目次

  1. 改正電子帳簿保存法の運用方法の決め方
  2. 電帳法に対応した業務フローで考慮すべきこと
  3. 登録漏れを防ぐには
  4. 事務処理規程の作り方 
    1. 第6条 対象となるデータ
    2. 第9条 訂正削除を行う場合
  5. 問い合わせ先
  6. おわりに

 2022年(令和4年)1月の電子帳簿保存法の改正により、電子取引をした場合は、電子データの形での保存が義務となりました。ただし、電子保存の義務化について、企業の準備が進んでいないこともあり、2023年12月末まで2年間猶予されることになりました。

 前回記事「改正電子帳簿保存法の保管先をどう決める?棚卸しと選定のポイント」では、改正電子帳簿保存法に対応して書類の保管先の検討について解説しました。今回のテーマは、具体的な運用方法の検討と運用に合わせた事務処理規程の準備です。

Q:業務フローを検討するうえで考慮すべきことは?

 現在の業務フローをベースにいつ、誰が、どのように保管・確認をするのか、業務フローを書いて検討します。ここでまず決めるべきは、一連の取引の中で発生する保管対象の書類を「それぞれ独立した状態で保管する」のか「同一の取引に関する書類として関連付けて保管する」のかという点です。

 「同一の取引に関する書類として関連付けて保管する」とは、例えば「電子帳簿保存法対応システムの導入」といった取引を表わす概念を設け、関連する見積書、注文書、契約書等は取引に紐づける形で保管するという方式です。ファイルサーバで運用する場合は取引ごとにフォルダ作成し、該当するフォルダに書類を保存するというイメージになります。

取引で発生する書類の例

 書類をそれぞれ独立して保管する場合は、発生の都度書類を登録すれば良いので運用はシンプルになります。しかし、抜け漏れなく登録されているか確認する際もファイル単位での検索となるため、チェックは困難になります。

書類をそれぞれ独立して保管する場合

 一方、書類を関連付けて登録する場合は、登録時にファイルを関連付ける手間は発生しますが、関連するファイルをまとめて表示する事が出来れば抜け漏れの確認は容易になります。

書類を関連付けて保管する場合

 この方針が決まると、いつ(書類を受領したタイミングか、請求書受領時など一連の取引が終わったタイミングか)、誰が(書類を受領したスタッフか、経理等のスタッフか)、どのように(メールやストレージからの自動取込・ファイルを選択してアップロードか)登録や確認を行うのかといった 検討が進めやすくなります。

 業務フローは利用するシステムの機能等の影響も受けるため、まずはあるべき業務フローを定義し、利用するシステムに合わせて調整しながら自社に合わせていきましょう。

Q:登録漏れがないように運用する方法は?

 選択肢は大きく二つになります。

 一つ目の選択肢は、経費精算システムや請求管理システムなどの業務特化型のサービスを利用し、領収書が添付されていないと経費精算が申請できない、請求書が添付されていないと支払いが行われないなど、必要な書類が正しく処理されていないと後続の業務が進まないようにシステムで制限をかける方法です。こちらが最も確実に抜け漏れを防ぐ方法といえるでしょう。

 二つ目の選択肢は運用の中で確認のステップを入れるという方法です。例えば、発注のタイミングで見積書が保管されている事を確認する、請求書が届いて取引が完了するときに関連する一連の書類が保管されているいった運用になります。

 利用しているシステムによって可能な運用も変わってきますが、重要書類については上記のいずれかの方法で抜け漏れを防いで運用をしましょう。

 一方で抜け漏れなく運用するのが難しいのは、見積書は受領したけど発注には至らなかったものなど後続業務が無い一般書類です。これらについては、連載第二回の記事「改正電子帳簿保存法に対応する保管書類どう決める?ゼロリスクでなく現実解」で触れたように、保管対象にしない/保管対象にしたとしても抜け漏れは許容するといった割り切りが必要になります。

Q:事務処理規程はどのように用意すればよいでしょうか?

 一通りの運用の整理がついたら自社の対応方針を「事務処理規程」として残しておきましょう。前回触れた「正確性の担保」の4つの対応方針次第では、事務処理規程は必須ではない場合もありますが、「何の書類」を「どこ」「誰が」「いつ」保管するかというルールは何らかの形で明文化しておくことをお勧めします。

 事務処理規程は、国税庁からサンプルが提供されていますので、こちらにある「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」をベースに、自社に合わせて変更していくと良いでしょう。

 今回は「法人の例」をベースに解説しますが、個人事業主の場合は「個人事業者の例」をベースにしてください。

 サンプルの内容を確認しつつ、必要な箇所だけ修正することであまり悩むこともなく進んでいけると思いますが「第6条 対象となるデータ」「第9条 訂正削除を行う場合」については相談をいただく事もあるため少し補足します。

 サンプルの「第6条 対象となるデータ」では下記のように対象データが記載されています。複数の書類を同じ方法で保管する前提にはなっているため、書類ごとに保管先や運用が分かれるような場合にどう記載すれば良いかというご相談を頂く事があります。

サンプルに記載されている内容

(対象となるデータ)

第6条 保存する取引関係情報は以下のとおりとする。

一 見積依頼情報

二 見積回答情報

三 確定注文情報

四 注文請け情報

五 納品情報

六 支払情報

七 ▲▲

 社内の規程ですので、サンプルの内容に縛られる事なく、必要な情報を分かりやすく記載しておきましょう。例えば、下記のように対象の書類と保存先を表にするといった方法もお勧めです。

事務処理規程の記載例

(対象となるデータ・保存先)

第6条 保存する取引関係情報とその保存先は以下のとおりとする。

書類の名称・内容 保存先
契約書 電子契約システム(***)のタイムスタンプ付与方式で運用する
領収書 経費精算システム(***)のタイムスタンプ付与方式で運用する
請求書 自社のファイルサーバ上で一括ダウンロード可能にし、ファイル名で取引先名、金額、日付が分かるようにして運用する
…… ……

 サンプルの「第9条 訂正削除を行う場合」には、訂正・削除前に「取引情報訂正・削除申請書」を作成して訂正前に承認を行い、訂正後に「取引情報訂正・削除完了報告書」を作成するという運用が記載されています。

サンプルに記載されている訂正・削除時の業務フロー(要約)

  1. 処理責任者が「取引情報訂正・削除申請書」を作成し、管理責任者へ提出する
  2. 管理責任者が内容を確認し正当な理由がある場合に承認する
  3. 承認後に処理責任者が処理を行う
  4. 処理後に処理責任者が「取引情報訂正・削除完了報告書」を作成し管理責任者へ提出する
  5. 「取引情報訂正・削除申請書」「取引情報訂正・削除完了報告書」を整然とした形で保管する

 上記の内容通りに運用しようとすると、業務負荷の高い状態になってしまいますので、こちらもサンプルの内容を参考にしながら修正します。

 「正確性の担保」の観点から、訂正・削除の履歴は残し、訂正内容の確認が可能な状態を作る事は必須と考えておいた方が良いですが、システムを使うのか、申請書を使うのか、承認を必要とするのか、完了報告書まで用意するのかといった部分については、自社の運用に合わせて記載しましょう。

 例えば、変更履歴を自動で記録するシステムを利用し、訂正時に承認を得るといった運用を行う場合は下記のような記載になります。

訂正・削除時の記載例

(訂正削除を行う場合)

第9条 保存する取引関係情報を訂正または削除する場合は、下記の内容を記載もしくは利用サービスで自動記録する。

 (ア) 対象の情報を識別するID

 (イ) 訂正・削除日付

 (ウ) 訂正内容

 (エ) 処理担当者名

2 訂正の申請を受けた承認者は、正当な理由があると認める場合のみ承認する。

3 承認者が承認した場合、訂正の内容を確定情報として扱うものとする。

4 事後に訂正削除履歴の確認作業が行えるよう整然とした形で訂正削除の対象となった取引データの保存期間が満了するまで保存する。

Q:要件の解釈や運用の検討で迷った場合はどこを確認・相談すれば良いでしょうか?

 電子帳簿保存法の概要については記事やセミナー、動画コンテンツで理解が進められると思いますが、細かい要件や解釈について確認したい場合は、国税庁が公開している「電子帳簿保存法 一問一答」が一次情報になります。こちらを参照してもわからない場合は、各国税局の電話相談センターに電話しての問い合わせも可能です。

 また、個別の運用相談については、顧問税理士や導入サポートのサービスなどを提供している事業者へ問い合わせてみると良いでしょう。

 この連載では、全四回で電子帳簿保存法対応の進め方について解説しました。書類の保管という、付加価値を生まない業務に使われる皆さんの貴重なリソースの削減に少しでもお役に立てれば幸いです。