企業向け省エネ補助金、政府が強化 冬の節電協力は7年ぶり呼びかけ
2022年冬の電力需給が厳しい状況にあるとして、政府は11月1日、家庭や企業に節電への協力を呼びかけました。ただし、数値目標は設けていません。こうしたなか、事業者向けに省エネ補助金を強化し、省エネ診断も拡充する方針を2022年度補正予算案に盛り込みました。
2022年冬の電力需給が厳しい状況にあるとして、政府は11月1日、家庭や企業に節電への協力を呼びかけました。ただし、数値目標は設けていません。こうしたなか、事業者向けに省エネ補助金を強化し、省エネ診断も拡充する方針を2022年度補正予算案に盛り込みました。
目次
政府は11月1日、需給ひっ迫時への備えをしつつ、無理のない範囲での節電への協力を求めました。経済産業省の公式サイトによると、節電への協力呼びかけに至った経緯は次の通りです。
今冬の電力需給は、全国で瞬間的な需要変動に対応するために必要とされる予備率3%以上を確保しているものの、厳しい見通しです。また、大規模な発電所のトラブルが発生した場合、安定供給ができない可能性が懸念されます。加えて、ロシアのウクライナ侵略により、国際的な燃料価格は引き続き高い水準で推移しており、燃料を取り巻く情勢は予断を許さない状況です。
省エネポータルサイト(経済産業省資源エネルギー庁)
節電要請は、2022年12月1日~2023年3月31日までです。数値目標は設けずに終日、無理のない範囲での節電協力を呼びかけています。
電力の予備率とは、電力需要に対して供給余力の余裕がどの程度あるかを示したものです。経済産業省によると、10 年に一度の厳寒を想定した需要に対して安定供給に最低限必要な予備率は3%だと言われています。予備率の見通しは次の通りです。
12月 | 2023年1月 | 2月 | 3月 | |
---|---|---|---|---|
北海道 | 14.4% | 7.9% | 8.1% | 12.1% |
東北・東京 | 9.2% | 4.1% | 4.9% | 11.5% |
中部・北陸・関西・中国・四国・九州 | 7.4% | 5.6% | 6.5% | |
沖縄 | 44.5% | 33.1% | 34.4% | 56.6% |
ただし、2022年夏は酷暑のため、3エリアで想定した最大需要電力を上回ったことに加え、ロシアのウクライナ侵略が続くなかで燃料が安定的に確保できないリスクがあり「国民全体で一層の省エネ・節電に取り組まなければ、安定供給に支障が生じる恐れがある」として、全国を対象に節電への協力を呼びかけています。
予備率3%を上回るため、休止中の火力発電所の再稼働や原発の工事の前倒しに取り組みました。そのほか、電力需要を抑える対策としても次のような取り組みをするといいます。
このうち「省エネ対策の強化」について詳しく紹介します。
政府は電力需給に関する検討会合は「企業の複数年にわたる投資計画に対応する形で今後3年間で集中的に支援するとともに、家庭部門の省エネを強力に推進するため、住宅の断熱性向上に資する改修や高効率給湯器の導入などの住宅省エネ化への支援を強化する」と掲げています。
具体的には、中小企業向けに、省エネ設備投資補助金に複数年の投資計画に切れ目なく対応できる新たな仕組みを創設するといいます。ただし、事業所の省エネ率などの基準を要件とし、対象設備は省エネ法トップランナー基準を満たすものに限定することが検討されています。
2022年度補正予算案の「省エネルギー設備への更新を促進するための補助金」(500億円規模)によると、事業概要は次の通りです。
工場・事業場において大幅な省エネを実現できる先進的な設備の導入を支援する事業です。補助率は、中小企業で2/3、大企業で1/2。補助上限は15億円(非化石転換設備の場合は20億円)となる見込みです。
個別設計が必要な特注設備等の導入を含む設備更新やプロセス改修等を行う省エネ取組に対して支援をする事業です。補助率は中小企業で1/2、大企業で1/3の予定ですが、資回収年数7年未満の事業の場合は、中小企業が1/3、大企業で1/4となる見込みです。上限額は15億円(非化石転換設備の場合は20億円)です。
省エネ性能の高いユーティリティ設備、生産設備等への更新を支援する事業です。補助率は1/3、上限額は1億円の見込みです。
エネマネ事業者などと共同で作成した計画に基づくEMS(エネルギーマネジメントシステム)制御や高効率設備の導入、運用改善を行うことで効率的・効果的な省エネの取り組みを支援します。補助率は中小企業で1/2、大企業で1/3、補助上限は1億円となる予定です。
このほかにも省エネ対策・再生可能エネルギー導入の補助金が続々と2022年度補正予算案に盛り込まれています。ものづくり補助金では、省エネ対策を推進するためグリーン枠を強化する予定です。
また、工場・ビルの省エネ診断の実施やそれを踏まえた運用改善等の提案にかかる費用を補助することで中小企業の省エネを後押しする支援(20億円規模)が2022年度補正予算案に盛り込まれました。
さらに民間事業者が太陽光発電設備及び再生可能エネルギー併設型の蓄電池を導入するための機器購入を補助する事業(255億円規模)も2022年度補正予算案に盛り込まれました。
たとえば、「需要家主導型太陽光発電導入支援」として、次のような条件の時に支援があります。
上記に加えて、蓄電池を併設することで、太陽光発電を最大限に活用するモデルについても支援がある予定です。
おすすめのニュース、取材余話、イベントの優先案内など「ツギノジダイ」を一層お楽しみいただける情報を定期的に配信しています。メルマガを購読したい方は、会員登録をお願いいたします。
朝日インタラクティブが運営する「ツギノジダイ」は、中小企業の経営者や後継者、後を継ごうか迷っている人たちに寄り添うメディアです。さまざまな事業承継の選択肢や必要な基礎知識を紹介します。
さらに会社を継いだ経営者のインタビューや売り上げアップ、経営改革に役立つ事例など、次の時代を勝ち抜くヒントをお届けします。企業が今ある理由は、顧客に選ばれて続けてきたからです。刻々と変化する経営環境に柔軟に対応し、それぞれの強みを生かせば、さらに成長できます。
ツギノジダイは後継者不足という社会課題の解決に向けて、みなさまと一緒に考えていきます。