棚番管理、ラベル印刷といった一般的な在庫管理システムの機能が利用できます。

 無料ですが、社内のサーバーにインストールする必要があり、システムの立上げにはそれなりのITの知識が必要です。

 SASOの公式サイトはこちら。

 エクセルで在庫管理をする方法につき、在庫管理表を中心に解説しました。

 多くのパソコンにはエクセルがインストールされているので、その気になればすぐにでもエクセルで在庫管理が始められます。

 ポイントは、出来る範囲でスタートして、少しずつ改良を加えてゆくことです。最初からあれもこれもと盛り込まない方が、結果的にはうまくいきます。

 とにかく続けることを第一の目標にして、頑張ってください。