目次

  1. ビール購入代金の3割を寄付
  2. ブルワリー醸造家が仕事を失う
  3. 戦禍はコロナの比ではない

 「UKRAINE YELL PROJECT」は、コエドブルワリーの公式通販サイトで対象商品のビールセットを購入すれば、代金の30%が赤十字社の「ウクライナ人道危機救援金」に寄付される仕組みです。サイト内から一口100円の救援金を送ることもできます。

 朝霧さんは婿養子として入社してから、クラフトビールを世界に展開。2007年には、サツマイモを使ったクラフトビール「紅赤」と、ピルスナースタイルの「瑠璃」が、国際的な酒類・食品のコンテスト「モンドセレクション」で最高金賞に輝きました。販路は現在、世界25カ国に広がっています。

ウクライナへのチャリティーを企画した朝霧重治さん

 朝霧さんは18年、ウクライナの首都キーウ(キエフ)のブルワリー「Varvar Brew」で広報・企画を担当するスヴィタンコヴァ・ラナさんと出会いました。

 ラトビア共和国のビアバーで開かれたコエドビールを紹介するイベント「COEDOタップオーバー」で意気投合。「ラナさんは英語も上手で、フレンドリーで聡明な方という印象を受けました」と言います。ラナさんはその後、来日して同社の「コエドビール祭り」にも参加しました。

 22年2月、ロシアによるウクライナ侵攻で、クラフトビールの醸造所も大打撃を受けました。ラナさんたちはクラフトビールのコミュニティーに支援を求めるチャリティー・ファンドレイズ「Drinkers For Ukraine」を企画しました。

 ラナさんから寄せられたメッセージによると、ウクライナのブルワリーの醸造家たちの多くは、ロシアからの攻撃で仕事を失い、生計を立てられなくなっています。

 しかし、そんな醸造家たちが「Ukrainian Anti-Imperial Stout RESIST」というビールのレシピを公開しました。今回のファンドレイズでは、このビールを世界中のブルワリーで製造して利益を赤十字に寄付するように呼び掛けています。

 また、ブルワリーや限定ビールのコレクターなどを招待したオークションも企画し、 入札金は全て赤十字に寄付されます。

 時差や距離的な制約もあり、コエドブルワリーは現時点でファンドレイズへの参加予定はありませんが、今後は企画に加わる可能性もあるといいます。

 今回、同社独自のチャリティー企画として立ち上げたのが「UKRAINE YELL PROJECT」になります。

「UKRAINE YELL PROJECT」のロゴマーク(コエドブルワリー提供)

 朝霧さんはウクライナ侵攻後、ラナさんとメールで連絡を取ることができました。

 「ラナさんは夫の仕事の関係でスイスに滞在していますが、祖国やブルワリーのメンバー、同朋のことが心配で、怒りや無力感を覚えています。私からのメールに勇気をもらったという返事があり、その後、チャリティーファンドレイズを立案したという連絡をいただきました」

 朝霧さんは一日も早い平和を願いながら、自社のプロジェクトにかける思いについて、次のようにコメントしています。

 「クラフトビール界はオープンで共創的な雰囲気の業界です。突然の戦禍はコロナの比ではありません。私たちには想像を絶する事態に、ただ戦争の終結を願うばかりです」