狭山でキッチンカーイベントが相次ぐ理由とは 新規参入支える3つの魅力
新型コロナウイルス感染拡大により、テイクアウト専門店、デリバリー専門のゴーストレストラン(クラウドキッチン)など飲食業の形態が多様化しています。そんななか、埼玉県狭山市では毎月、キッチンカーのイベントが開催されています。出店者が集まる理由は、市内のレンタル会社が始めた独自のサービスにありました。
新型コロナウイルス感染拡大により、テイクアウト専門店、デリバリー専門のゴーストレストラン(クラウドキッチン)など飲食業の形態が多様化しています。そんななか、埼玉県狭山市では毎月、キッチンカーのイベントが開催されています。出店者が集まる理由は、市内のレンタル会社が始めた独自のサービスにありました。
狭山市では、毎月第1日曜日に月1回のペースでキッチンカーイベントが開催されています。イベントにはキッチンカーなど4~7店舗が出店しています。
これらのキッチンカーイベントは「さやまキッチンカーマルシェ」(通称:さやキチ)と名付けられ、2021年6月には縁ある不動産屋の10周年イベントに出店するなど活動が広がり、市民への認知度も上がってきました。
このイベントの仕掛け人が、キッチンカーのリース事業と出店をワンストップで後押しするサービスを始めた「野口自動車工業」の野口功祐社長です。
野口自動車工業は、狭山貨物運輸の整備事業を独立させる形で1972年に創業。車検・整備や修理・板金塗装のほか、新車・中古車の販売/買取やリース、レンタカーと、「自動車に関するサービスを通じて、地域の安心・安全を提供する」という思いのもと、自動車総合サービスを展開しています。
提供しているサービスは多岐にわたります。たとえば、通常の新車リース金額に月額1,000円追加負担するだけでキャンピングカーが年2回レンタルできる「リース+1(プラスワン)」サービスは、アウトドア人気の後押しもあり好評を得ています。
そんな野口自動車工業の野口社長が、コロナ禍による飲食業界の苦境に何かできないかと考えて狭山市ビジネスサポートセンター(Saya-Biz)を訪れたのは2021年2月のことでした。
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「もともと自分自身も飲食が大好きで、飲食店の訪問や、イベントでの食事が楽しみのひとつでした。移動販売を始めるきっかけとして、レンタカーが選択肢になり得るのではないかと考え、進めて来ました」
野口社長は、レンタカー事業のひとつとして、キッチンカーのレンタルを始めようとしていました。キッチンカー事業は固定店舗と比べて初期投資が少なくて済むことから、コロナ以前から市場は右肩上がりでした。
東京都の場合、営業許可を取得したキッチンカーの数は2012年から2018年の6年間で、約1.44倍に増えています。(出典:東京都福祉保健局「食品衛生関係事業報告」)
そして、コロナ禍においては以前のようなオフィス街やイベントでの出店機会は減少したものの、屋外で「三密」を避けた営業が可能であることから「テイクアウトやデリバリーだけではコロナ前の売上に戻すのは難しい」「新しい売上の軸を作りたい」などの動機で新規参入する企業が増加しています。
埼玉県狭山市では、2021年3月5日に市の中心部を流れる入間川の河川敷に、新たなにぎわいスポット「入間川にこにこテラス」がオープンすることが決まっていました。入間川河川敷ではヨガや動物とのふれあい体験・アウトドアブランドのイベントなどをこれまでも行っており、キッチンカーの出店も人気でした。
「入間川にこにこテラス」のオープンを機に、入間川河川敷を中心とした地域の活性化は更に進んでいくはず。
「最近にぎわいが寂しくなっている街中が、『キッチンカーがあふれる街・狭山』になったら楽しいな、入間川河川敷活用によりキッチンカーの必要性が高まるかな、など考えています。車を通して皆様のお役に立てたらと思っています」。野口社長は、そう話していました。
野口社長にさらに具体的に聞いていくと、今回のキッチンカーレンタルについて、3つの魅力が浮かび上がってきました。
第一に、キッチンカーが、キッチン装備込みでレンタルできるということです。冷蔵庫・冷凍庫・ガス台・鉄板などがセットになっていることで、幅広いメニューの提供が可能となります。
第二に、その価格も1日15,000円~とかなり低価格です。事業の目途が付いた時点で、レンタルから購入に切り替えられるなどレンタカー事業を主軸としてその他サービスも展開している野口自動車工業だからこそ実現できたシステムです。
そして何より魅力的なのが、車両のレンタルとセットで出店場所の紹介や出店手続き、広報活動までワンストップでサポートが受けられることです。
移動販売を始めるハードルとしてよく耳にするのが、出店場所を探すのが難しい、との声です。一方で狭山市には、移動販売に適した河川敷や公園、有効利用できる駐車場や空き地も数多くあります。
「不動産屋と相談して立地はいいが駐車場が埋まらない場所を紹介してもらったり、関連企業が持っているリバーサイドゴルフ場脇のスペースを活用したりと、出店場所を紹介してあげることができるのではないかと考えた」というこのサービスは、出店場所の確保や必要な手続きなどの煩雑さを軽減できるという点で、特にキッチンカー初心者にとって魅力的だと感じました。
そこで、これらのお話を伺いSaya-Bizでご提案したコンセプトが「チャレンジキッチンカー」です。
独立開業を支援するため空き店舗を安価な家賃で一定期間貸し出し、その後の本格出店の足掛かりとする「チャレンジショップ」制度をヒントにしました。
事業をスタートする際のハードルを低くすることで、今まで飲食業をやりたかったが始めるきっかけが無かった方や、飲食店の業態転換を検討している方が、キッチンカー事業にカジュアルに挑戦できる、まさに「チャレンジショップのキッチンカー版」。
もちろん、既にキッチンカー事業を行っているがもっとお店を宣伝したい方、地域のイベントで単発的に使いたい方などもターゲットになり得ます。まずは野口自動車工業のホームページやSNSへの掲載、既存顧客や商工会議所登録事業者へのチラシ配布を中心として、広報をスタートすることにしました。
「チャレンジキッチンカー」プラン発表後、野口社長は毎月第1日曜日に月1回のペースでキッチンカーイベントを開催しており、今後は企業イベントとのコラボレーションや市内公園での開催など、更なる出店場所の拡大を図る予定です。
また、野口社長は先日、キッチンカーに関する地域の窓口としての活動を目指して「さやまキッチンカー協会」も設立しました。
「新たなキッチンカーチャレンジャーも、これまでのキッチンカーも、ここに来ると出店場所や最新の情報を得られるような場にしたい。また、市民の皆さんや狭山市を訪れる方が協会の情報を検索すると、いつ・どこでキッチンカーの営業が行われているか分かれば、集客にも繋がる。そんな役割を担っていきたい」
2021年6月1日から改正・食品衛生法が施行され、これまでは都道府県ごとに異なっていた設備基準や営業許可申請書類が全国で統一の基準となるなど、益々活用の幅が広がりそうなキッチンカー。
狭山市においてキッチンカーが「新しい生活様式」に寄り添う賑わいの場づくりに欠かせない、そんな存在になる日はそう遠くないかもしれません。
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