目次

  1. プラスチック資源循環促進法が作られた背景
  2. 3R+Renewableとは
  3. プラスチック資源循環促進法とは
    1. 特定プラスチック使用製品の使用の合理化
    2. 製造・販売事業者等による自主回収・再資源化
    3. 排出事業者による排出の抑制・再資源化

 プラスチックは、丈夫で軽くて安く、ペットボトルをはじめ身の回りの製品にたくさん使われています。しかし、きちんと捨てられず川や海に流出すると、半永久的に分解されないため、生態系に大きな影響が与えることが心配されています。

河川敷にたまったマイクロプラスチック(東京都江戸川区、朝日新聞のデータベースから)

 紫外線や波の力などで細かく砕かれた「マイクロプラスチック」は、すでに私たちの食べ物にも含まれていることがわかっています。

 こうした海洋プラスチックごみ問題をはじめ、プラスチックが関係する地球環境問題に対応するため、日本は次のような国際的な約束をしています。

  • 大阪ブルー・オーシャン・ビジョン……2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減
  • プラスチック資源循環戦略……2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出抑制など
  • 2050年カーボンニュートラル……2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする

 こうしたなか、サーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行を推し進めるため、3R+Renewableを原則としたプラスチック資源循環促進法が作られました。

 3R+Renewableとは、次のような考え方のことです。

回避可能なプラスチックの使用は合理化(Reduce・Reuse)した上で、技術水準、安全性、機能性、経済的な状況等にも配慮しつつ、必要不可欠な使用については、より持続可能性が高まることを前提に再生可能性の観点から再生素材や再生可能資源(紙・バイオマスプラスチック等)に適切に切り替え(Renewable)、徹底したリサイクルを実施し(Recycle)、それが難しい場合には熱回収によるエネルギー利用を図ることで、プラスチックのライフサイクル全体を通じて資源循環を促進していきます。

プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(環境省の特設サイト)

 プラスチック資源循環促進法とは、2022年4月1日に施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の略称です。

 環境省の特設サイトによると、プラスチックのライフサイクル全体において関わりのある事業者、自治体、消費者が連携しながら資源循環に向けた取り組みを求める法律です。

 このうち事業者は、次の4つの行動が求められます。

  1. 設計指針に則してプラスチック製品を設計する
  2. 特定プラスチック使用製品の使用を合理化するために業種や業態に応じて有効な取り組みを選び、廃棄物の排出を抑制する
  3. 自ら製造・販売したプラスチック製品の自主回収・再資源化を率先して行う
  4. 排出事業者としてプラスチック産業廃棄物などの排出・再資源化をする

 それでは、具体的にどのような対応が必要かを整理します。

 特定プラスチック使用製品とは、簡単に言うと、無料で配られるスプーンやストローなど12品目の使い捨てプラスチック製品を指します。対象製品・業種別に整理しました。

対象製品 対象業種
フォーク
スプーン
テーブルナイフ
マドラー
飲料用ストロー
各種商品小売業(無店舗を含む)
飲食料品小売業(野菜・果実小売業、食肉小売業、鮮魚小売業及び酒小売業を除き、無店舗のものを含む)
宿泊業
飲食店
持ち帰り・配達飲食サービス業
ヘアブラシ
くし
かみそり
シャワーキャップ
歯ブラシ
宿泊業
衣類用ハンガー
衣類用カバー
各種商品小売業(無店舗を含む)
洗濯業

 この12品目について廃棄物の排出抑制の取り組みや、排出抑制に向けた消費者への情報提供が必要になります。ただし、消費者に有償で提供することまでは求めていません。詳しくは、環境省の特設サイトで確認してください。

 国は、特定プラスチック使用製品を提供している事業者に必要な指導・助言をします。前年度に提供した特定プラスチック使用製品の量が5t以上である事業者の取り組みが著しく不十分な場合には勧告・公表・命令をすることがあります。

 命令にも違反した場合は、50万円以下の罰金となる場合もあります。 

 プラスチックの資源循環を進めるために、プラスチック使用製品の製造、販売または提供する事業者が、自治体や消費者と協力して積極的に自主回収・再資源化に取り組むことが期待されています。

自主回収・再資源化のスキーム(環境省の特設サイトから引用https://plastic-circulation.env.go.jp/about/pro/recycle)

 製造・販売事業者等が「自主回収・再資源化事業計画」を作成し、国の認定を受けることで、廃棄物処理法にもとづく許可がなくても、使用済プラスチック使用製品の自主回収・再資源化事業を行うことができます。

 ただし、この取り組みは義務ではなく任意の制度です。

 ここでいう排出事業者には、事務所、工場、店舗など事業をする多くの事業者が当てはまりま。すでにプラスチックの廃棄物を適正に処理する責任がありますが、新しい法律は、さらに踏み込んでプラスチック使用製品産業廃棄物などの排出の抑制・再資源化等を求めています。

 前年度におけるプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量が250t以上である排出事業者は、プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制・再資源化等に関する目標を定め、目標を達成するための取り組みを計画的に行うことが求められます。

 取り組みが著しく不十分な場合には勧告・公表・命令の対象になる場合があります。 詳細は、環境省の特設サイトで確認してください。