目次

  1. グループウェアとは
    1. グループウェアの歴史と現状
  2. グループウェアのメリット 解決できる課題とは
    1. スケジュール機能
    2. コミュニケーション機能
    3. ワークフロー機能
  3. グループウェアを選ぶときのポイント
    1. 操作性
    2. 国内製品か海外製品か
    3. カスタマイズ性
    4. パッケージ型かクラウド型か
  4. 主なグループウェア比較5選
    1. Microsoft 365
    2. Google Workspace
    3. サイボウズ Officeとサイボウズ Garoon
    4. desknet's NEO(デスクネッツ ネオ)
  5. 導入に失敗しないためのコツ

 グループウェアとは、企業内のコミュニケーションを円滑にし、業務の効率化を推進するためのソフトウェアで、英語ではGroupware または Collaborative softwareと言います。

 グループウェアの一般的な機能はメール、スケジュール、連絡先一覧、施設予約、掲示板(社内SNS)、Wikiなどですが、製品によって勤怠管理や経費精算、プロジェクト管理などの機能も含まれます。

 これらの機能からわかるように、グループウェアはまさにコミュニケーションと業務プロセスを支える基盤となります。

 グループウェアをまだ利用していない企業から見ると、グループウェアの導入は、昨今経済産業省が提唱している「デジタル改革(DX)」の第一歩とも言えるでしょう。

 グループウェアは1990年代に世界で普及し始めたもので、当時は大企業しか導入できない複雑で高価なものでした。

 今も大企業で広く使われている「IBM Notes/Domino」(2019年インドHCLに売却)は、まさに当時のグループウェアの代表作でした。

 しかし、技術の進歩とクラウドの普及により、現在中小企業でも手軽に導入できるようになっています。

 グループウェアはビジネス、業務プロセスそのものをITシステムで表現しているものなので、ビジネスのあり方の変化によりグループウェアの中身も日々進化しています。

 では、グループウェアを導入することで、具体的にどんな課題を解決できるか?どんな機能でその課題をどのように解決するのか?といった疑問を解消するために、ここでグループウェアの機能とそれによって改善できる課題をご紹介します。

 スケジュール機能は、グループウェアの定番機能、社員の予定を効率的に共有するための機能です。

 よくあるのは、自分と、自分に関係する同僚の予定情報をひと目で分かるようにまとめられたカレンダーで表現されます。

 スケジュール機能は、単にスケジュールの参照だけでなく、会議・打ち合わせなどの日程調整、出欠管理なども可能です。

 製品によっては、グループウェアの他の機能と連携して、会議室の予約やホワイトボード、プロジェクターなどの備品の予約、オンライン会議、会議資料の配布支援、議事録支援など多彩な機能を盛り込んでいるものもあります。

 グループウェアを導入していない場合、会議・打ち合わせの日程調整に苦労した経験はありませんか?

 2~3人の少人数の打ち合わせなら予定を合わせることは容易ですし、数十名の大人数の部門会議などなら、あえて一人ひとりの予定を聞くことなく、決め打ちで日程が決められることが多いでしょう。

 しかし、5~10人程度で全員キーパーソンのプロジェクト会議などの日程調整は億劫です。参加者全員の空き時間の把握だけでなく、会議室の都合も考慮しなければなりません。

 一方、グループウェアを用いれば、ワンクリックで参加者の共通の空き時間を自動的に見つけることが可能です。

 参加人数に応じて空いている会議室まで、自動的に提示してくれる製品も多くあります。スケジュール調整の手間が省けるので、仕事の効率化に直結します。

 また、今まで総務部門の管理下にあった会議用のプロジェクター、ホワイトボードなどの備品も、セルフサービスで会議の予定調整と同時に抑えることができて、総務部門の負荷を大幅に減らすことができます。

 会議資料の電子版の配布のよるペーパーレスのコスト削減、オンライン会議による移動時間・交通費の削減など、スケジュール機能と関連機能だけでも業務効率の大幅な向上とコスト削減が期待できます。

 コミュニケーション機能は、社員メール、チャット、掲示板、社内SNSなどの従業員同士のコミュニケーションを支援する機能です。

 ネット上だからできる、従業員同士のフラットなコミュニケーションは、情報共有の促進、生産性向上を後押ししてくれます。

 特に、コロナ禍の長期化による「ニューノーマル」に対応するために、コミュニケーション機能は鍵になっています。

 出社しないのがむしろ常識になりつつある新たな働き方において、今までの対面でのコミュニケーションはほとんど電話もしくはインターネット経由になります。

 ワークフローとは、業務プロセスの一連の流れを図式化したもので、グループウェアによく含まれる機能です。

 グループウェアに含まれるワークフロー機能は、紙での申請や押印での承認を電子化したもので、様々な手続きをペーパーレスで行えます。

 会社の業務の中で、申請と承認が必要なプロセスはたくさんあります。

 人事関連の休暇申請、各種人事関連届けから、経理関連の出張申請、出張精算、仮払申請、IT関連のIPアドレス申請まで、数十種類のワークフローがあるのはおかしくありません。

 これらのワークフローをグループウェアなしで管理すると、各種申請書式の管理と更新、承認ルートの管理、承認者・決裁者不在時の対応、書類の保管など、多くの煩雑な作業が必要です。

 グループウェアを導入すると、担当者をこれらの作業より解放することができます。

 グループウェアを選ぶときは、機能と価格以外にもいくつか重要なポイントがあります。

 グループウェアを選定する際によくある失敗は、単にカタログを読んで機能だけで選んでしまうことです。

 もちろん、グループウェアの機能も重要ですが、グループウェアは社内情報共有、コラボレーション活性化のためのツールなので、社員全員に使ってもらわないと意味がありません。

 「グループウェアを導入したが、社員の10%しか使ってくれない」「メール機能しか使ってくれない」といったようなことになると、今までの課題を解決できないだけでなく、新たな課題を作ってしまうのです。

 ITリテラシーの低い社員を含め、全社員にグループウェアを使ってもらって、かつ使い続けてもらうには、シンプルなUIで、マニュアルなどを読まずに直感的に操作できるものが必要です。

 つまり、使い勝手がグループウェアの大事なポイントで、ある意味で機能よりも重要です。

 操作性を確かめるには、実際に使ってみる以外方法ありません。

 ほとんどのグループウェアが2週間~1ヶ月の無料トライアル期間を用意しているので、試験的に導入し、従業員に実際に使ってもらってフィードバックを集めてから正式導入するようにしましょう。

 グループウェアは業務プロセスをシステム化したものなので、業務プロセスや商習慣が大きく異なる国内と海外は、製品の特徴や機能も大きく乖離しています。

 国内製グループウェアは、日本の商習慣に則った機能が充実しています。

 例えば経費精算のときに、精算書に決裁欄があり、順番に所属長、経理、経理部門長などの捺印を得ることは一般的ですが、このような「承認フロー」は国内製のグループウェアにも搭載されています。

 また、資料や書類の「回覧」が電子化され、電子版の「回覧」ができる国内製グループウェアが多いです。

 一方、海外製のグループウェアはこのような機能を持っていませんが、海外の企業文化に適したツールが多数用意されています。

 その一つはチャットツールです。海外製グループウェアはほとんどチャットツールに力を入れています。

 チャットツール以外、ドキュメント編集のコラボレーションツールも海外製グループウェアのみに備わっている機能です。

 1つのドキュメントを複数の人が同時に編集することで同じ場所にいなくても共同作業が可能で、画期的な機能です。

 また、海外製グループウェアは、カスタマイズ性が高い一方、カスタマイズには高度な知識、開発スキルを必要とすることが多いので、こちらも加味して検討すると良いでしょう。

 カスタマイズ性が高いグループウェアは、実際の業務に合わせて画面やロジックを柔軟に変更できる機能を提供しています。また、他のシステムと容易に連携できます。

 なぜカスタマイズ性が重要かというと、どの会社もグループウェアの既存機能でカバーしきれない独自の業務プロセスがあります。

 中小企業の場合、業務プロセスのほうを変更しグループウェアに合わせることも多いですが、効率よくビジネスを遂行するにはやはりシステムを業務に合わせて修正する場面が出てきます。

 そのため、ある程度規模のある会社や成長中の会社でしたら、特にカスタマイズ性を考慮に入れたほうが良いでしょう。

 昔主流だったパッケージ型のグループウェアは、オンプレミス型とも言うもので、自社サーバーにパッケージソフトをインストールして、利用する形態です。

 パッケージ型は、導入コストが高いのと、リモートワークとの相性が悪いため、徐々にシェアを減らしています。

 パッケージ型の製品を提供終了し、クラウド型に全面移行するベンダーも少なくありません。

 クラウド型はSaaS型ともいい、インターネット経由で利用する形態です。Webメールと同じイメージで、Web上でグループウェアの各種機能を利用します。

 富士キメラ総研の調査によると、2021年にはグラウド型のマーケットはパッケージ型の10倍以上に登ります。

 出典:「働き方改革」やセキュリティ対策、デジタルマーケティングなどが市場拡大の要因に…ソフトウェア(パッケージおよびSaaS)の国内市場を調査│富士キメラ総研

 今後のトレンドはクラウド型ですので、特殊な理由がない限りクラウド型を選択するのが良いでしょう。

 ここでは、国内グループウェア市場においてトップシェアを誇る製品を厳選してご紹介します。

 海外製グループウェア2製品と国内製グループウェア3製品をピックアップしました。

 マイクロソフトが提供しているグループウェアです。以前Office 365という名前でサービス提供されていましたが、最近Microsoft 365と名前変更しました。

 Microsoft 365には、Officeアプリだけでなく、メールやコミュニケーションツールも含まれています。

 また、チャット、ビデオ会議、ファイル共有などが一体化になって人気が高い「Teams」もその一員です。

サービス名 Microsoft 365
提供会社 Microsoft社
提供形態 クラウド型
料金(月額) 540円から/ユーザー※年間契約した場合の料金
特徴 Microsoft Office製品とセットになっていて購入しやすい。パワフルなコミュニケーション機能を用意している。カスタマイズ性が高い
こんな会社におすすめ Windows、Microsoft Officeを利用している会社、Azureを利用している会社
公式URL https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365

 Google Workspaceは、以前「G Suite」という名前でサービス提供されていました。

 言わずと知れたGmailに、ドキュメントのコラボレーションができるGoogle Docs、オンラインストレージのGoogle Drive、オンライン会議のGoogle Meetなどから構成されています。

サービス名 Google Workspace
提供会社 Google社
提供形態 クラウド型
料金(月額) 680円から/ユーザー
特徴 人気のGmailにGoogle Docs、Sheets、Formsなどが利用能で、専用のプログラム言語による高度なカスタマイズが可能
おすすめの企業 Gmailをビジネスで利用したい会社、グルーバルを狙う会社、プログラムによるカスタマイズにある程度自信がある会社
公式URL https://workspace.google.co.jp/intl/ja/

 サイボウズから、サイボウズ Officeとサイボウズ Garoonの2種類のグループウェアが提供されています。

 サイボウズ Officeはユーザー100人以下の中小企業向け、サイボウズ Garoonは100人以上の中堅、大企業向けです。

 サイボウズ Garoonは、機能面、拡張性、グローバル対応などあらゆる面においてサイボウズ Officeよりも優れていますが、その分価格も高くなります。

 また、両製品は「スタンダード版」と「プロ版」のようなエディションの違いではなく、ベースから異なる製品なのでサイボウズ Officeからサイボウズ Garoonへの移行には費用が発生します。この点を念頭に選んでいきましょう。

 中小企業向けのサイボウズ Officeは、10年連続国内グループウェアの市場において不動のシェアNo.1です。累計導入70,000社以上で、厚い信頼を集めています。

サービス名 サイボウズ Office
提供会社 サイボウズ
提供形態 クラウド型、パッケージ型(パッケージ型は2021年9月30日から順次販売終了)
料金(月額) 500円から/ユーザー ※クラウド型の価格
特徴 とにかく実績豊富。スケジュールを中心に中小企業に必要な機能を一通り揃えている
おすすめの企業 国内大手企業からの製品である安心感を重視する会社、従業員100人未満の会社
公式URL https://office.cybozu.co.jp/
サービス名 サイボウズ Garoon
提供会社 サイボウズ
提供形態 クラウド型、パッケージ型
料金(月額) 800円から/ユーザー ※クラウド型の価格
特徴 サイボウズOfficeに比べて、きめ細かい管理が可能で、カスタマイズ性も高く自由度が高い。また、企業内の他のシステムと容易に連携できる
おすすめの企業 国内大手企業からの製品である安心感を重視する会社、従業員100以上の会社
公式URL https://garoon.cybozu.co.jp/

 desknet's NEOの開発元はネオジャパンで、東証一部上場企業です。desknet's NEOは非常に使いやすく、IT系雑誌調査による顧客満足度No.1の実績があります。

 チャット、経費精算、オンライン会議機能はそれぞれオプション(別途料金あり)で提供されています。

 別々で課金されることは、これらの機能をほとんど必要としないユーザーにとっていいかもしれませんが、これらを全部必要とするユーザーからするとMicrosoft 365よりやや高く見えます。

サービス名 desknet's NEO
提供会社 ネオジャパン
提供形態 クラウド型、パッケージ型
料金(月額) 400円から/ユーザー ※クラウド型の価格
特徴 使いやすさ重視でユーザーから高評価。コストパフォーマンスが高い
おすすめの企業 国内製品が適している会社(特に中小企業)、IT部門がないもしくはIT部門のスキルがあまり高くない会社
公式URL https://www.desknets.com/

 グループウェアの特徴や選び方をご紹介しましたが、実際の現場では単一のグループウェアでどうしてもニーズを満たせないケースがあります。

 特に会社の規模が大きくなるにつれて、グループウェアのデフォルトの機能でカバーできない業務プロセスが必ず次々と出てきます。

 これを解決する方法の1つは前文でも触れた「カスタマイズ」ですが、カスタマイズには時間と費用がかかるものです。

 自分でカスタマイズする以外、「拡張ツール」や「複数製品の組み合わせ」という選択肢もあります。

 「拡張ツール」とは、既存のグループウェアを拡張したり補完したりする製品・サービスで、よくあるのは海外の人気グループウェア(Microsoft 365やGoogle Workspaceなど)に日本特有の需要に応じた機能を追加してくれるものです。

 例えば「rakumo for Google Workspace」という製品は、Google Workspaceを補完し、Google Workspaceにない勤怠管理、経費精算、掲示板などの機能をGoogle Workspaceと連携して提供してくれます。

 このような拡張ツールにより海外グループウェアの弱点を補うことができます。

 「複数製品の組み合わせ」とは、例えばあるグループウェアを導入しながら、経費精算だけ自社のビジネスプロセスに合わないため、他の経費精算製品を導入するといった方法です。

 Microsoft 365に含まれるTeamsをコミュニケーションツールとして導入し、コミュニケーションツール以外の機能を国産グループウェアでカバーする、という組み合わせはかなり一般的となっています。

 複数製品を組み合わせる場合、連携できる製品を選ぶことが重要です。

 国産グループウェアの大半、Microsoft 365やGoogle Workspaceに対応しているので、導入検討の際に留意して評価しましょう。