目次

  1. 政府の節電協力呼びかけ 燃料価格高騰も一因
  2. 節電要請いつからいつまで?
  3. 予備率とは 東北電力・東京電力管内で厳しい見通し
  4. 電力需給対策、発電所の再稼働や節電プログラムも
  5. 省エネ補助金とは 企業向けに政府が強化
    1. 先進事業
    2. オーダーメイド事業
    3. 指定設備導入事業
    4. エネルギー需要最適化対策事業
  6. 省エネ対策・再生可能エネルギー導入の補助金続々

 政府は11月1日、需給ひっ迫時への備えをしつつ、無理のない範囲での節電への協力を求めました。経済産業省の公式サイトによると、節電への協力呼びかけに至った経緯は次の通りです。

今冬の電力需給は、全国で瞬間的な需要変動に対応するために必要とされる予備率3%以上を確保しているものの、厳しい見通しです。また、大規模な発電所のトラブルが発生した場合、安定供給ができない可能性が懸念されます。加えて、ロシアのウクライナ侵略により、国際的な燃料価格は引き続き高い水準で推移しており、燃料を取り巻く情勢は予断を許さない状況です。

省エネポータルサイト(経済産業省資源エネルギー庁)

 節電要請は、2022年12月1日~2023年3月31日までです。数値目標は設けずに終日、無理のない範囲での節電協力を呼びかけています。

 電力の予備率とは、電力需要に対して供給余力の余裕がどの程度あるかを示したものです。経済産業省によると、10 年に一度の厳寒を想定した需要に対して安定供給に最低限必要な予備率は3%だと言われています。予備率の見通しは次の通りです。

12月 2023年1月 2月 3月
北海道 14.4% 7.9% 8.1% 12.1%
東北・東京 9.2% 4.1% 4.9% 11.5%
中部・北陸・関西・中国・四国・九州 7.4% 5.6% 6.5%
沖縄 44.5% 33.1% 34.4% 56.6%

 ただし、2022年夏は酷暑のため、3エリアで想定した最大需要電力を上回ったことに加え、ロシアのウクライナ侵略が続くなかで燃料が安定的に確保できないリスクがあり「国民全体で一層の省エネ・節電に取り組まなければ、安定供給に支障が生じる恐れがある」として、全国を対象に節電への協力を呼びかけています。

 予備率3%を上回るため、休止中の火力発電所の再稼働や原発の工事の前倒しに取り組みました。そのほか、電力需要を抑える対策としても次のような取り組みをするといいます。

  • 無理のない範囲での節電の協力の呼びかけ
  • 企業・家庭向けの省エネ対策の強化
  • 節電プログラムなどを通じた対価支払型ディマンド・リスポンス(DR)の普及拡大
  • 産業界、自治体等と連携した節電体制の構築
  • 前々日に電力需給ひっ迫準備情報を発信するなど節電要請の高度化
  • セーフティネットとしての計画停電の準備

 このうち「省エネ対策の強化」について詳しく紹介します。

 政府は電力需給に関する検討会合は「企業の複数年にわたる投資計画に対応する形で今後3年間で集中的に支援するとともに、家庭部門の省エネを強力に推進するため、住宅の断熱性向上に資する改修や高効率給湯器の導入などの住宅省エネ化への支援を強化する」と掲げています。

 具体的には、中小企業向けに、省エネ設備投資補助金に複数年の投資計画に切れ目なく対応できる新たな仕組みを創設するといいます。ただし、事業所の省エネ率などの基準を要件とし、対象設備は省エネ法トップランナー基準を満たすものに限定することが検討されています。

2022年度補正予算案に盛り込まれた省エネルギー設備への更新を促進するための補助金

 2022年度補正予算案の「省エネルギー設備への更新を促進するための補助金」(500億円規模)によると、事業概要は次の通りです。

 工場・事業場において大幅な省エネを実現できる先進的な設備の導入を支援する事業です。補助率は、中小企業で2/3、大企業で1/2。補助上限は15億円(非化石転換設備の場合は20億円)となる見込みです。

 個別設計が必要な特注設備等の導入を含む設備更新やプロセス改修等を行う省エネ取組に対して支援をする事業です。補助率は中小企業で1/2、大企業で1/3の予定ですが、資回収年数7年未満の事業の場合は、中小企業が1/3、大企業で1/4となる見込みです。上限額は15億円(非化石転換設備の場合は20億円)です。

 省エネ性能の高いユーティリティ設備、生産設備等への更新を支援する事業です。補助率は1/3、上限額は1億円の見込みです。

 エネマネ事業者などと共同で作成した計画に基づくEMS(エネルギーマネジメントシステム)制御や高効率設備の導入、運用改善を行うことで効率的・効果的な省エネの取り組みを支援します。補助率は中小企業で1/2、大企業で1/3、補助上限は1億円となる予定です。

 このほかにも省エネ対策・再生可能エネルギー導入の補助金が続々と2022年度補正予算案に盛り込まれています。ものづくり補助金では、省エネ対策を推進するためグリーン枠を強化する予定です。

 また、工場・ビルの省エネ診断の実施やそれを踏まえた運用改善等の提案にかかる費用を補助することで中小企業の省エネを後押しする支援(20億円規模)が2022年度補正予算案に盛り込まれました。

 さらに民間事業者が太陽光発電設備及び再生可能エネルギー併設型の蓄電池を導入するための機器購入を補助する事業(255億円規模)も2022年度補正予算案に盛り込まれました。

 たとえば、「需要家主導型太陽光発電導入支援」として、次のような条件の時に支援があります。

  • 2MW以上の新規設置案件であること
  • FIT/FIPを活用しない、自己託送ではないこと
  • 需要家と8年以上の受電契約等を結ぶこと

 上記に加えて、蓄電池を併設することで、太陽光発電を最大限に活用するモデルについても支援がある予定です。