目次

  1. 【ケース別】メールの誤送信が発覚したときの対応
    1. ケース(1) BCCで送るつもりがCCで一斉送信した
    2. ケース(2) 宛先を間違えた
    3. ケース(3) 件名や本文を間違えた
    4. メールの送信を取り消せることも
  2. メール誤送信の対応後にしておきたいこと
    1. 必要に応じて外部機関への報告
    2. メール誤送信した従業員のケア
    3. 原因調査と再発防止策の策定
  3. メール誤送信を防ぐ6つの対策
    1. 対策(1) CCとBCC誤りを防ぐにはメール配信システム
    2. 対策(2) 宛先誤りを防ぐにはオートコンプリート無効化
    3. 対策(3) 件名やメール本文誤りを防ぐにはダブルチェック
    4. 対策(4) 添付ファイル誤りを防ぐにはオンラインストレージ
    5. 対策(5) メール送信をあえて遅延させるのも有効
    6. 対策(6) メールではなくビジネスチャットであれば削除可能
  4. 仕組み化で、リスク低減と影響の最小化を目指すことが大切

 社外宛のメールを誤って送信した場合に、まず最初に行うべきは、上司への報告です。これはどのケースにおいても共通して言えます。

 「この程度の誤送信なら報告しなくてもいいかな」と自己判断せず、必ず報告し、判断を仰ぎましょう。大なり小なり、会社全体への信頼に関わることだからです。

 次に、謝罪です。謝罪の手段は、訪問、電話、メールがあります。誤送信によって相手に与えた損失が大きい場合は訪問、軽微な場合はメールが良いでしょう。

 ただ、コロナ禍において訪問を嫌う企業もありますし、電話を嫌がる担当者もいます。誤送信によって迷惑をかけているのに、謝罪によってさらに迷惑をかけないよう、気を遣って手段を選ぶことを心がけてください。

 また、謝罪メールを送信する場合は、必ず複数人でチェックした上で送信するようにしましょう。謝罪メールを誤送信したら、目も当てられませんので。

 それでは、ケース別に対応方法を紹介します。

 メール作成画面では、メールアドレスを入力する欄は3つあります。TO(宛先)、CC、BCCです。

 メールを受信した人は、BCCに入っているメールアドレスは見えませんが、CCに入っているメールアドレスは全て見えます。

 そのため、例えば顧客のメールアドレスを一斉にCCに入れると、顧客同士、お互いのメールアドレスが丸見えになります。

 このケースでは、宛先やメールの内容は正しいものの、一斉送信したメールアドレスがお互いに丸見えであることが問題となります。

 ですので、CCに含まれているメールアドレス全員に対して、個別に謝罪すると共に、メールの削除を依頼してください。

 メールが残り続けると、いつまでも他人のメールアドレスが閲覧可能な状態になるためです。

 謝罪メール文のサンプルを以下へ載せますので、参考にしてください。

謝罪メール文のサンプル
(BCCで送るつもりがCCで一斉送信してしまったことを、個別に謝罪するとき)

いつもお世話になっております。◯◯です。
先ほどお送りした以下のメールにつきまして、本来BCCでお送りすべきところを、
誤ってCCでお送りしてしまいました。大変申し訳ございません。

 メール送信日時: ◯月◯日◯時◯分
 メール件名: ◯◯◯◯

誠に勝手なお願いで恐縮ですが、メールの破棄をお願いいたします。
今後、このようなことが起こらないよう、再発防止に取り組んで参ります。

何卒、よろしくお願いいたします。

 このケースでは、送信しようとしていた宛先とは異なる宛先へメールを送信したことにより、情報漏えいの可能性があります。

 例えば、A社へ送信しようとしたメールをB社へ送信した場合、軽微な内容であれば、B社に対してのみ謝罪すれば良いです。これは、余計なメールを送ったことに対する謝罪です。

 しかし、もしA社の情報をB社へ送ったとしたら、A社とB社の両方への謝罪が望ましい場合があります。A社の立場で考えると、「なぜ他社が知り得ない情報をB社が知っているんだ」となるためです。

 送った内容によりますので、対応については社内でよく検討してください。

 基本的にはケース(1)と同じ謝罪メール文で良いですが、もし個人情報や重要な情報を送信した場合には、以下のように、メールを削除した旨の返信をもらうのも有効です。

謝罪メール文のサンプル
(個人情報や重要な情報をA社ではなくB社に送ってしまったことを、B社に謝罪するとき)

いつもお世話になっております。◯◯です。
先ほどお送りした以下のメールは、宛先誤りでございました。
大変申し訳ございません。

 メール送信日時: ◯月◯日◯時◯分
 メール件名: ◯◯◯◯

誠に勝手なお願いで恐縮ですが、メールを破棄していただくと共に、
破棄した旨の返信をいただけないでしょうか。

ご迷惑をおかけした上に、お手数をおかけして大変申し訳ございません。
今後、このようなことが起こらないよう、再発防止に取り組んで参ります。

何卒、よろしくお願いいたします。

 メールの宛先は正しいが、件名や本文を間違えた場合、その間違えた内容によって対応が変わります。

 もしも、文面の貼り付けミス等で、宛先とは異なる社名をメールに記載してしまった場合は、ケース(1)や(2)の対応を参考にしてください。

 情報漏えいにつながらない軽微な誤りであれば、訂正メールを送れば良いです。

 訂正メール文のサンプルを以下へ載せますので、参考にしてください。

謝罪メール文のサンプル
(件名や本文を間違えてしまい、相手に訂正メールを送るとき)

いつもお世話になっております。◯◯です。
先ほどお送りしたメールに、一部誤りがございました。
お詫び申し上げますとともに、以下に訂正させていただきます。

 メール送信日時: ◯月◯日◯時◯分
 メール件名: ◯◯◯◯
 修正内容: 
  【誤】△△
  【正】◯◯

何卒、よろしくお願いいたします。

ケース(4) 添付するファイルを間違えた

 誤って添付したファイルの内容によって、対応が変わります。漏えいしても問題ないファイルであれば、ケース(1)のように謝罪と削除依頼のメールを送りましょう。

 もしも、個人情報や重要な情報を送った場合は、ケース(2)のように、謝罪と削除した旨の返信をもらうようにしましょう。

 Microsoft365(Office365)のメールを利用している場合、社内宛に送信したメールは、相手が未開封であれば削除が可能です。

 私は過去に一度だけこの機能を使っているところを見たことがあります。会社で自己評価を記入したExcelファイルを人事部へ提出するつもりが、全社員のメーリングリストへ送信してしまったときに使われていました。

 具体的な方法を知りたい場合は、以下をご確認ください。

 https://support.microsoft.com/ja-jp/office/送信したメッセージを取り消す-または置き換える-35027f88-d655-4554-b4f8-6c0729a723a0

 謝罪対応が一段落した後に、やっておきたいことを3つお伝えします。つい後回しにしがちなことばかりなので、メール誤送信の熱が冷める前に行うのがお勧めです。

 もしメール誤送信によって個人情報が漏えいしていた場合、個人情報保護委員会への報告が必要です。報告が不要な場合もありますので、以下をご確認ください。

 https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/leakAction/leakAction_detail/

 メールを誤送信したこと自体に、従業員はショックを受けるものです。さらに、個人情報の流出等、その影響が大きい場合は、ニュースやSNSに取り上げられることもあり、一層ショックを受けます。

 そこへ追い打ちをかけるように感情的に怒ると、さらに追い込むことになりますので注意してください。

 「誤送信を防ぐ仕組みがなかったことが問題」という認識を持ち、誤送信した従業員には優しく接するようにしましょう。

 私自身、メール誤送信ではないのですが、大きな問題を起こしたときに、いつもは厳しい上司の上司から優しくされて、救われたことがあります。

 「誤送信は、本人の不注意から起こるもの」とお考えの方もいらっしゃると思います。たしかにそれもありますが、原因が存在する場合もあります。

 CCとBCCの違いを知らなかったのであれば、社内教育が必要ですし、使い慣れないメールソフトだったのが原因であれば、練習が必要です。

 原因を元に、対策を練りましょう。

 メール誤送信には、宛先誤りや添付ファイル誤り等、様々なケースがあります。まだ起こっていないケースでも、今後起こる可能性があります。どのような対策があるのか、6つ紹介します。

 CCとBCCを間違えて困るのは、一斉メール送信の場合が多いです。そんなときは、メール配信システムがお勧めです。一斉メール送信のために作られたシステムなので、ミスしにくいようになっています。

 また、メール配信システムによっては、メールアドレスをBCCに入れた一斉メール送信ではなく、1通ずつメールを送信する機能があり、より安全です。

 メール配信システムについては、以下をご覧ください。

 宛先誤りの原因で多いのが「オートコンプリート」機能です。例えば、メールの宛先欄で「田中」と打って自動的にメールアドレスが入力されたと思ったら、別の田中さんだったという具合いです。

 オートコンプリート機能はOffにするのがお勧めです。総務省のホームページでも、そう案内されています。ぜひ一度ご確認ください。

 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/security/business/staff/04.html

 さらにお勧めなのが、アドレス帳に「社名_氏名」と登録することです。例えば「A株式会社_田中様」といった感じです。社名を入れることによって、他社へ誤って送信するミスを減らすことができます。

 件名やメール本文の記載誤りは難しく、メール配信システムやテンプレートを使っても、誤った文面で送信されたメールを見ます。重要なメールについては、複数人でチェックするのが良いでしょう。

 メールに添付したファイルは、送信を取り消すことができません。誤送信で届いた相手に削除を依頼したにも関わらず削除しない場合、相手の手元に残り続けることになります。

 そこで便利なのが、オンラインストレージです。クラウド上にアップロードしたファイルを、相手にダウンロードしてもらう方式です。

 もし誤ったファイルをアップロードしたとしても、相手がダウンロードする前に削除すれば情報漏えいになりません。

 また、オンラインストレージの設定により、ダウンロードを禁止して、クラウド上でファイルを閲覧させるようにすれば、ファイルの一人歩きを防ぐことが可能です。

 オンラインストレージについては、以下をご覧ください。

 「メールの添付ファイルにパスワードをかければ良い」そう思われている方もいるかと思います。確かに、誤送信の観点で言えば有効です。

 ただし、パスワードをかけた添付ファイルはセキュリティチェックをすり抜けるので、マルウェア感染の危険性があります。

 そのため、ファイルの受け渡しは、メール添付ではなく、オンラインストレージを利用する企業が増えてきました。民間企業だけでなく、文部科学省においてもそのような発表がなされ、話題になりました。

 https://www.mext.go.jp/a_menu/other/mext_01727.html

 メールの送信ボタンを押した瞬間に「しまった、間違えた!」と思ったことはありませんか?

 メールソフトによっては、送信ボタンを押した後に、数十秒〜1分程度、送信を遅らせる機能があります。これを設定すれば、送信直後であれば取り消すことが可能になります。

 TeamsやSlack、Chatworkといったビジネスチャットツールでは、送信したコメントを編集したり削除したりすることができます。

 最近は、他社とのやり取りでもチャットを利用する機会が増えてきました。誤送信のリスクを減らすために、チャットの利用を提案するのも良いでしょう。

 ビジネスチャットツールについては、以下をご覧ください。

 メール誤送信対策に100%はありません。高価なシステムを導入したり、複数人でチェックしたりしても、誤送信の可能性は残ります。

 大切なのは、誤送信しにくい仕組みを作り、万が一誤送信したとしても、影響を最小限に抑える仕組みと体制を作ることです。

 紹介したビジネスチャットやオンラインストレージの利用は、送信取り消しが可能なので、影響を最小限に抑えるのに効果的です。

 また、有事の際の社内連携フローや、迅速な謝罪対応を行う体制を整備しておくと、影響を一層小さく留めることができます。

 誤送信の原因を不注意と決めつけず、真摯に原因と向き合い、仕組み化でリスク低減と影響の最小化を目指すことが大切です。