Excel集計時の統一ルールとは DXに向けて▲やカンマに要注意
表計算のExcel(エクセル)を使って集計するときに、数値にカンマを打ったり、▲(マイナス表記)を入れたりすると計算や並べ替えでエラーが起きやすくなります。総務省が各府省向けにまとめた「統計表における機械判読可能なデータの表記方法の統一ルール」は、Excelを使うことが多い中小企業でも社内ルールづくりにも役立ちます。中小企業に役立つ部分を抜粋してデータ活用に役立つ集計表の作り方を紹介します。
表計算のExcel(エクセル)を使って集計するときに、数値にカンマを打ったり、▲(マイナス表記)を入れたりすると計算や並べ替えでエラーが起きやすくなります。総務省が各府省向けにまとめた「統計表における機械判読可能なデータの表記方法の統一ルール」は、Excelを使うことが多い中小企業でも社内ルールづくりにも役立ちます。中小企業に役立つ部分を抜粋してデータ活用に役立つ集計表の作り方を紹介します。
目次
総務省が公表した機械判読可能なデータの表記方法とは、各府省が政府統計の総合窓口(e-Stat)に掲載する統計表を作るときの統一ルールのことです。
2021年1月以降の公表分から、各府省の準備ができ次第、順次対応していくと説明しています。
経産省が2018年にまとめたDXレポートでは「DXの実行には、データの利活用が鍵となる。そのため、データを蓄積・処理するITシステムが、環境変化、経営・事業の変化に対し、柔軟に、かつスピーディーに対応できることが必要である」と指摘しています。
しかし、そのDXの根幹となるデータの表記方法が統一されていないと、集計も活用もできません。そこで、政府は国民が利用できるよう公開している統計データの統一ルールを作りました。
このルールに沿ってデータを打ち込むことで、加工せずにそのまま分析できるようになります。取引先などとデータを共有するときにも役立ちます。
総務省の統一ルールのなかから、中小企業にも役立つ部分を抜粋して紹介します。
↓ここから続き
まず表のデータ形式は、ほかのパソコンでも利用できるフォーマットであることが必要です。具体的には、Excelの保存形式(ファイル名の最後がxslxなど)や CSV、XML、Open Document Format(.ods)などがよいでしょう。
Excelでは、データを数値として扱いつつ、書式設定で体裁を整えられます。ただし、書式設定で見た目を整えた後にcsvファイルにすると、思わぬ挙動を⽰すことがあるので、印刷を意識した報告書ベースの Excelなのか、データ分析に使うのかで使い分ける必要があるでしょう。
まず、データは1セルに1つのデータだけ入っているかを確認してください。1セルに複数のデータが入っていると、計算や並べ替え、グラフにするときに別途、⼿作業やプログラムを作る手間が増えてしまいます。
全国 | |
---|---|
仕入れ額 | 373(2015年度)、434(2016年度)、549(2017年度)、638(2018年度)、741(2019年度) |
出荷額 | 973(2015年度)、1234(2016年度)、1449(2017年度)、1738(2018年度)、1841(2019年度) |
仕入れ額 | 出荷額 | |
---|---|---|
2015年度 | 373 | 973 |
2016年度 | 434 | 1234 |
2017年度 | 549 | 1449 |
2018年度 | 638 | 1738 |
2019年度 | 741 | 1841 |
数値データに、円、¥、kg、tなどの記号や▲(マイナス)を⼊⼒すると、Excelで、数値ではなく「⽂字列」として扱われてしまうことがあります。
文字列では関数を使って自動計算ができなくなるので注意が必要です。昇順・降順でも正確に並べ替えできなくなることがあります。
単価 | 生産ロット | 前回との差 | |
---|---|---|---|
特殊ねじA | 36.5円 | 1,000 | ▲250 |
特殊ねじB | 28.5円 | 2,000 | 300 |
特殊ねじC | 11.5円 | 3,000 | ▲200 |
特殊ねじD | 9.5円 | 4,000 | 100 |
合計 | 0 | 400 |
単価 | 生産ロット | 前回との差 | |
---|---|---|---|
円 | ロット数 | ||
特殊ねじA | 36.5 | 1000 | -250 |
特殊ねじB | 28.5 | 2000 | 300 |
特殊ねじC | 11.5 | 3000 | -200 |
特殊ねじD | 9.5 | 4000 | 100 |
10000 | -50 |
⾒やすくするための⼯夫として、千円単位を⽰す「,(カンマ)」を⼊⼒している場合も、関数によっては正確に計算できない場合があります。また、csvファイルとして出力したときも、csv はカンマでデータを区切るため、データが思ったようにそろわなくなるおそれがあるので注意が必要です。
セルを結合してしまうと、並べ替えができない、グラフ化ができないほか、範囲選択しにくい、コピーペーストできないなどの問題が起きてしまいます。
機械判読可能なデータとして利⽤するには、一つのデータを、横1⾏、縦1列で⼊⼒する必要があります。
管理職 | 従業員数(上は正社員、下はパート) | |
---|---|---|
第一営業所 | 3 | 15 |
2 |
管理職数 | 正社員数 | パート従業員数 | |
---|---|---|---|
第一営業所 | 3 | 15 | 2 |
スペースや改⾏で体裁を整えると、データが検索しにくくなるだけでなく、複数の表を横断的に利⽤する場合にも⽀障が出ることがあります。
出荷 本数 |
在庫本数 | |
---|---|---|
津 市 | 4 290 | 7 560 |
四日市市 | 3 210 | 6 480 |
伊 勢 市 | 3 820 | 4 380 |
松 阪 市 | 4 080 | 7 750 |
出荷本数 | 在庫本数 | |
---|---|---|
津市 | 4290 | 7560 |
四日市市 | 3210 | 6480 |
伊勢市 | 3820 | 4380 |
松阪市 | 4080 | 7750 |
たとえば、鎮静剤A、B、C……と各項目で「鎮静剤」を省略した場合、人間は推測できますが、並べ替えができないなど集計時に困ることがあります。
鎮静剤A、鎮静剤B、鎮静剤C……と表記しておいた方が良いでしょう。
薬剤名 | 出荷本数 | 単価 |
---|---|---|
鎮静剤A | 429 | 756 |
B | 321 | 648 |
C | 384 | 438 |
D | 408 | 775 |
薬剤名 | 出荷本数 | 単価 |
---|---|---|
鎮静剤A | 429 | 756 |
鎮静剤B | 321 | 648 |
鎮静剤C | 384 | 438 |
鎮静剤D | 408 | 775 |
Excelには図形、グラフ、スマートアートなど「オブジェクト」を挿入することができます。しかし、こうしたオブジェクトはプログラムでは判読できないので削除してしまいましょう。
単位は、データ処理に必須ですが、数字と同じセルに入れてしまうと文字列として扱われ、計算できなくなります。そこで、単位が含まれる項⽬については、別セルにその項⽬の単位を⼊⼒しておくと良いでしょう。
機種依存⽂字は、パソコン環境によっては正しく表⽰されない可能性があるので使わない方が良いでしょう。
プログラムは、年の値の⼤⼩により認識することが多く、和暦表⽰のみではで⻄暦に変換する手間が発生します。そこで、なるべく西暦とし、和暦を使う場合は西暦を併記しましょう。
空⽩列を入れたり、Excelの1シートに複数の表を入れたりすると、データが分断されてしまい、機械判読できない場合があります。そのため、分離はせず、表の印刷や成形を意識した不必要な空⽩セルを追加しないようにしましょう。
導入台数 | 増減数 | 仕入れ単価 | 仕入れ額 | ||
---|---|---|---|---|---|
第一営業所 | 58406 | 11291 | 280 | 12012 | |
第二営業所 | 141183 | 18421 | 350 | 11235 | |
第三営業所 | 243283 | 38152 | 420 | 16128 |
導入台数 | 増減数 | 仕入れ単価 | 仕入れ額 | |
---|---|---|---|---|
第一営業所 | 58406 | 11291 | 280 | 12012 |
第二営業所 | 141183 | 18421 | 350 | 11235 |
第三営業所 | 243283 | 38152 | 420 | 16128 |
(続きは会員登録で読めます)
ツギノジダイに会員登録をすると、記事全文をお読みいただけます。
おすすめ記事をまとめたメールマガジンも受信できます。
おすすめのニュース、取材余話、イベントの優先案内など「ツギノジダイ」を一層お楽しみいただける情報を定期的に配信しています。メルマガを購読したい方は、会員登録をお願いいたします。
朝日インタラクティブが運営する「ツギノジダイ」は、中小企業の経営者や後継者、後を継ごうか迷っている人たちに寄り添うメディアです。さまざまな事業承継の選択肢や必要な基礎知識を紹介します。
さらに会社を継いだ経営者のインタビューや売り上げアップ、経営改革に役立つ事例など、次の時代を勝ち抜くヒントをお届けします。企業が今ある理由は、顧客に選ばれて続けてきたからです。刻々と変化する経営環境に柔軟に対応し、それぞれの強みを生かせば、さらに成長できます。
ツギノジダイは後継者不足という社会課題の解決に向けて、みなさまと一緒に考えていきます。