D2C(DtoC)とは BtoCとの違いから意味やメリットを解説
「D2C」(DtoC/Direct to Consumer)とは、企業が一般消費者に対して直接取引を行うビジネスモデルです。立ち上げから顧客80万人以上へと急成長をとげたD2C事業の実務を取り仕切った筆者が、D2Cのメリットやデメリット、参入時のポイントを紹介します。
「D2C」(DtoC/Direct to Consumer)とは、企業が一般消費者に対して直接取引を行うビジネスモデルです。立ち上げから顧客80万人以上へと急成長をとげたD2C事業の実務を取り仕切った筆者が、D2Cのメリットやデメリット、参入時のポイントを紹介します。
目次
D2Cとは「DtoC」とも書かれ、2015年ころより注目が集まっているビジネスモデルの一種です。
企業が企業に対して取引をする「B2B(BtoB)」、企業と一般消費者で取引をする「B2C(BtoC)」といった従来のビジネスモデルと異なり、自社で企画し製造した商品・サ―ビスを、仲介業者を介さずにエンドユーザーである一般消費者に直接販売することを指します。
近年では工場直送というイメージを持たれていますが、OEM(自社ブランド製品の製造を委託する)もありますし、業務提携・委託が入ることも当然あります。
ポイントは自社が商品開発・販売・顧客へのアフターフォロー・マーケティングまですべてを一貫して決定権を持っているということでしょう。
近年盛り上がりを見せているD2Cですが、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
自社の強みを生かせるかどうかという視点も踏まえ、読み進めてみてください。
メリット | デメリット |
---|---|
仲介業者によるマージンが発生しない | ECサイト構築などのリソースがかかる |
ブランドコンセプトを一貫して伝えられる | 集客のための費用とノウハウが必要 |
顧客と一緒に商品やマーケティングを改良していくことができる | 人材の育成と確保が多岐にわたる |
D2Cのメリットのひとつに、仲介業者への費用が発生しないことがあげられます。
これは単純に小売店や量販店、大手ECモール(Amazonや楽天市場など)に商品を置いてもらうためにかかる中間マージンや販売手数料が発生しないということです。
ネットでのみの販売でしたら店舗を用意する必要もありません。
例えば、オーガニックであることや世界との繋がりをコンセプトにした健康食品を出したとします。
しかし、それがコンセプトととはまったく違う無機質な売り方を店頭でされていたらどうでしょう。せっかくの自社の想いも伝わりにくいですよね。
D2Cでは自社サイトにてコンセプトを自由なデザインで伝えることができますし、商品のパッケージや同梱物、フォローアップのメルマガ、お便り、お客様窓口にいたるまでブランディングすることができます。
言い換えれば「世界観を大切にできる」のです。
これこそがD2Cの醍醐味といえるのではないでしょうか。
直接エンドユーザーと関わることができるため、商品をもつ企業と顧客が一緒になってブランドを作り上げていくことも可能です。
顧客からの「こういう商品がほしい」「ここが使いづらい」などの声を反映させてよりよい商品作りができますし、マーケティングにも生かせます。座談会などリアルで会う機会を設けるのも良いですね。
コミュニケーションを活発にしていくことで自社のファンが育成されます。長期にわたる売上が見込めるのはもちろんのこと、口コミによる顧客の新規開拓にも繋がるでしょう。
メリットにて「仲介業者への費用が発生しない」ということを述べましたが、販売のための費用がかからないわけではありません。
お買い物ができる自社サイトを用意するために費用も工数もかかります。
低コストでネットショップが開設できるECプラットフォーム(BASE、STORES、Shopifyなど)もありますが、運営やクリエイティブの更新などやはりリソースが継続的にかかる部分です。
路面店を作ろうが大手ECモールに出店しようが、それだけでお客様が訪れるわけではありません。集客のための費用やノウハウがやはり必要です。
これはD2Cならではのデメリットというわけではありませんが、より力をいれなければいけない部分でしょう。
ネット広告であれば少額から出すことも可能ですが、売れるためのクリエイティブ(バナーやサイト)作り、広告運用などPDCAをまわしながら自社の商品とマッチする売り方を見つけていかなければなりません。
費用の掛からないSNS(Instagramなど)でプロモーションしていくことは世界観を重視するD2Cとの相性が特に良いですが、急激に露出されるものではなく、コツコツと運営する必要があり時間がかかるものという認識は必要です。
自社が商品開発・販売・顧客へのアフターフォロー・マーケティングまで一貫して行えるのがD2Cの特徴でありメリットである一方、言い換えればすべてを自社の管轄として実行しなければなりません。
売れて出荷数が増えれば、梱包やお電話窓口などの部署ではすぐに人手不足となるでしょう。
また発注予測や広告・プロモーションの運用といった専門的な仕事も規模が大きくなるにつれてバージョンアップ(教育)が必要です。
能動的に動いてもらうことで仕事の質があがる一方、属人的になり、離職されるたびにノウハウの引継ぎが完璧にはできないといった問題も起きがちです。
すべてを自社社員で行うのではなく、拡大に合わせてある程度外注を取り入れつつ運用するべきかもしれません。
D2Cには仲介業者への手数料がかからない、ブランドコンセプトを伝えやすいといったメリットがある一方、ECサイトの構築や人材育成などにコストがかかるなどのデメリットがあります。
では、こうしたD2Cは、どういった事業に向いているのでしょうか。
前提としてD2C=ネットショップ、というわけではありません。
しかし、下記の理由から、ネット上での販売(ECサイト)との相性が良いことは間違いありません。
これらの点も踏まえ、D2Cに向いている事業の一例として下記のようなものがあります。
さらに実際の店頭では少し買いにくい「デリケートゾーン関連」「コンプレックス(育毛剤、口臭剤など)関連」も向いているように思います。
ここで、D2Cの成功事例を2つご紹介します。D2Cを始めるときのイメージ作りの参考にしていただければと思います。
スキンケア商品を取り扱う企業の事例です。
この企業では、新技術により見た目に斬新なパックを開発しました。
薬機法の規制により効果効能はほぼ言えないのですが、そこに抵触しないよう商材の形や使い方をみせることでユーザーの期待感をうまく高められていたのが他の企業とは違うところです。
おそらく商品を開発する時点でどうプロモーションを行っていくか、どんな広告をうつかのマーケティング計画がしっかりなされていたのでしょう。
これは商品開発と販売部門がまったくの別会社ではなかなかできないことです。
華やかで誰もが知っているおしゃれブランド、というわけではないですが、着実に売上をのばし、ある化粧品市場で売上シェア世界一としてギネス世界記録にも認定されています。
もうひとつは、アパレル商品を取り扱っている企業の事例です。
この企業がほかのアパレル企業と違う点は、身長が低い女性限定のショップ作りがなされていること。
153センチ以上の身長の中~高い人からの購入はまずないのですが、低身長の方の悩みや好みをぐっと抑えたブランド作りができています。
また、SNSを活用してコミュニケーションを積極的にとり、顧客が商品を紹介したりと「ファンがファンを育成してくれる」状態をうまく作り上げているのも特徴です。
オープンして2年も立たないうちにInstagramのフォロワーは3万人を超え、十分な集客がそこから得られています。
D2Cを行う際は、次のような工程を経る必要があります。
D2Cを始めるときのポイントは、以上のような各工程をどのように進めていくのか事前に決めておくことです。
以下で、それぞれ詳しく見ていきましょう。
万人受けする商品を作るよりも、自社のこだわりや想いが直球で伝わるような「○○な悩みをもった人にだけ物凄く刺さる」商品を用意しましょう。
分かりやすく伝わりやすいコンセプトであるべきです。
コンセプトを決めるときは、「インパクト✖コンパクト」を常に念頭に置きましょう。この商品がなんであるのかを印象的かつ短い言葉で表現するのです。
5本ほどにコンセプト案を絞ったら「どのコンセプトが一番”欲しい”と思えましたか?」とユーザーにアンケートで聞くのも非常に参考になります。
D2Cはブランドの世界観を伝えられる販売形態が大切という話をしてきましたが、世界観を重視するあまり買いづらいサイトを作っては購買につながりません。
おしゃれであることが世界観がよく出ていることでもないため、ブラッシュアップを都度行うことを前提に、自社内での作業やユーザーの買い物のしやすさも含めた使い勝手のよいサイトを構築しましょう。
例えば、売れ筋商品のランキングやSALEコーナーなど、パッと目を引くカテゴリーが用意されていると初見での離脱が防げます。
Q&Aやお問合せ窓口の案内などを明記することも、購入の背中押しになります。
サイトを構築するときは、ファーストビュー(サイトのトップ画像)を数パターン用意しておきましょう。ファーストビューの画像やキャッチコピーひとつで大きく受注率は変わります。
パターンをいくつか用意したら実際に稼働させ、受注率を比較しながら適宜差し替えを行い、どんなファーストビューが効果的なのか検証することも大切です。
D2Cを始めるときは、集客をどうするかも決めておかなければいけません。
集客にはSNSや広告といった手法があります。SNSなら広告と違い費用がかからないので、取り組みやすいでしょう。
しかし、質の高い投稿を継続していくにはやはり人材も工数も必要です。
そのため、Instagram、Twitter、YouTube、ブログ(SEO)とたくさん手段はありますが、あれもこれもと手を出すのではなく、まずは1点集中(多くても2点集中)からはじめましょう。
SNSを選ぶときは、商品が写真映えするおしゃれな女性向きアイテムならInstagramを、斬新で話題性をもつサービスなら二次拡散を狙ってTwitterを……というようにそれぞれのSNSのユーザーの特性と商品の相性を鑑みて決定します。
受注・発送・お客様窓口など、注文受付後に商品をエンドユーザーに届けるまでに必要な業務のプロセスを、フルフィルメントといいます。
ここを全て外注にだすこともできますが、同梱物の入れ方ひとつとってもブランドコンセプトを伝える場になります。
お客様対応は特に自社の考えが顕著に反映されます。詳細までこだわりをもって自社でルールや方針を決定してください。
自社のファンと関わりをもち、一緒になってより盛り上げていくことがⅮ2Cの醍醐味です。
顧客へのアフターフォロー(メルマガ、会報誌やお礼状などのDM、アウトバウンド)のなかでリピート率・アップセル率・解約率などを管理、分析しながらより売上増加となる鍵を見つけてください。
こうしてブランドの価値をあげていくことで得た売上を、顧客や商品原価に投資をしていけることもD2Cの特徴でしょう。
商品開発から販売まですべてを一貫して行えるというのは自社にとってもやりがいや面白さが広がる手法でしょう。
把握する管轄が広く詳細になる大変さもありますが、様々な視点から改善策を模索することができますし、ブランドとして想いをエンドユーザーに伝えることができます。
共感を呼ぶ商品・コンセプトを作り上げたなら、ぜひ挑戦したいビジネスモデルです。
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