売上の向上を考えるための3つの要素

 大企業でも中小企業でも、小売業でも製造業でも売上を構成する要素は変わりません。アメリカのマーケティングコンサルタント、ジェイ・エイブラハムは次のように解説しています。

 売上=顧客数 × 顧客単価 × 購入回数(リピート)

 今よりも売上を上げたいと考えたときには、漠然と考えるのではなく、3つの要素を上げるための具体的な方法を考えることで具体的なアイデアが生まれやすくなります。

 そのためにできることは、たとえば次のようなことが挙げられます。

  • 新規顧客を獲得する
  • 顧客の来店・購買頻度を上げる
  • 顧客単価をあげる
  • 1回あたりの購買数を増やす

新商品開発のプロセスと課題

 新たな顧客向けに、競合の少ない商品を開発することは、顧客数の増加や顧客単価のアップにつながります。とはいえ、新商品開発は企画(市場調査)、製造、PR、販売、配送まで考えるべき課題がたくさんあります。

 そんなときに、役立つ相談先が「ビズモデル」などと呼ばれる無料で活用できる産業支援拠点です。全国各地にあり、各拠点のセンター長がツギノジダイの「地方発アイデア」の特集のなかで事例を紹介しています。

既存のリソースで開発できた「マスク専用洗剤」

 国内外のOEM生産を手がけてきた洗剤メーカー「ユニバーサル・デタージェント」(千葉県木更津市)が、コロナ禍で初のBtoC商品となる「マスク専用洗剤」を商品化しました。

洗剤メーカー「ユニバーサル・デタージェント」(千葉県木更津市)の茂木泰一郎(左から2番目)。2006年設立、日本とインドネシアで従業員数は107人(2020年1月現在)
  • 自社工場を持っていることによる「柔軟性」と「スピード」
  • 短期トレンドとしての「新型コロナ」、長期トレンドとしての「環境」
  • 茂木泰一郎社長の洗剤の豊富な経験と化学的な知識

 この3つの要素を掛け合わせることで、今後世の中の役に立つ新商品の開発が、今あるリソースだけでほとんどコストをかけずに開発することができました。

鰹節の副産物「削り粉」から季節の新商品

 静岡県熱海市の老舗商店「杉本鰹節商店」では、鰹節を削った際の副産物で出る「削り粉」の有効活用が課題でした。そこで、初期投資1000円のスモールスタートで観光客向けの商品として売り出したところ、各方面から注目されました。試行錯誤を重ねつつ、人気商品となっています。

「ハロウィンみそ玉」を手に持つ1889年創業の杉本鰹節商店の4代目店主杉本隆さん

新商品の顧客層の再定義 都心で販売

 長崎県雲仙市の農家が開発したゆで野菜の真空パック。しかし、地元ではなかなか販路が広がりませんでした。そこで、ゆで野菜の魅力を再定義しました。

  1. 真空パックなので、冷蔵庫で60日保存可能
  2. 皮ごとまるゆでしており、栄養価も豊富な点も強み
  3. 茹でてあるのでそのまま食べられ、時短野菜としてPRできる

 そこで、ターゲットを都会のキャリアウーマンとし、「キャリアウーマン応援野菜」と名づけることで注目を集め、北海道から沖縄まで注文が寄せられたほか、シンガポールでも販売されています。

都会で頑張るキャリアウーマンに向けた「時短食材のまるゆで野菜」のPOP画像。製作とモデルを務めたのは、テレビリポーターでグラフィック・ウェブデザイナーの鐘江美沙紀さん

初の消費者向け商品、消費者に響くストーリー性で売上5倍

 秋田県湯沢市の米穀集荷会社が創業130年で初の消費者向けの新ジャンルのお米「ハパライス」は、商品の特徴や市場のニーズ、そして開発した本人のストーリーを丁寧に伝えることで売上を5倍に伸ばしました。

 新ジャンル米「ハパライス」は、玄米に白米をブレンドした「白米感覚で気軽に炊ける健康食」です。通販サイトで販売を始めたものの、当初の売れ行きはいま一つでした。しかし、商品+経歴+技術力を生かしてプレスリリースをつくることで、地元新聞のほかテレビ局では特集が組まれ商品の露出する機会が増えていきました。

店主をブランド化、販路は全国へ

 店主のこだわりがブランディングとなって、全国から万年筆ファンが訪れる文具店が岐阜県大垣市にあります。セールスポイントは、万年筆とインクに対する店主の豊富な知識と創造力です。最大限生かすために店主自身に「キャッチコピー」と「ネーミング」を付けました。

1923年創業の「川崎文具店」(岐阜県大垣市)5代目店主である川崎紘嗣さん