目次

  1. 洗車代に用いる主な勘定科目と仕訳例
    1. 車両関連費用を管理するために車両費で計上している場合は車両費
    2. 車両関連費用を旅費交通費で計上している場合は旅費交通費
    3. 車両関連費用を資産維持費として捉えている場合は修繕費
    4. 車両関連費用を消耗品費で計上している場合は消耗品費
    5. 車両関連費用の勘定科目を設定せず金額が少額の場合は雑費
    6. レンタカーの洗車代はレンタカーを計上する科目と一緒にする
    7. 従業員所有の車両で洗車代を負担するときは、社用車の洗車代と計上する科目を一緒にする
  2. 洗車代の仕訳をするときに知っておきたいポイント
    1. 消費税は課税仕入になる
    2. 自社の勘定科目体系を適切に把握する
    3. 洗車代の勘定科目は一度決めたら使い続ける
  3. 個人事業主が洗車代の仕訳をするときは?
  4. 洗車代は自社の勘定科目の設定方法を確立する

 社用車や営業車を洗車をした際に発生する洗車代に用いる勘定科目は、車両費・旅費交通費・修繕費・消耗品費などがあげられます。

 必ずこれを使わないといけないというルールはなく、自社が他の車両関連費用をどのように管理しているのかによって決めるのが一般的です。

洗車代に用いる主な勘定科目と仕訳例
洗車代に用いる主な勘定科目と仕訳例(デザイン:吉田咲雪)

 社用車や営業車を保有している会社では、車に関する費用(例えばガソリン代など)が比較的かかることから、車両費勘定を作っていることが多いでしょう。その場合、洗車代も車両費に計上するのが一般的です。

 車両費は洗車代以外にも車検費用やガソリン代を計上する勘定科目であり、車に関する費用をこの勘定科目を使って仕訳を切ることを決めておけば、毎年、車にかかる経費を容易に管理できます。

例:洗車をして1,000円支払った。自社では車に関する費用を管理するために車両費で計上している

借方 貸方
車両費 1,000円 現金 1,000円

 車両に関する費用の管理を想定していなく、車両費を設定していない場合は、他の車両関連費用で使っている勘定科目に合わせます。例えば、車両に関する費用を旅費交通費に計上している場合、洗車代も旅費交通費に計上するとよいでしょう。

例:洗車をして1,000円支払った。自社では車両関連費用を旅費交通費で計上している

借方 貸方
旅費交通費 1,000円 現金 1,000円

 修繕費は保有している資産を維持管理するために使用する勘定科目です。洗車代も車両の維持管理のために必要な費用のため、修繕費とすることもできます。

 修繕費の特徴は、車両に関するものだけでなく、本社建物などの維持管理に関する費用も含まれるなど、多額のものが計上されることが多い点です。洗車代は少額であることが多く、修繕費に洗車代を計上すると埋もれてしまうことがしばしばあります。

 そのため、洗車代が年間で少額で、会社として洗車代を重要視していない場合以外は、使わないほうがよいでしょう。

例:洗車をして1,000円支払った。自社では車両関連費用は資産維持費として捉えて修繕費で計上している

借方 貸方
修繕費 1,000円 現金 1,000円

 車両関連費用を消耗品費としている場合は、洗車代も消耗品費で計上しましょう。

 ただし、消耗品費は名前の通り、品物に対して使われることが多い勘定科目です。少額の物品を購入した際に使うことが多く、洗車のようなサービスに関して使うのはあまり一般的ではないことに留意してください。

例:洗車をして1,000円支払った。自社では車両関連費用は消耗品費で計上している

借方 貸方
消耗品費 1,000円 現金 1,000円

 車両関連費用に対して勘定科目を設定していなく、洗車代も年間を通じて少額しか発生しない場合は、雑費に計上することが一般的です。

 雑費は、少額でさまざまな費用が計上される科目です。そのため、洗車代を雑費に含めると、雑費のなかから洗車代を抜き出して分析することは困難になります。洗車代を過去から増加しているかなど管理する必要がない場合は、雑費でも問題ないでしょう。

例:洗車をして1,000円支払った。自社では車両関連費用は雑費で計上している

借方 貸方
雑費 1,000円 現金 1,000円

 レンタカーを利用して、想定以上に汚れてしまい、返却前に洗車をすることがあるでしょう。その場合は、レンタカーに関する費用を計上する際に使用する勘定科目と同じ勘定科目にすることが一般的です。

 レンタカー利用料をリース料にしている場合はリース料、旅費交通費としている場合は旅費交通費とします。

例:レンタカーを返却する際に洗車をして1,000円支払った。なお、自社ではレンタカーに関する費用はリース料として計上している

借方 貸方
リース料 1,000円 現金 1,000円

 従業員が個人で保有している車両を業務に使ったときに、その従業員にガソリン代を支給することは一般的です。では、洗車代を従業員に支給するケースはどのようにしたらいいのでしょうか。

 その場合は、ここまでに説明した洗車代を計上する勘定科目を使用しましょう。

 ただし、通常の使用用途で洗車代まで会社が負担することは、一般的ではありません。洗車代も支給するほど、ハードに従業員の車を使用するような場合は、従業員の車両に頼るのではなく、社用車を導入した方がよいでしょう。

 洗車代は、本来、車を保有している従業員が負担すべきものです。そのため、会社が洗車代を負担するには、相応の理由が求められます。その理由が社会通念上、認められないものであれば、その洗車代は従業員への給与と認定されます。

例:従業員所有の車両を洗車して従業員が1,000円立替払いした。自社では洗車代は車両費として計上している

借方 貸方
車両費 1,000円 未払金 1,000円

 つづいて、洗車代を仕訳するときに、あわせて知っておきたいポイントを3つご紹介します。

 洗車代は、消費税法上は課税取引に該当します。そのため、仕訳を起票する際には消費税に関する処理を忘れずに行いましょう。

 なお、2023年10月1日から適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が始まります。インボイス制度が開始になると、課税仕入になるのは適格請求書発行事業者から仕入れた場合のみになります。街で洗車をしている業者のなかには、適格請求書発行事業者登録をしない業者もいると想定されます。その場合は、課税仕入とすることはできませんので、2023年10月1日以降は注意をして経理業務を実施しましょう。

 洗車代はここまで紹介した通り、さまざまな勘定科目を使用することが想定されます。

 そのため、洗車代を計上する際には、自社の勘定科目体系を適切に把握したうえで使用する必要があります。

 自社の勘定科目体系を適切に把握するためには、勘定科目の説明書の作成がおすすめです。勘定科目の説明書を作り、そのなかに計上されるものの例示を記載することで、新たな取引が発生した際も適切に判断できます。

 洗車代に関して使うことができる勘定科目は多くありますが、一度決めたら、その後は同じ勘定科目を使い続けましょう。同じ勘定科目を使い続けることは会計基準も要請しています。また、こまめに変えてしまうと、自社での管理も煩雑になり、第三者が見た際もわかりづらくなってしまいます。

 もし変更する場合は、金額が多額になって、雑費では管理がしづらくなったなどの合理的な理由が必要です。また、変更する際はなるべく期首から変更するようにしましょう。

 個人事業主の場合は、収入を得るために直接必要だと認められる費用を必要経費とすることができます。そのため、車両に関する費用も事業で使用している部分(例:保有している車で営業先などに行く)は必要経費として認められます。

 ただし、洗車代が事業に直接必要だと認められるためには、税務署など第三者から問われた際にしっかり説明できる根拠が必要です。自身の事業をもとに説明できるようにしておきましょう。

 なお、事業に使用している部分を算出するときは、総走行距離と事業で使用した分の走行距離の割合から求めたり、営業に使った日数から計算したりするなどいくつか方法があります。事業に合った方法を採用しましょう。

例:洗車代を1,000円支払った。なお、必要経費はこのうち200円だと判断した

借方 貸方
修繕費 1,000円 現金 1,000円
事業主貸 800円 修繕費 800円

 洗車代は、自社の勘定科目の設定方法によってさまざまな勘定科目を使用することができます。そのため、まずは自社で使用する勘定科目の内容に関する定義づけをしっかりしましょう。そのうえで洗車代を計上する勘定科目を設定し、使い続けていってください。