目次

  1. 鹿児島茶を広めるための挑戦
  2. 「素人だからたどり着けた」
  3. 自腹でニューヨーク出張に同行
  4. ニューヨークのカフェに魅了され
  5. 1日500杯のお茶を試飲
  6. ローカルに根ざした店づくり
  7. 古巣とイベントを企画

 草の茂みから立ち上る熱気のことを草いきれと言いますが、すすむ屋茶店一番人気の「こくまろ」は言うなれば草いきれならぬ茶いきれを感じさせるお茶でした。

 湯飲みに顔を近づけると、マスク越しにもかかわらず甘い香りが鼻腔をくすぐり、ひと口すすれば口腔が茶のうまみでいっぱいに。想像をはるかに超えてコクがあってまろやかで、心地よい余韻はいつまでも残りました。

8グラムの茶葉に対し、70〜80度の湯180㏄を注ぎます。1分蒸らしたら完成です(筆者撮影)

 静岡、宇治、狭山。お茶どころと聞いて思い浮かべるのはこの三つの地域でしょう。ところが栽培面積でみれば、静岡に次ぐ日本第2位のエリアは鹿児島です。

 「鹿児島茶は三大銘茶にブレンドされてしまうお茶でした。ブランド力が弱かったからです。しかしそれは知られていないだけで、優れた茶葉はいくらでもありました。鹿児島茶を広めるにはこれまでにない挑戦が必要です。ぼくは品種を打ち出すことにしました」

鹿児島は静岡に次ぐお茶どころです(注釈のないものはすべてすすむ屋茶店提供)

 糸口になったのは、コーヒーの世界。その世界ではシングルオリジン、すなわち農園や生産者にスポットを当てたサードウェーブが主流になりつつありました。

 「お茶は産地でくくるのが倣いですが、二番煎じでは追いつけません。それに鹿児島の茶葉はどれも個性豊かですから、産地で十把一絡げにするのはなんとももったいないと思いました。品種単位で売り始めたのは(日本三大銘茶を含めても)まれな試みでした」

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